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松尾寺山の里山整備活用事業 /松尾寺山登山道保存会

事業の概要

登山道の整備、案内マップの作成、看板、標柱の設置、鎌刃城跡に通ずるトレッキングルートの開設、イベントの開催などにより、松尾寺山を親しみの持てる里山として活用します。

松尾寺山登山道保存会 活動の写真

2015年12月2日、米原市の松尾寺登山道保存会の活動現場を訪ねました。

松尾寺山登山道保存会 活動の写真
醒ヶ井駅から約400メートル、滋賀県立醒ヶ井養鱒場のすぐそばに松尾寺本堂があります。まだ新しいお寺ですが、もともとは松尾寺山の山頂より少し下ったあたりにありました。

松尾寺山では円の行者が修行をしたという伝説があり、奈良時代には松尾寺が建立され、平安時代には50もの建物があったそうです。

松尾寺山は標高504メートル、歴史が古いだけでなく植生も比良山系と鈴鹿山系のものが入り交じり貴重な自然が残されています。ただ、冬は厳しく林道(松尾寺所有)を維持するのも大変だそうです。まずは林道を車で入れるところまで行きました。

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かなり山の上のほうにある林道の終点、ここが松尾寺の坊跡です。ここから、会の皆さんが整備された登山道を歩きます。今年度の登山道整備作業は既に予定終了とのことで、松尾寺山登山道保存会の会長・江竜喜之さんと副会長・近藤澄人さんのお二人にわざわざご案内いただきました。

今日は、登山道をぐるりと歩いて回る予定です。この山は健康保安林に指定されていて、歩いて回れるよう道標が立てられています。

林野庁ホームページよりの引用「保安林とは、水源の涵養、土砂の崩壊その他の災害の防備、生活環境の保全・形成等、特定の公益目的を達成するため、農林水産大臣又は都道府県知事によって指定される森林です。保安林では、それぞれの目的に沿った森林の機能を確保するため、立木の伐採や土地の形質の変更等が規制されます」「保健保安林 森林の持つレクリエーション等の保健、休養の場としての機能や、局所的な気象条件の緩和機能、じん埃、ばい煙等のろ過機能を発揮することにより、公衆の保健、衛生に貢献します」

松尾寺山登山道保存会 活動の写真
急な石段には鉄製の手すりが付けられています。古くなり根元が腐食して宙に浮いている箇所があったそうですが、夏原グラントの助成金を使い修理され安全になりました。

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石段を登り切ると、そこには松尾寺本堂跡の看板が。立派な本堂だったのですが、1981年の豪雪で倒壊してしまったそうです。

松尾寺山登山道保存会 活動の写真
大銀杏が境内に黄色いじゅうたんを敷き詰めていました。

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すぐそばには重要文化財の石造九重塔。建立は鎌倉時代です。歴史的に貴重な遺跡が身近に存在している山ですね。

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この階段は松尾寺登山道保存会が設置しました。

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階段に使われている木には腐食しにくい加工がされているので、とても重くて大変だったということです。

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やはり豪雪で倒壊したお寺の建物がまだ残っていました。この山の冬の厳しさが伝わってきます。

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一時期、村であったという松尾寺。あちこちに坊などの痕跡である石垣があります。山の傾斜地にはお茶の段々畑があり、村人はそのお茶で生計を立てていたそうです。

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これがハサミ岩。岩と岩との間を通り抜けるのですが、お寺で悪いことをすると岩に挟まれて動けなくなると言われています。【松尾寺七不思議】

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こちらは丁石(ちょういし)。ふもとの西坂という集落からの参道と、醒ヶ井からの坂口参道にそれぞれ一丁(約109メートル)ごとに立てられています。この丁石も古くは中世末期からのものが現存しているそうです。

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途中の林の間に、昔植えられた樹木が見えています。獣の食害から守るために白いプラスチックで囲い鉄の棒で支えてあります。しかし、中の苗はほとんどが枯れてしまっていました。健康保安林ということで、あちこちにこの植林の痕跡がありました。

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山を登り切ったところにある一本杉の巨木です。

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ここは峠。米原の町へ降りる道と、鎌刃城跡へと抜ける道との十字路です。

