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久多の山と遊ぶビーバーの会 /自然住宅情報ひろば

事業の概要

2009年から、京都市左京区久多の永年放置された斜面地(会員の持ち山)の雑木林の保全管理活動を開始。そこが自然豊かな環境であることがわかったので、里山保全管理についての講習・倒木整備の為のチェーンソーの使い方講習など行いつつ、現地・植生調査や進入路の倒木整備を続けています。今回、助成金を得て年3回の専門家による自然観察会と、宇治田原市内のまつたけ山整備に伴う薪作り、「木のフォーラム」等を行います。

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2018年11月11日、自然住宅情報ひろばの事業、久多の山と遊ぶビーバーの会のキノコの観察会に伺いました。

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滋賀県大津市のJR和邇駅でピックアップしていただき大津市葛川地区を抜け、会の皆さんとともに車に同乗して京都市左京区久多に向かいます。山は紅葉が始まって美しく彩られていました。途中、車がやっと一台通ることができる程度の渓谷沿いの細い道をたどり、久多に到着しました。

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この建物に参加者と会の皆さんが集合しました。荷物置きに借りたそうです。今回の参加者は、自然住宅情報ひろば、一般参加者、指導の専門家を合わせて13名。

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自然住宅情報ひろばの栗原(写真左から2人目)さんが、今日のキノコの観察会のプログラム、参加者と指導してくださる方の紹介がありました。
左から1人目が、今回ご指導してくださる、専門家の大江友亮さんです。

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活動フィールドに出かけるまで、今日開催中の久多秋の里山まつりを見に行くことに。会にご縁のある地元の方が屋台を出しておられるということでした。

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廃校になった小中学校のグランド跡地でしょうか。会場のステージではフォークソングが披露されていました。

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受付で大根炊きのチケットをいただき、熱々を一椀もらって食べました。本当に具は大根だけのシンプルなもので、山の里の味わいでした。
しばらくして、準備が整い車に乗って活動フィールドの近くまで移動。川沿いの道から、いよいよ林道を奥へと歩いて行きます。

ここから、参加者全員で歩きながらキノコを見つけては、その名前や、そのキノコにまつわるさまざまなお話を大江さんに聞かせてもらいました。

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まず川沿いの道の脇にキノコを発見。ツチグリです。英語ではアーススター、地球の星だそうです。形が星形をしているから、この名前には納得です。このツチグリを食用にしていた時代もあったそうです。

「毒のないキノコはありません。人間が食べてみて体に害があるものとないものがあるだけで、本来どれも毒を持っているんです。だから絶対に生で食べてはダメです」と大江さん。

「毒キノコといえば、有名な刑事ドラマの中の殺人に使われたこともありますよ」

「キノコ類の同定(種類や名前を判別すること)はとても難しいので、私も『○○の仲間』というように紹介しています。全部名前がわかるという人はまだまだ初心者です。キノコをやり始めて2年目くらいに『オレは全部わかるんだ!』と万能感にとりつかれる時期がくるんですよ。でも、それは間違いです」

など、大江さんのキノコにまつわるお話はおもしろくて、ずっと笑って聞いていました。

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ツチグリの中には綿のような、ホコリのような胞子が詰まっていました。

他にもホコリタケなどのように、ホコリが出るタイプのキノコの中のふわふわの部分をほぐし、昔はケガをした時にあてがう綿の代わりにしていたそうです。山での暮らしは、あるものを全て利用していたのだな、と感心しました。

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これはチャダイゴケのフタがとれた状態。中に胞子のつぶつぶが入っていて、雨粒が当たるとその胞子を飛ばして周囲に胞子をまくそうです。

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舗装路のすぐ脇の落ち葉が積もったところにも、小さなキノコがひょろっと伸びていました。写真では一番下のとこと、真ん中から少し右に写っています。わかるでしょうか?これはアシナガタケです。

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ハタケシメジ。これはスーパーでも売っている、食べられるキノコだそう。


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エリマキツチグリ。さっきのツチグリの仲間で、やはりホコリが出ます。

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森の中の朽ちた木には、ニガクリタケの群生が見られるところがあり、みなさん大興奮で即座に撮影会開始です。

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スッポンタケ。卵のようなものから、キノコが伸びています。卵のようなものはゼラチン質でできていて虫を集めるいいにおいを出しているのだそうです。確かに小さな虫がいっぱい集まってきていました。

