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大谷川周辺に生息するオオサンショウウオの生態系保全活動 /古橋のオオサンショウウオを守る会

事業の概要

2年前から当会で行ってきた、滋賀県内で最大級の生息地である大谷川周辺のオオサンショウウオの個体情報を確認し、チップを埋め込み、読み取る作業を実施し、生息調査を継続します。 滋賀県と相談しながら、負傷したオオサンショウウオの保護・一時保管する施設を作ります。 地元の高時小学校での環境学習の取組やビオトープの維持管理に全面協力します。 大谷川の生き物調査、ミニシンポジウム、報告書の発刊を継続します。 行政や土木関係の機関、地元自治会、長浜バイオ大学、県内専門機関等との連絡調整会議を継続開催します。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真

2016年9月10日、古橋のオオサンショウウオを守る会が開催する「古橋の大谷川の生き物調べ」に参加するため、滋賀県長浜市のJR木之本駅からバスに乗り高時小学校に朝9時集合しました。

大谷川は高時川の支流で、古橋という集落の中を流れる谷川です。生き物調べのチラシには「毎年生き物調査で数匹のオオサンショウウオが見つかっています。今年も会えるといいですね。きっと会えると思いますよ」と書いてありました。生きたオオサンショウウオと会える?とワクワクしながら会場へ向かいました。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
受付を済ませて体育館でガイダンスを受けます。まずは、古橋のオオサンショウウオを守る会会長である大山孝一さんからの「古橋のオオサンショウウオのお話」でした。大山さんは「私は専門家ではありませんが、古橋のオオサンショウウオのことを『うちの子たち』と呼んで、人間の子どもと同じように大切にしています」とのこと。大山さんのお話を聞いて、両生類のオオサンショウウオは100年くらい長生きをすることや、世界的な分布、京都では鴨川にいるオオサンショウウオのハイブリッド(雑種)問題など、さまざまな状況が把握できました。絶滅危惧種で国の特別天然記念物であるオオサンショウウオは、勝手に触ったり移動させたりすることが禁止されています。扱いには注意が必要なこともわかりました。

続いて、古橋のオオサンショウウオを守る会事務局の村上宣雄さんから、大谷川の上流のダムについてお話がありました。2002年8月、大谷川の堰堤の下でオオサンショウウオが見つかってから、滋賀県は砂防ダムを建設する際、村上さんなどの生物環境アドバイイザーの意見を取り入れて穴空きダムにしました。昔のダムをカッターで切り取った後に鉄格子をはめたので、大きな岩や石はせき止められ、谷川の水は流れるようになりました。それまでダムの上流にはオオサンショウウオは見つかっていませんでしたが、ダムが穴あきダムに変わってからは、上流まで出かけるオオサンショウウオが確認されているとのこと。効果があったんですね。
また、大谷川で見つかったオオサンショウウオには全てマイクロチップが埋め込まれているので、個体番号などの情報がわかるそうです。今までに50個体くらいに入れていて、これがあるので下流で見つかった場合には大谷川に戻しているそうです。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
レクチャーが済むと、参加者全員バケツと網を持って大谷川下流に出発です。子ども連れの若いご家族がたくさん参加していてにぎやかです。
一方、この調査に協力している長浜バイオ大学の学生の皆さんは、何グループかに分かれて上流に向かいました。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
一般の参加者は下流の水生生物をつかまえ、学生グループはそれに加えてオオサンショウウオの確認も目標にしています。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
これは高時小学校のグランド脇にあるビオトープです。子どもたちが定期的に掃除や生き物調査をしているそうです。主な生き物はメダカで沢山生息しています。その他ドジョウやヤゴがいるとのこと。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
大谷川に到着。上流に向いて撮影しています。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
川の側には、高時小学校の子どもたちが手作りした看板が。「大谷川を守ろう」というキャッチフレーズと川とオオサンショウウオが描かれています。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
oosansyouo-17
さあ、生き物調査の開始です。川底に降りて、どんどん生き物をつかまえていきます。
            
