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協働によるふるさとの自然環境保全を図るための基礎資料調査 /エコパートナーシップうじたわら

事業の概要

京都府宇治田原町は豊かな自然環境に恵まれていますが、貴重な野性生物当について十分知られているとは言えません。そこで町内の山や谷など重点箇所を定め、地元の皆さんから幅広い参加者を募って、自然環境調査を実施します。 野性生物や資質など、記録を整備して今後の協働による保全活動のための基礎資料とします。作成した資料は公開して生物多様性の保全に取り組むきっかけとします。

エコパートナーシップうじたわら 活動の写真

2016年11月13日、エコパートナーシップうじたわらが主宰する「ふるさと自然体験ハイキング」に参加するため、京都府綴喜郡宇治田原町に行きました。

エコパートナーシップうじたわらは、宇治田原町の住民、企業、行政が協働で行う宇治田原町環境保全計画の活動を担う団体です。今回のハイキングは、自然環境保全を図るための基礎資料調査も兼ねているので、参加の皆さんも調査に協力します。また、エコキッズのプログラムでもあるそうで、子どもの参加もあります。参加者は大人18名、子ども4名です。

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朝9時、宇治田原町総合文化センターに集合しました。会長挨拶と今日の目的、ルートなどの説明がありました。今回は標高401メートルの御林山(ごりんざん)の生き物調査とハイキングを兼ねています。マムシやスズメバチ、マダニの危険性、私有林のマツタケは採取禁止などの注意もありました。

スタッフとしてエコパートナーシップうじたわら会長の芦原さん、事務局でもある宇治田原町役場の波部さん、環境省自然生物調査員の阪本さんが参加しています。

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これは柿屋(かきや)という、干し柿を作る設備です。竹や稲わら、木を使い、4階建てになっています。できた干し柿は「古老柿(ころがき)」と呼ばれ、正月の縁起物となるそうです。総合文化センターのすぐそばにあります。

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歩くこと数分。フレンドマート宇治田原店の看板が見えました。2015年5月にオープンしたばかりだそうです。

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平岡地区を歩いていると、また柿屋がありました。ちょっと小さめです。

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山腹には茶畑が見えます。手前のオレンジ色は干し柿にする「つるの子」という渋柿がたわわになっている状態です。

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道のそばに生えていた柿「つるの子」です。
歩きながら、阪本さんが宇治田原町の説明をしてくださいました。
「宇治田原町は自然が豊かです。京都の市内に比べると生物多様性が維持されています。京都の大学の先生が宇治田原町に来られた時、京都府のレッドデーターブックでは要注目種のヒバカリという小さなヘビがいるのを見てとても驚いておられました。京都ではめったに見られなくなっているそうですが、宇治田原町では、結構よく見かけるんですよ。
これから歩いて行く御林山のあたりは、昔幕府の直轄地だったため、植物や動物を持ち出すことはご法度でした。そういう地域だったこともあり、今も多種多様な生物が見られます」

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少し歩くと、町内最大だという柿屋が現れました。

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しかも、柿屋のご主人も作業をされていて、誰もが「宇治田原町の一番の有名人ですよ!」と興奮気味に教えてくださいました。この柿屋には、季節の風物詩として中継するためNHKがやってくるそうです。

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今回最年少の参加者、小学4年生の男子4人組。大人に混じって楽しそうに歩いていきます。道中いろんなものに興味を持っていました。
しばらく里山を歩いていきます。秋晴れの気持ちのよい日になりました。

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茶畑のそばの道を歩きます。宇治田原町らしい景色です。

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ここから昼なお暗い林道に入ります。
生物の種類の多い地域なので、参加者の皆さんにも珍しいと思った植物を集めてもらい、標本にするそうです。波部さんと阪本さんが一人一人に封筒か密封できるビニール袋を渡しています。

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植林された杉の間から差す日の光が、神々しく見えました。
空気も急に冷え冷えとして寒いくらいです。

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こんなにキノコが見つかりました!
ホコリタケの仲間エリマキツチグリ(写真左上)、ベニナギナタタケ(写真右下)。
右上はキノコではなく、サルトリイバラの紅葉です。