大江さんは「キノコは何にでも擬態できます。花に似せたキノコもいます」と、キノコのすごさを教えてくれました。

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道をふさぐ倒木。この前の台風で倒れたままになっているそうです。これがあるので車で奥まで行けないのです。台風の爪痕はあちこちに残っています。でも、キノコたちにとって朽ちていく倒木はおいしい栄養源。分解して養分を吸収して、胞子を飛ばして増えていきます。キノコが森の命の循環に一役買っているのが感じられました。

大江さんは「菌類がいなかったら生物は海から陸上に上がってきていない。それくらい大きな働きをしています」と壮大なスケールのお話をしてくれました。キノコたちがそこまですごい働きをするとは。

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ヒメロクショウグサレキン。たくさんの種類のキノコの中で、最も驚いたのが青いキノコでした。こんな色のキノコを見たのは初めてです。参加者の皆さんも驚いて長い間見ていました。

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表面のキノコが生えるためには青色の菌糸が木の中まで染めているので、昔の人はこの青い木をたくさん集めて煮出し、青い染料として使ったそうです。そうやって使うためには、かなりの量を集めなければならないそうですからたいへんだったでしょうね。木自体が中まで青く染まっているので、木工の素材としても使われているそうです。

その後、道を歩いていくと青いキノコが覆っている朽ち木を何本か見かけました。それほど希少という感じではないのです。日当たりの悪いほう、木の裏側に多いです。今まで青いキノコは見たことがなかったのですが、もしかしたら木をひっくり返すとこのキノコの仲間と出会うことができたのかもしれません。

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ツヤウチワダケ。
あちこちで参加者の皆さんが見つけたキノコを、大江さんに見てもらって名前と特徴を話してもらっているうち、会のフィールドに着きました。

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トチノキの巨木が土地の境の印になっているそうです。トチノキをよく見ると、枝にはサルノコシカケのようなキノコが生えています。キノコが生えているということは、既に枝が枯れてしまっている印。この木も朽ちかけている証拠だということでした。

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石に腰掛けて休憩していると、大江さんが朽ちた木の枝を持って来てキノコを見せてくれました。これはアカチシオダケ。

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このキノコを傷つけると、血のように赤い汁が出ます。その汁で大江友亮さんが紙に「チシオ」と書きました。キノコがペン代わりに使えるとは!

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その間に、栗原さんたちは持参した鍋に採取したキノコ4種類を加えてみそ汁を作ってふるまってくださいました。温かいキノコのみそ汁は山の旨みたっぷり。キノコは見てもよし食べてもよし。いろんな楽しみ方ができて楽しいですね。

持参したお弁当と、会のメンバーでありこのフィールドの地主であるマスター(愛称)さんの手作りのサンドイッチやお総菜、コーヒーをお裾分けしていただいて、ランチタイムが終了。

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急な坂道を歩いて、拠点へ移動します。

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私は渓谷沿いを歩いたのですが、台風などで倒木がごろごろしていて歩きにくくなっていました。ロープにつかまりながら歩いていくと拠点に使われていた東屋がありました。周辺も、そこまで道も倒木で塞がれてしまったため、今後、拠点をトチノキのあたりに移動させる予定なのだそうです。

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倒木は谷を渡って向かい側の斜面にまで到達していました。

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台風で荒れた渓谷沿いの朽ちた木の根っこに、キノコの群落を発見!
参加者の皆さんが色めき立って群がります。

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色とりどりのキノコがきれいで、まるで絵本の挿絵のように見えました。また、粘菌も見つかりました。

キノコの群落を見ると、人はなぜうれしくなってしまうのか?遠い昔、祖先が森でキノコをとって食べていた頃の記憶がよみがえるのかもしれませんね。

ここからは同じ道を引き返しキノコを観察しながら車まで帰りました。

こうしてキノコ観察会は終了しました。自然の中で過ごし、キノコの世界にどっぷり浸かった一日でした。大江さんが紹介してくださったキノコ情報からは、食料としてのみならず染料や木材、毒など、キノコが昔から生活と関わりが深いことがわかり、キノコもひとつの日本の生活文化なのだと感じました。

また、身近なたとえからアカデミックな情報まで硬軟織り交ぜてあり、最初から最後までとても楽しく学べました。

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自然住宅情報ひろばの皆さんは、定期的にフィールドの整備を続けながら、このような誰でも参加できる自然観察会を、季節ごとに開催しています。また「木のフォーラム」と題して家造りのイベントも開催。会員は京都、滋賀、大阪など、観察会も近畿一円から参加しているそうです。

日本中の多くの山に人の手が入らず荒廃していく中、少しでも食い止めようとする活動は難しいことだと思います。それでも楽しみを見つけながら、息の長い活動を続けていくことを願っています。

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