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天然更新試験地食害防止活動と植生調査 /山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会

事業の概要

山門水源の森は、西浅井町の北端にあり、県内でも珍しい湿原があります。この事業では、天然更新試験地における植生調査や、生物の生息調査を行います。同時に獣害防止を行うことで、行わない箇所との比較調査等を行います。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真

9月30日、山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会の調査現場にお邪魔しました。
山門水源の森は、滋賀県長浜市西浅井町の最北端の福井県境に近い野坂山地に位置する県有林です。面積は63.4haで1993年まで、地元の方の炭焼き業の薪炭林として利用されていたところです。その後は利用されることもなく放置されてしまいました。バブル期にはゴルフ場建設計画が持ち上がりましたが、バブル崩壊とともに会社が撤退し、1996年に滋賀県が買収しました。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会は、この地で環境の保全活動と同時に地質・植生・生物など、さまざまな分野にわたる調査を継続してきました。今回の夏原グラントの対象事業は、1960年代以前の炭焼きが行われていた時代に行われていた皆伐(樹木を全て伐採すること)を再現して、生物の多様性を再生するというもの。また、同時に半分は防獣ネットで囲い、半分は囲わないままにして違いを調べます。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
県道から少し入ったところに会の拠点となっている、やまかど森の楽舎(まなびや)があります。すぐそばにはビオトープが整備されていて、山門湿原の貴重な植物を種から栽培して種の保存の場としているそうです。手入れが行き届いていて、とても気持ちのよい美しいビオトープです。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
この森には現在、キーパーと呼ばれている4名の方が常勤されています。今年限りだそうですが、頼もしい皆さんです。写真は実生のブナの苗をポットに植え替えされているところです。
山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
会の皆さんとキーパーの皆さんとともに山道を20分程度歩き、調査地域まで行きます。途中、湿原を見下ろすポイントに案内してもらいました。草原(湿原)が緑の山に囲まれているのが見えます。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
湿原を取り囲むようにそびえる山。右手の少し低い山まで遊歩道がつけられていて、湿原をぐるりと巡ることができます。左手の高い山は県境になっていて向こう側は福井県。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
尾根からかなり下のほうまで、樹木が全て伐採されているところに到着。ここが天然更新試験地です。説明によりますと、この森は炭の材料にするため10年から15年の周期で伐採され、切り株から芽が出て新しい森へと更新されてきました。しかしここ50年は全く伐採されず、樹木が枯死、低木や草が減少してしまいました。それを食い止めるために森林の若返りを調査しているということです。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
防獣ネットは背の高いものはシカ、下半分の緑色の目の細かいものがウサギ用です。高価なのにシカが引っかかったりして2年以上もたないそうです。
山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
右側が囲ってあるところ、左は囲ってないところ。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
囲ってないところは見渡す限りアカマツばかりです。シカやウサギが食べないものだけが生き残っています。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
こちら、囲いの中での植生調査作業のようすです。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
地面にロープを張り、区画を決めてあります。この区画の中を更にロープで割りつけ、メンバーがその中に生えている植物全ての種類と数を確認しながら大きな声で言うと記録係の人が書き留めていきます。メンバーから「今日はまだ涼しいからいいけど、暑い日、長時間の調査はしんどかった」との声。伐採された山の斜面はかなり広範囲です。今回の調査は9月下旬の10日間くらいで終了しました。前回は5月下旬から6月上旬にかけて行われています。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
調査が終わったら湿原まで降りて行きました。伐採斜面の一番下の木に、センサーカメラが設置されています。写真のハシゴの上に取り付けられたカメラが見えます。夜の間に植物を食べに来る動物たちの実態調査のための夏原グラント助成事業の一部です。年度末には植生調査とセンサーカメラによる調査結果の整理が行われます。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
至るところで獣害を防ぐ工夫が見られました。この金網はササユリを守っています。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
この白い小さな札は、ササユリの種を植えて芽が出たところの印です。その場所に生えていたササユリから種を採り、同じ場所に蒔くことを徹底しているそうです。ササユリは種を蒔いてから花が咲くまで7年掛かるのだとか。それを途中で食べられてしまったらどんどん減ってしまいますね。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
北部湿原の奥には手入れの行き届いた気持ちのよい「四季の林」が。秋の紅葉はすばらしいそうです。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
こちらは南部湿原。希少植物を守るためぐるりと柵がめぐらされています。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
観察コースから北部湿原を見たところ。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
湿原の中の木の幹には、シカが樹皮を食べた跡が。痛々しいです。こうして皮をはがれてしまうと、そのうち木は枯れてしまうそうです。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
炭焼き窯跡。水源の森周辺には、炭焼き窯跡が30もあるそうです。木を切り出したらその近くに窯を築くから多いのだそうです。これを見ると本当にこの森がもともとは里山だったんだと実感できました。

山門水源の森を次の世代に引き継ぐ会 活動写真
↑やまかど森の楽舎の前にあるビオトープ。ヒツジグサの池ではトノサマガエル、何種類かのトンボとチョウ、アカハライモリなどの姿を見ることができました。

広大な面積の山門水源の森の環境を保全するためには、人が手を入れる必要があり、常に山仕事をしなければなりません。その上、獣害との戦い、冬の豪雪、台風など自然災害があれば道の復旧作業も増えます。
案内してくださった事務局長の藤本さんは「全く賽の河原です」と苦笑されていました。「山仕事は大変ではありますが、手間暇かけてやれば、必ず手応えがあるので、やり甲斐があります。だからメンバーはボランティアででも続けられます。それでも会は2001年の設立から12年、その準備段階からだと20年ですから、そろそろ組織の若返りを予定しています」ともおっしゃっています。

山門水源の森は、会の皆さんの努力で素晴らしい場所となっていて、訪れた人はファンになり、リピーターも多いそうです。地元の小中学生が植林や道の保全作業に加わることもあり、地元の皆さんも協力されてきているのだとか。これからも、みなさんお元気で、たくさんの人を魅了する素晴らしい里山をどうぞお守りください。

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