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森と山の塾2016 /特定非営利活動法人 麻生里山センター

事業の概要

かつて摘草地や薪炭林として使われていた里山を再び利用することで再生したいという思いから、年10回、地元だけでなく広く流域に暮らす皆さんに呼び掛けて、里山入門講座を開催します。 専門家も交え、旧薪炭林の現状調査や山の景観を「読む」作業などを通して、里山の現状や里山と人との関わりの歴史を知ってもらい、また、里山管理技術を学んだり、昔ながらの生活用品づくりを体験したりする内容です。

麻生里山センター 活動写真

2016年5月14日、滋賀県高島市朽木にある「森林公園くつきの森」で開催される森と山の塾(ワラビ摘み)に参加しました。くつきの森の指定管理者である特定非営利活動法人麻生里山センターが主催する、10回の連続講座の2回目にあたります。

麻生里山センターの活動写真
くつきの森まではJR安曇川駅からバスに乗り30分、朽木学校前で乗り継ぎ10分。上野口バス停で降りて徒歩数分で、くつきの森の事務所やまね館に到着です。

麻生里山センターの活動写真
五月晴れの気持ちのよい日、新緑からの木漏れ日がさわやかな風に揺れていました。やまね館で受付を済ませ、さっそくホールに移動して今回のメインであるワラビについて説明を受けました。
本日のご担当は、特定非営利活動法人麻生里山センターの海老沢さん、石脇さん、そして緑のふるさと協力隊として、この4月から朽木に着任したばかりの中澤さんの3名です。

麻生里山センターの活動写真
ずらっとワラビの保存方法の違うものを並べてくださいました。
ワラビは山間地での貴重な保存食でした。

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これは田植えの時(さびらき)にお供えされるワラビです。ホオ葉の上にご飯と黄粉、そして木の芽であえたゆでワラビが盛られています。神棚などにお供えしたそうです。また参加者の中には、田植えの時に食べていた、という人もおられました。

日本各地、いや中国でもワラビのデンプンを使った乾麺などが食べられているそうでその実物を見せていただきました。

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これは干しワラビ。

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これは塩蔵ワラビ。塩漬けにしてあるので日持ちします。

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これはワラビの繊維(地下茎)です。根からワラビ粉を取るのですが、そのカスは乾燥させて編むと強靱なヒモになり、昔は土塀の中の竹を編むのに使ったり、竹垣をこれで縛っていたりしたそうです。「千年保つ」とさえ言われていて、現在では「ワラビヒモ」と言えば高級品だそうです。

朽木ではワラビなどが生える肥料用の採草地のことをホトラ山と呼んでいたそうです。大きな木がなく、草原の下には地下茎が張り巡らされているので、4月~6月は後から後から生えてくるそうです。山里での暮らしにはありがたい食料ですね。

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ワラビの説明を聞いたら、出発です。

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広い敷地の中には、セラピーロードと名付けられた小道が続いています。

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なにかおもしろい植物などがあると、海老沢さんが説明してくれます。
写真はシナノキ。葉っぱを食べるとネバネバしてくるのです。
「タンポポは苦いけど、なんとか食べられます。
 ノギクの類は柔らかい時はほろ苦いけど食べられます。
 フジは、そこそこ食べられます。花も天ぷらにして食べますね」
だいたいが、食べられるか食べられないかがメインで、食料危機に備える意味で勉強になりました。

麻生里山センターの活動写真
麻生里山センターの活動写真
橋からの眺めもすばらしいものでした。渓流のせせらぎの音、カジカガエルの鈴を転がすような声も聞こえてきました。

麻生里山センターの活動写真
ユリノキ広場の真ん中には大きなユリノキ。40年くらいでこんな巨木になったそうです。芝生の周辺にもさまざまな樹木が植えられています。

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これはちょうど咲いていたハンカチノキです。遠くから見ると本当に白いハンカチがたくさん掛かっているかのよう。白い苞が垂れ下がっています。東京にある小石川植物園からもらってきたそうです。

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海老沢さんの後をついて山を歩いていると、鹿の角を発見した人がいました。
オス鹿の角は毎年落ちるそうで、まだ2、3才の若い鹿だろうとのことでした。その角は、最年少の小学生男子にプレゼントされました。とってもうれしそう。

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たくさん生えているワラビを確認したところで、一旦やまね館に戻って昼食です。持参のお弁当をロビーやホールなど、思い思いの場所で食べました。
その時、主催の皆さんからの試食の差し入れが!木灰(左)であく抜きしたものと重曹(右)であく抜きしたものをゆでたワラビです。味の差はわかりませんでしたが、木灰のほうが色が緑色っぽく残っていました。
シャキシャキの食感がたまらなくて、ついお代わりしてしまいました。
もう一つ、真ん中の小鉢は、本物のワラビ粉でつくったワラビ餅に黄粉をかけたもの。もっちもちの食感とほんのりした甘さが、ほっとしました。

