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琵琶湖ヨシの新たな用途拡大を目指す 保育園室内温度抑制事業 /特定非営利活動法人 モスグリーンEco

事業の概要

滋賀県多賀町内にある、ささゆり保育園の運動室の屋上にヨシでできたパネルを設置し、室内温度を5~6度抑制します。クーラーの温度を下げすぎなくていいので省エネになり、子どもたちの健康維持にも役立ちます。ヨシは1本が成長する過程で窒素とリンの含水1トンを吸収浄化できます。これが広がれば安い中国産のヨシに押されて需要が減少している国産ヨシの新たな需要が見込めます。

2018年7月11日、特定非営利活動法人 モスグリーンEco(以下、モスグリーンEco)のヨシパネルが保育園の屋根に設置されるところに伺いました。

モスグリーンEco活動のようす画像
こちらが設置される多賀ささゆり保育園です。多賀町立で、一番規模が大きく園児は170名ほどだそうです。

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保育園の玄関です。

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その屋根に、荷物を運ぶ人影が。

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二階の屋根へ上がってみると、まず苔が敷き詰めてあるのに驚きました。これは以前、モスグリーンEcoが設置した「ヨシ緑化パネル」です。苔の下には今回設置する「ヨシパネル」が敷き詰めてあります。だから見た目より土を敷き詰めていないぶん軽いのです。
このパネルの奥のほうの屋根が今回ヨシパネルを貼る場所です。

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苔がかなり盛り上がっています。

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もともとは下にチラリと見えているネットの下だった苔が、繁殖したためにネットは隠れたそうです。この苔とヨシのパネルの実験では室温が6度下がっているということです。

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これがヨシパネルです。
サイズは30センチ×30センチ。最上層には不織布を貼り、光をさえぎる遮蔽(しゃへい)塗料を塗ってあるので、これだけでも表面温度を12度も下げる効果があるそうです。

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1枚のヨシパネルは、ヨシを交互に向きを変え4層重ねてあります。ヨシズやヨシの簾(すだれ)と同じように糸で編んで面にして圧着させています。

ヨシパネルは全て手作業で作られているのですが、その仕事を担当しているのが障害を持った方たち。共同作業所が請け負っています。制作にはとても時間がかかるので、今回のパネルの準備は1年くらい前から開始したのだとか。

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これは裏面です。

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屋根の表面はコンクリートなので、風があるにもかかわらず反射熱でかなり暑く感じます。そんな中、工務店の方々が手早くシートを敷き、枠組みを作っていきます。その間に、モスグリーンEcoの代表である大辻さんやメンバーは、この屋根の下にある部屋に行きました。

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真ん中が大辻さん、右側はヨシパネルを共同開発した、元滋賀県立大学教授・副学長の仁連さんです。手に持っているのは、室温を記録するためのデータロガーです。今までの実験結果では6度くらい室温が下がっているということでした。

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あひる組さんはお昼寝タイム。ぐっすり眠っている子どもたちを起こさないよう、そーっと壁にデータロガーを取り付けました。

ひよこ組さんにも設置。

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廊下の壁にも設置。

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園長先生にも、データロガーをどこに取り付けたかを確認してもらいました。ヨシパネルで屋根を覆った部屋と、そうでない部屋の温度を比べるためです。

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屋根に戻ると、ヨシパネルの設置がだいぶ進んでいました。周りの木枠で針金を渡し、パネルが飛ばないようにしています。

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プレスリリースもキッチリ行っておられ、2つの新聞社から取材が入っていました。写真は大辻さんがヨシパネルとともに撮影されているところです。記事になってヨシパネルのよさが広まってほしいですね。

ヨシパネルを敷き詰めたところにいると、コンクリートむきだしのところにいるよりも本当に涼しく感じました。手で屋根のコンクリートや手すりに貼られた金属板をさわるとかなり熱いのですが、ヨシパネルをさわると、あたたかい、という程度なのです。これだけでもずいぶん差があるのがわかります。見た目は決して派手じゃないのですが、かなりの実力派なんですね。

更に、今回使ったヨシパネルの面積は約40平方メートル分で、作るために使われたヨシの量は144,000本で、それが琵琶湖湖岸で育ったものということです。ヨシ1本が3メートルの背丈まで成長するのに、水窒素、リンを含んだ水を1トン吸収し、それを浄化してくれます。近年は安い中国産のヨシが国産のヨシに代わって使われていますから、モスグリーンEcoのヨシパネルを使うと、琵琶湖の水の浄化も進むことになります。

障害を持つ方の仕事の確保もでき、琵琶湖の水質浄化も進む、このヨシパネル、夏は涼しく過ごせて省エネにもなります。日本古来の茅葺き屋根にも似た効果があるわけです。本物の茅葺き屋根は葺き替えなどに専門の職人さんと集落総出になるくらいの人手が必要ですが、このパネルなら一般的な大工さんが比較的短時間に貼ることが可能です。パネルが軽いので、マイホームの屋根に載せるのを家族で手伝うこともできそう。愛着が湧きますね。もしかすると、これは現代における「ヨシ葺き屋根」のひとつの形なのかもしれません。

自然のものなので、どうしても何年か後には朽ちてしまいますが、処分しても環境へのダメージは少なくて済みます。これだけのプラス面を持つヨシパネルの良さがもっと広まって施行例が増えていってほしいと願っています。

One Comment on “琵琶湖ヨシの新たな用途拡大を目指す 保育園室内温度抑制事業

  1. 大辻 誠男男

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