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太陽熱回収用へどろヒートポンプの開発 /認定特定非営利活動法人 ブルーシー阿蘇

事業の概要

天橋立のある阿蘇海はかつては豊饒な海でしたが、昭和40年代ころから富栄養化が急速に進み堆積するへどろが水を汚し無酸素水域を形成してしまいました。このへどろを使って太陽熱回収のヒートポンプが作れることがわかったので、遠隔操作を小型パソコンキット(ラズベリーパイ)を使い実験します。

ブルーシー阿蘇の活動のようす画像

2017年9月29日、認定NPO法人ブルーシー阿蘇の活動におじゃましました。

日本三景の一つ天橋立の内海「阿蘇海」は閉鎖性の海で、高度成長期に富栄養化が進み大量のへどろが堆積、このへどろからは窒素、リンなどが溶け出し、泳げない、魚が棲めない海となってしまいました。認定NPO法人ブルーシー阿蘇は、阿蘇海の環境を改善し、青い魚の棲む美しい海を取り戻すことを目的に活動しています。具体的には、へどろを人工ゼオライトおよび吸湿材といった有用物質に変え、人工ゼオライトは生ごみたい肥化の発酵材に、吸湿材は蒸気吸着式ヒートポンプの吸湿材として活用するための研究など、研究の成果を地域社会で生かす実践活動に取り組んでいます。

ブルーシー阿蘇では、へどろに優れた吸湿・放湿特性があることを利用して、太陽熱を温水として回収するヒートポンプを開発しており、今回の夏原グラントでは、小型のパソコンキット(ラズベリーパイ)の活用や普及活動に向けて運搬可能な実験装置として製作することとしています。

ブルーシー阿蘇の活動のようす画像
研究開発のための初期の実験装置です。(ブルーシー阿蘇のHPより)

初期の実験装置なのですが、これにより、へどろによる太陽熱回収に関する実験が繰り返され、そのデータから有効性が確認できたのだそうです。となれば、次の活動はこの実効性を伝えるためにいろいろな場所へ出かけていって普及に取り組むことです。そのためにも、車に載せて移動できるような手軽なものである必要があります。でも現段階では、この実験装置に使用している「太陽熱回収」の銅製パネルは大きく重いこと、実験装置そのものも分解してコンパクトにすることが難しい装置です。
 
ブルーシー阿蘇の活動のようす画像
ということで、新たな挑戦が始まりました。

今回はコンパクトなものを作製するということで、太陽熱集熱板とへどろ容器をつないだ簡便なものなのにしようという挑戦ですが、そこに真空状態で稼働させなくてはならないという難しさがありました。また、太陽熱集熱のための銅板は、より小さく薄くすることとしました。
 
ブルーシー阿蘇の活動のようす画像
これだと、熱が集められる銅板とそれを実験装置に送る管との長さも短く、安定した数値が得られるとのことです。とても薄い銅板で、ここでそれほどの熱量が得られるのかと思うとすごいことだなあと思いました。伺った当日は、太陽が降り注ぐ日射の強い日だったので、実験装置のイメージもよく伝わってきました。

この太陽熱集熱板に真空吸引装置を繋げます。

ブルーシー阿蘇の活動のようす画像
スイッチを入れると太陽熱集熱板で回収された熱が蒸気となり、真空状態となったへどろ吸着材に導かれ温度測定されます。

ところが、以前の実験装置で得られたデータとこの新しいヒートポンプ装置では、その差がかなり大きく、へどろ吸着材の効果がはっきりわかる数値とはなりませんでした。実験装置そのものが初期のものと新しいものでは条件が違うところがあり、そのため、このようなことが起きたのだろうということです。実験とは、そういう試行錯誤の積み重ねなんだろうなあと思うと、その苦労がわかります。まるで暗闇の中に放り出されたようだったとおっしゃいました。数々の改良を重ね、最近、トンネルの先の方に出口の明かりが見えてきたそうです。

「当初の予定とは違う手法や機材などが必要になりました。夏原グラントで、多少予定が違っても機材を購入できたことはありがたかったです」

近くにある京都府立海洋高校に、関心を寄せてくれている先生がいらっしゃるとのこと、その先生を通して高校生との連携ができないかと考えているそうです。特にラズベリーパイなどへの関心はきっと高いだろうから、連携できる可能性があるのではとおっしゃっていました。

新しい技術は、多くの人々に関心を持ってもらうことが第一歩です。そのためにも、若い人が関心を持つことには大きな意味があります。研究の成果を共有するためにも、一緒に実験に取り組むこともいいかもしれません。

気づきから具体的な実験に取り組まれていることが素晴らしいと思います。この成果をどのように伝えていくか、事業の進展が楽しみです。

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