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キノコなどの写真を撮るカメラ、植物のハンディ図鑑などに夏原グラントの助成金が使われています。こうして活用されているところを見るとうれしいです。

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光が差し込む林。ホウの葉がたくさん落ちていました。

このあたりにはアカマツも多いらしく、マツタケ泥棒を監視するカメラまで設置されているようです。

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マツタケと同じようにアカマツと共生する、ヌメリイグチが生えていました。

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キノコが見つかると詳しい波部さんが説明してくれます。
皆さん「食べられるか食べられないか」を聞いて確認していました。よく似たアミタケは食べられますが、ヌメリイグチは、食べるとおなかがゆるくなることもあるのであまり食用にはおすすめできないとのこと。

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アスファルトの林道ですが、タヌキの溜めフンが何カ所か見つかりました。植物やキノコも多いですが、動物の気配も濃いようです。

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美しく色づいた紅葉の下で、阪本さんが「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき」という猿丸大夫の和歌を歌ってくださいました。三十六歌仙にも加わっている歌人猿丸大夫、町内には猿丸神社もあります。まさにこの時期の歌ですね。阪本さんは自然だけでなく文化財についても詳しいのです。

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御林山の頂上近くでシートを敷き、昼食をとりました。
そこでここまでの道で波部さんが採取したキノコを見せてもらいました。手に持っているのがベニナギナタタケです。ほかにも、見たことのないくらい大きなシダもありました。

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食後、御林山の頂上まで登ります。

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すぐに到着した頂上には三角点がありました。
周囲の石や岩は石英でできているそうで、その中にわずかに光る水晶がくっついていました。子どもたちは水晶と聞いて目を輝かせて探していました。

山を下りながらも道路沿いのキノコを見つけて写真を撮ったり、採取したりしました。波部さんに見てもらうと、だいたいのキノコの種類を教えてもらえます。

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これはムラサキシメジです。初めて見るキノコばかりで自分では大発見だと思うのですが、波部さんにお聞きすると「これは結構よく生えているキノコです」というものが多く、がっかり。キノコが生えていても注意していないので、今までは全然見えていなかったのかもしれません。

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杉の林の間から見える里に、大きな池が見えました。ところが実はソーラー発電のパネルが水のように見えているのだそうです。それにも驚きました。

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里まで歩いて降りてきました。柿の木に登って、つるの子柿を収穫している方に出会いました。竹の先を割ったもので枝をはさみ、くるりと回して柿の実をとるところを、お願いして実演していただきました。

秋の里山を歩いているといろんな場面に出くわすので飽きません。小学生たちも、植物、キノコ、鉱物などの説明を聞きながらずっと楽しそうでした。

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このあたりでアスファルトの道路の上に、車にひかれてしまった小さなヘビが。参加されていたグループの皆さんが発見して私に声をかけてくれました。こんな小さなヘビは見たことがありません。阪本さんに見てもらったら、これがヒバカリでした。子どもたちに見せたあとは土に返したそうです。
噂のヒバカリが生息していることを実感できました。本当に宇治田原町は自然豊かなところなのですね。

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午後3時、無事にスタート地点の宇治田原町総合文化センターに到着しました。本日のコースの距離は7.1キロメートルだったそうです。

参加者が集めた植物はスタッフが同定し、標本にするものもあるそうです。

阪本さんは「宇治田原町の昔温泉が湧いていた湯屋谷では約1500万年前の地層の化石も探せます。夏には子どもたちと化石探しのイベントも行いました。ほかにも、縄文・弥生の土器や須恵器などが見つかる場所もあります。山の中には平家の落人という伝説の集落もあります。

宇治田原町には自然や文化の宝物がいっぱいあるんですが、地元の皆さんは、なかなか気づいておられません。だから、この事業で町内を歩いて宝物を発見してもらおうと考えています」とおっしゃっていました。

今回のハイキングに参加した皆さん、特に小学生には、ふるさと宇治田原町の自然の豊かさを、身をもって感じられたのではないでしょうか。

エコパートナーシップうじたわらでは10年前の調査と今回の調査の結果を今後、冊子にまとめたいとのこと。それができあがると貴重な記録になりますね。これからも宇治田原町の自然のすばらしさをさまざまな形で発信してください。

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