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里山農園周辺環境整備事業 /特定非営利活動法人 やましろ里山の会

事業の概要

京都府京田辺市の里山にある農園周辺の里山では、ナラ枯れが多く安心して山に入れない状況です。そこでコナラなど約20本を伐採し、運び出すことで安全に環境調査や学習体験を行います。伐採後は炭焼きも行い、跡地にはコナラやクヌギなどを植樹し森を復旧させます。里山農園では自然に親しむイベントを開催し、親子での参加を募ります。

やましろ里山の会 活動写真

 7月8日、NPO法人やましろ里山の会の活動におじゃましました。当日は、翌週に控えた「夜の生き物調べ」の下準備も兼ねた観察会でした。
 NPO法人やましろ里山の会は、「自然を大切にする仲間の輪を大きくする」をスローガンに、木津川堤の植物・昆虫・魚などの観察・調査活動、休耕田や耕作放棄田の復旧をてがけ、炭焼き体験や柿山の管理、里山農園での野菜栽培・稲作体験など、多彩な活動を展開しています。観察会や体験会、調査活動、講演会などは公募により、多くの方々が参加されているそうです。
夏原グラントで取り組まれているのは、多彩な事業のうちの「やましろ里山農園」に関する事業です。

 田畑は耕作をたとえ1年でも休むと、どんどん荒れていきます。やましろ里山農園は、数年間耕作されなかった田畑が荒れ放題となった様子を見て、これは何とかしなくてはいけないと10数年前から始められた事業です。人の背丈以上に伸びたササダケや草木を刈り取るだけでも、ものすごい手間がかかったそうです。少しずつ整備を進め、今のように見通しがよくなった農園を見ると感慨深いなあとおっしゃっていました。整備が進んでいる里山農園を見ると、ここが荒れ放題だったとは思えないほど明るく、里山の懐に包まれた穏やかな場所です。
 
やましろ里山の会 活動写真
この農園を取り囲む里山には、ナラ枯れの木が多く、多くの方に楽しんでもらう場としては、安全性が心配されていました。このナラ枯れの木は山の斜面にあり、伐採には危険が伴うためプロに任せないといけません。ナラ枯れ木をプロに伐採してもらいたいと、夏原グラントに応募されました。そして助成金の交付が決まってすぐ4月中に、すでに伐採が終わったとのこと、素早い対応です。

やましろ里山の会 活動の写真
 プロは、ナラ枯れの木を伐採はしますが、それだけなので斜面のあちらこちらから切り倒された木が見えています。

やましろ里山の会 活動の写真
 「このままではアカンやろ。少しずつ切り出して運んではいるんやけどな」

やましろ里山の会 活動の写真
 持ち出せるように短く切った木は、太さ別にきれいに積み上げられていました。斜面での力仕事なので、ここまでやるにも一苦労。人手が必要です。倒された木は、まだ奥の方にもあることや雨が降ると水分を含んで重たくなること、伐採された木は時間たつにつれて土の中に埋もれてしまうことなど、これからどのようにして運び出してくるか課題が多いそうです。それでも「ちゃんと運び出してきれいにしたいんや」と、地道な整備が続いています。
 農園では、野菜が植えられています。
 
やましろ里山の会 活動の写真
 ナス、ピーマン、トマトなど、夏野菜が植えられています。収穫された野菜は、近くの府営団地の方々に朝市で提供しているとのこと、とても評判がいいそうです。それは、間違いないこととよくわかります。近くで朝採れた野菜、おいしいに決まっています。季節ごとに野菜を植える面積も少しずつ増えているとのことです。
 ここで問題なのは獣害です。イノシシがよく出るそうです。ナラ枯れ伐採で一時期防護柵を撤去していたけれども、落ち着いたら復旧させるとのことでした。どこでも悩まされている大きな問題です。
 里山農園を案内していただいた後は、観察会に合流です。
観察会には、近畿大学元教授の桜谷先生が指導に来てくださっていました。「ここには多様な動物や植物の希少種がいます。来るたびにその魅力に引き付けられます」とのことでした。
展望塔があります。

やましろ里山の会 活動の写真
「今日は、タマムシがたくさん飛んでるわ」と指さしてくださっている方を見ると、確かに飛び交っている姿が見えます。キラキラ光っているのもはっきりわかりました。アミを振っていると・・・・

やましろ里山の会 活動の写真
 数分のうちに、アミの中にタマムシが!

やましろ里山の会 活動の写真
やましろ里山の会 活動の写真
 タマムシが飛んでいるのも、それも数匹、行ってしまったと思ったら違う方向から飛んで来たという体験は初めてでした。そして手元で光を反射してキラキラ「玉虫色」に光っているのを見るのも初めてでした。結構な大人がこれだけ興奮するのですから、子どもたちならどれほど喜ぶだろうと想像するだけで楽しくなってきました。
 今回は「オオムラサキ」も観察会の重要な対象です。飛来したことのある場所などに望遠鏡を設置していました。クヌギの樹液に集まってくるとのこと、その周辺を中心に設置しましたが、残念なことに今回は見つけることはできませんでした。
 桜谷先生が「前に来た時、コクランが芽を出していたので、見に行きましょう」と声をかけてくださいました。山すそから、道ならぬ道をかき分けて行くことになりました。

やましろ里山の会 活動の写真
カマで両側の竹などを払って進んでいきます。だんだんと道が狭くなり、ついには先に行けなくなりました。桜谷先生によると、前回来た時に見つけたのは、それよりも先だったそうです。残念ですが、引き返しました。それでも、芽が出ているところに数か所ですが出会えました。このまま、元気に育ってねと声をかけてきました。

やましろ里山の会 活動の写真
 里山の整備をしていると、キキョウ、エビネ、ムヨウラン、ササユリ、ウメバチソウ、スズサイコなど多くの希少種が生育していることが確認できたそうです。植物だけではなく、カスミサンショウウオやカヤネズミなどの希少動物たちも生息していることがわかってきました。

やましろ里山の会 活動の写真
 ここにカヤネズミがいるのか!? と想像するだけでワクワクします。
しかし、希少な生き物が生育できるのは、環境が整っていてこそです。十数年かけて整備してきた里山ですが、整備してきた環境を継続的な作業で維持していかなくてはなりません。とにかく人手が必要です。それが、やましろ里山の会のスローガン「自然を大切にする仲間の輪を大きくする」そのものにつながっています。
 豊かで貴重な身近に希少な生物が生息する里山が、いつまでも整備が続くことを願いながら、この場所を後にしました。

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