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Re 梵(リボーン)大作戦 ~梵釈寺から始まる里山の再生~  /特定非営利活動法人 里山保全活動団体 遊林会

事業の概要

滋賀県東近江市蒲生岡本にある梵釈寺の裏山を、里山保全活動団体 遊林会と地元の皆さんが協力して活動することで豊かな里山を取り戻します。 この取組みは、里山の手入れができなくて困っている地域と、里山保全活動団体 遊林会とが連携することで、本来の生物多様性を取り戻す、という成功事例として、他地域への波及も期待しています。

遊林会の活動の写真

2016年7月14日、梅雨の晴れ間に特定非営利活動法人 里山保全活動団体 遊林会(以下、遊林会)の活動を尋ねて梵釋寺(ぼんしゃくじ)に行きました。梵釋寺は滋賀県東近江市蒲生岡本町にある、黄檗宗という禅宗のお寺です。

遊林会の活動写真
お寺の裏庭と裏山の手入れする人手がなく、木が繁りすぎて暗くなり、人が入りにくくなってしまって困っていたところ、同じ東近江市「河辺いきものの森」に拠点を持つ遊林会が、協力することになりました。

門に到着すると、どこからかチェーンソーか草刈り機の大きな音が聞こえてきました。

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その音を頼りに庭に回ってみると、本堂の裏手は、にぎやかに里山保全活動の真っ最中でした。

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薪割り機でどんどん薪を作っている人。この薪割り機は夏原グラントの助成金で購入されたものです。ロゴマークも貼ってありました。

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草刈り機で草を刈る人。手入れされ、すっきりと明るい森になっています。

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小川の流れをせきとめる水門を、丸太の杭を打って作っている皆さん。

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人工的な島がある小川かと思っていたら、もともとは回遊式庭園だったそうです。ここまできれいにするには、総代の安部さんがしゅんせつに汗を流したのだとか。

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島にはお墓がひとつあります。お寺の住職を務めたこともある、昔の庄屋さんのお墓だということです。手前にはハスが植えてありました。庭園だった頃、池は一面のハスが広がっていたので、その光景を再現したいから植えられました。

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かつての庭園を再現するための水門です。

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この日は梅雨の晴れ間の猛暑となり、朝9時半からの1時間で皆さん汗だくです。本堂の前で休憩タイムとなりました。

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左は梵釋寺ご住職の奥様、熊倉弘富美さん。右は遊林会の代表井田三良さん。お二人はずいぶん前からの知り合いでした。遊林会が特定非営利活動法人になった2014年10月頃、井田さんは熊倉さんから「梵釋寺の裏山が荒れて困っている」と聞きました。遊林会は長年河辺いきものの森の保全活動を続けてきましたが、法人化をきっかけに、新しい事業を展開していこうという機運が生まれていたそうです。検討を重ねてから、昨年(2015年)の秋から梵釋寺で月1回の保全活動を開始しました。

熊倉さん「山の持ち主の皆さんにも、声をかけて了解をもらってから手を入れました。ちょっと手を入れただけで森の中に風が吹き抜けて、変わったのがわかりました」「裏庭から山のほうに行くとため池があります。今は道をきれいにしてもらっているので5分もあれば池に歩いていけますが、手入れ前にはジャングルをかき分けて進むので30分くらいかかっていました」と教えてくれました。

そこで、休憩後は井田さんの案内で、そのため池を目指すことにしました。

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確かに手入れが行き届いていて歩きやすい道です。

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道のすぐそばには大きな立ち枯れのコナラらしきものがありました。こういう木を切り倒して薪にしているそうです。

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草刈り機で道の竹を刈っている、すぐ先にため池の堤防が見えています。

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小さな堤防の上に登ると、ため池を一望できました。地元の方のお話では、子どもの頃、お弁当を持って山に入り、松葉を集めて家に持ち帰り風呂の焚き付けにしていたそうです。また、この池で魚釣りをしたり泳いだりして親しんでいたということです。当時、池の上流と下流には田んぼもありましたが、今は放棄されているそうです。

梵釋寺のある地域周辺には大小たくさんのため池が作られていて、貴重な水源として大切にされていたそうです。

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ため池から帰ってくると、薪も増えていました。

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立木が切り倒され、適当な長さに切られています。これを杭にして、水門の強化を図るのです。「杭の現地調達だ」と笑いながら運んでいきました。

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できたての杭を打っているところです。
赤いシャツの方が、梵釋寺総代を務めている安部さんです。

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しばらくすると昼食時間となり、熊倉さん手作りの夏野菜カレーをご馳走になりました。
カレーを食べながら、安部さんを含む3人の地元の方からお話を伺えました。
安部さんは「お寺の裏庭の手入れは、年に2回していますが、島のところまで草を刈るだけで精一杯で、池の周囲はジャングルのようになっていました。きれいにしたいと思ってはいたのですが、とてもできなかったところに、遊林会の皆さんが協力してくれたので、感謝感激です」とうれしそうです。

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作業をする人の内訳は、遊林会ボランティア、スタッフ、お寺の総代さん、地元自治会の方。さまざまな立場の方が協力してはじめて大規模な里山保全か可能になるのですね。
裏庭とため池までの、およそ3ヘクタール程度がフィールドです。

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熊倉さんにお寺の境内を案内していただきました。すぐそばの山にはヤマモモの巨木があります。この木のウロには毎年フクロウが営巣しヒナを育てているそうです。

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庭にはたくさんのシオカラトンボが飛び交い、タマムシまで出てきました。山道を歩いているとヘビが道を横切り、池のそばには赤いお腹のイモリも出てくるそうです。また、安部さんが池をきれいにしようとしたところ、カスミサンショウウオも見つかったというのです。そこで2013~2015年度夏原グラント助成団体の田村山生き物ネットワークに、カスミサンショウウオに配慮した池の手入れについても相談したそうです。本当に梵釋寺は自然が豊かなところなのですね。

遊林会の事務局長、泉浩二さんは「この里山保全活動を本格的に始める前に、夏原グラントの助成金で植物の専門家をお招きして、どんな植物がどこに生えているかを教えてもらいました。草刈り機で刈ってしまわないよう、マークしています」と、きちんと環境に配慮した里山保全を進めていることも教えてくれました。そして今後のことについては「このお寺の本堂に泊まって、里山で遊ぶイベントをやろうと思っています。朝は座禅から始まり、山から取ってきた薪でご飯を炊いたり、山の手入れをしたり。ちょっと歩いていくと、この山の薪をストーブに使っている地元の野菜を使うレストランなどもありますしね。いろんなプログラムができて新しい展開ができるので楽しみです。秋頃には地元の方にここに来ていただく自然観察会などを開催したいと思います」とも。

この恵まれた環境に、子どもたちのにぎやかな笑い声がひびくのももうすぐ。お寺と地元の皆さんと遊林会。この三者の協力が、荒廃した里山をすばらしいフィールドに変えつつあります。

▼梵釈寺ブログ
ご住職による記事で、お寺の歴史や里山保全のようす、フクロウのヒナなどの記事が見られます。アクセスしてみてください。

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