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ここにも砦があったそうで、堀切がV字に残っているのがわかります。
史跡だとわからずに歩く人もいるので「砦跡」の立て札を立て、脇の道を通りやすくして保護しています。この立て札は番場の歴史を知り明日を考える会で作成したもの。隣り合わせの夏原グラント採択事業2つが、協力して里山保全に取り組んでいるんですね。

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十字路を右方向へ曲がり、山の尾根づたいの道を松尾寺山の頂上に向かいます。

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今は葉が落ちているので木々の向こうが少し見えていますが、夏などは葉が茂って見えなくなるそうです。

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しばらく歩くと米原の町が見渡せるビュースポットに到着。以前は周囲と同じく木が茂って見渡せなかったので、見晴らしを確保するため、かなり木を伐採したそうです。

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これは山の頂上付近にある巨木・夫婦杉です。千年ほど前に高野山のえらいお坊さんが松尾寺にお参りされここでお弁当を食べ、お箸を突き刺したのが育ったという伝説の杉です。上下逆さまだったので枝が下向きに伸びているとか。【松尾寺七不思議】
悲しいことに、片方は既に倒れて枯れていました。それでも一緒がよいだろうと片付けずに側に置いてあるのだそうです。

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少し下ったところに設けられたビュースポット。ここからは伊吹山が見えます。やはり茂みを伐採してながめを確保したそうです。

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頂上から本堂跡まで降りる途中、また立て札が。道からそれたところに松尾寺のご本尊である観音様が雲に乗り飛んで舞い降りた、とされる影向石(ようごういし)の方向を示しています。

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これが影向石です。石の上には足跡があるのだそうで、確かに着地には最適という雰囲気がありました。【松尾寺七不思議】

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ぐるりと回って本堂跡に戻ってきました。本堂の前の道は下丹生・坂口方向から続く参道です。こちらにも丁石が立てられていました。

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少し歩いたところに石でできた一本橋があります。川でもないのになぜ橋を渡るのか不思議。ということで【松尾寺七不思議】のひとつにもなっています。

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再び帰ってきた本堂前。向かい側の霊仙山がきれいに見える向きに建てられたのだそうです。

松尾寺山には歴史と自然が豊かに残されています。【松尾寺七不思議】その1は、松尾寺のご本尊です。雲に乗って飛来されたという伝説があるため、飛行観音とも呼ばれパイロットや飛行場で働く人々からの信仰が厚いそうです。山をめぐる道のあちこちに、残り6つの【松尾寺七不思議】がちりばめられ、松尾寺山は昔の人にとってはテーマパークのような存在だったのでしょう。歴史や伝説に触れ、ワクワクしながら山を登ったに違いありません。【松尾寺七不思議】は、山を楽しく歩くための仕掛けではないか、と思いました。

しかし村が消え、寺もふもとに移動してしまい、山は荒れる一方です。会の皆さんが今年の夏、修復したのに、今回歩いてみると道がわかりにくい箇所もありました。細くて急な登山道には大型重機を使えないので、現在は人力に頼るしかないそうです。

松尾寺山登山道保存会会長の江竜さんは「松尾寺山登山道は、今年の秋に鎌刃城跡につながる道を整備したことで、同じ米原市の番場から醒ヶ井・下丹生の坂口まで通り抜けやすくなりました。道を歩く人も増加しました。そこで今年度の事業の一環として、鈴鹿山系では暖かい季節に必ず出てくるヤマビル注意の看板を設置するなど、より安全に山歩きを楽しんでもらえるようにしたいと考えています」とおっしゃっていました。

副会長の近藤さんは「山の保全は美しい水を守ることにつながっています。美しい水があるからこそ、美味しい鱒も食べられるんですよね。近年は獣害により下草が全く生えないので山の保水力も低下し、大雨が降れば被害が出るようになってきました。登山道の保全を通して多くの人に山にもっと親しんでいただき、山自体の保全ができるようになっていったらいいなと考えています」とのことでした。今後も山と道の保全活動に期待しています。

2 Comments on “松尾寺山の里山整備活用事業

  1. 瀧川豊

    喜之おじさんと40年程前松尾寺を登ったことを思い出しました。

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  2. しがNPOセンター 投稿作成者

    瀧川豊様

     コメントありがとうございます。
     40年前と変わっていましたか?
     古い歴史を感じる山ですね。がんばって会の皆様が登山道を保全なさっているので、ぜひまた登山なさってください!

    返信

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