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ワラビ粉の取り方は、ワラビの根っこを掘り返し、洗って叩き、布で漉し沈殿したワラビ粉を分離します。一番下に白くたまったのが、写真下の白いほうで「一番粉」、茶色く見えるのがその上にたまった「二番粉」です。「一番粉」は売って「二番粉」は自宅用にして食べたということです(群馬県みなかみ町の事例)。ワラビは新芽だけでなく根っこまでが、山里の暮らしを支えていたとは。しかし、においがアクっぽいというか、土っぽいというか。かなりにおいました。これは売り物にはならないでしょう。食べてもおいそうじゃないですね、糊にしていたのかもしれません。一番粉も糊用で売られていて、マメ柿から作った柿渋と混ぜて傘に塗っていたそうです。

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やまね館には、スタッフ手づくりのお土産も売られていました。カッティングボードやカスタネット、鉛筆立てなど。見渡す限り木に囲まれているのですから、木材産業も盛んなはずです。

麻生里山センターの活動写真
午後からは、いよいよワラビ摘みタイム!
誰一人、おしゃべりする人もなく黙々とひたすらワラビを探していました。

麻生里山センターの活動写真
上手な人はこんなに摘んでいましたが、そうでない人もいました。(私です)
慣れないと、適度に成長したワラビを見つけられないのです。

麻生里山センターの活動写真
海老沢さんはクワを持参して、ワラビの根っこを掘り出して見せてくれました。この地下茎からワラビ粉が取れるのです。でも、実際に作ってみて大変だったそうで、もう二度とやりたくない、とおっしゃっていました。ワラビ粉が高級品になる訳がわかりますね。

麻生里山センターの活動写真
それからは、くつきの森の中の違う道を通って帰りました。
山は現在、鹿の食害で木が育たなくなっていました。まだ小さな木のうちは、こうしてネットで囲まなければ必ず食べられてしまいます。
周囲に残っているのは、ワラビのようにアクが強いもの、ちくちくしたトゲのあるもの、毒のあるものなどで、笹すら残っていません。

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これは可憐なレンゲツツジですが、これも毒があるから鹿が食べなくて生き残っているのです。本来なら、もっと多様な花が咲いているはずなのに。

麻生里山センターの活動写真
水田跡地には黄色いサワオグルマが咲いていました。

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これはスズメバチトラップ。中に女王蜂候補がとらえられていました。

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向かいの山も新緑が盛り上がるように萌えています。その中には自生しているモミの木も見えました。

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最後に木の橋で沢を渡る、ちょっとしたスリルを味わい、やまね館に帰りました。
海老沢さんは「この森と山の塾は、できれば通して参加してもらいたいです。その参加者の中から、いっしょに山の保全に関わってくれる人、新しい資源利用を考えてくれる人が出てきてくれたらいいな、という願いを込めて開催しています」とおっしゃっていました。

参加者は9名で、滋賀県内はもちろん、愛知県、福井県、大阪府からも来られていました。
感想として「ワラビ摘みとても楽しかったです。山の恵みと人の営みと生態系とリンクしているのがよく分かりました。」とか「山里のくらしの知恵を教えていただいたのが興味深かったです。ワラビの根の縄には驚きました。」などという声があったそうです。

豊かな自然の中を歩きながら、単に植物について説明するのではなく、昔の山里の暮らしと直結した知恵や歴史などまで教えてもらえるのがこの塾の特徴ですね。今や途絶えかけている、山里の知恵の数々を、塾という形で後世に伝えていくことができるかもしれないと感じました。
森と山の塾はこれからも3月まで、その季節ごとにテーマを変えて開催されます。ぜひ自然の中に出かけて、山の暮らしの一端を体験してみてください。詳しくは、森林公園くつきの森のサイトにアクセスしてください。

2 Comments on “森と山の塾2016

  1. いしわきちよこ

    わらびもちは、現代人にもおなじみですが、わらび粉の種類や、それを作る苦労など、初めて知りました。

    返信
  2. しがNPOセンター 投稿作成者

    いしわきちよこさん

    コメントありがとうございます。ただ単にワラビを摘むというのではなく、きちんと山里の生活とリンクさせてくださるプログラムでした。

    年間通じて開催されますので、機会があればぜひご参加くださいね!

    問合せ先は、森林公園くつきの森 です。アクセスしてみてください。

    返信

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