古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
透明だった水も濁っていきました。魚をすくったら、バケツへ。
ちっちゃな子どもも、とりあえずバシャバシャ。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
川底のちょっと変わったブロック、実は魚やオオサンショウウオたちが遡ることができるよう改修された魚道だそうです。以前は垂直の壁(堰堤)だったので生き物は上流へのぼることができませんでした。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
この魚道を使って、上から追い込んでいき下で網を構えて待つ、追い込み漁が行われていました。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
たくさんの親子が楽しそうに生き物調査しています。カワムツやタカハヤなどの小さい魚や、サワガニが多く見つかりましたが、これがオオサンショウウオの餌(えさ)になるのだそうです。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
下流から上流へと町を歩くと、再び別の看板。町中で川を見守っている感じですね。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
橋から見た、調査中の大学生の班です。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
「今年のお盆に川掃除したら、そこの堰の石の下から1匹出てきたんや」と、町の人も出てきて学生に声を掛けていました。子どもや学生が川で水をジャブジャブしているのを見る時、大人はみんな笑顔になっているように感じました。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
もう少し上流の班です。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
私が見た中では最も上流の班です。バイオ大学の学生の皆さんがまじめに調査していました。
それにしても大谷川は町の中を流れているのにゴミもなく、とても水が清いのには驚きました。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
生き物調査を開始してからおよそ1時間半。11時になると参加者が続々と高時小学校に戻って来ました。つかまえた生き物を集め、どんな生き物がいるのか専門家の先生に教えてもらう時間です。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
これは何かな? 

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
魚、昆虫の幼生、水生昆虫など、たくさんいましたが、最後にコカナダモという外来種も見つかりました。ここまで侵略しているとは。

同じ種類は同じバットへ集め、名前を紙に書いて置いていきます。
これなら、自分がつかまえたのは何という生き物なのかわかりますね。単なる水遊びや魚つかみではない、調査ですから、これはとても大切なことだと思いました。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
左側が、中学校の先生で水生生物専門家の来見誠二さんです。右側は事務局の村上さん。
魚を素手でつかむと、魚は火傷を負って死んでしまうから、軍手をはめて水に漬けて冷やしてからさわること、そしてさわり過ぎないように、という注意もありました。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
生物の説明が一通り終わったら、本日のメインイベント!以前から保護していたオオサンショウウオにマイクロチップを埋め込む作業を見学できるのです。2匹のうち大きいほうが50才くらい、小さいほうが30才くらいではないかとのこと。さすが長寿の象徴ですね。この2匹は迷子になってケガをしていたので特別に保護されているのだそうです。
ゆっくり動くオオサンショウウオですが、目が悪いので鼻先に指をチラチラさせると魚と間違えて噛みつくそうです。その威力は恐ろしく、指は骨を残して持って行かれるのだとか……。気安く触ってはケガの元ですね。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
マイクロチップ読み取り機で、1個体はチップが入っていなので、新発見であることを確認しました。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
チップを入れた注射器で埋め込みます。しかしぬるぬるするのでなかなかジャストミートしません。少し手間取りましたが無事成功しました。終始落ち着いていた長浜バイオ大学大学院生の小松さん、お見事でした。

古橋のオオサンショウウオを守る会の活動写真
DNA鑑定のため、しっぽを少し切ってから元の水槽に戻しました。お疲れさま!

さまざまな外来種と日本の在来種との交雑が進む現在、環境保全はDNAレベルでの注意が必要になっています。今日マイクロチップを埋めた個体も、DNA鑑定の結果ハイブリッド(雑種)でなければ元の川に戻されます。

高時小学校の子どもたちは、日常生活の中にオオサンショウウオのいる川があります。古橋の村の自然が、いつまでもオオサンショウウオの暮らせる豊かなものでありますように。古橋のオオサンショウウオを守る会の皆さんは地元の皆さんとともに、これからも長く活動を続けていただきたいと思いました。

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