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滝区ササユリの咲きほこる里づくり /滝区ササユリの里づくり委員会

事業の概要

ササユリが開花するまでは長い年月を要します。10年前からササユリの保護と増殖を行ってきて、やっと花が見られるようになってきました。小学生がバイオテクノロジーを用いて種苗の大量増殖を行い、その球根を保護者、子ども、老人クラブ、区の役員、高校生、大学生まで参加して苗床や里山に植栽します。その後、下草刈りなど苗の管理は主に老人クラブや推進委員が担当しています。地域全体で取り組むことで里山の環境保全とともに良好な地域社会の維持と形成に役立っています。

滝区ササユリの里づくり委員会 活動のようす画像

2019年6月9日、甲賀市の滝区ササユリの里づくり委員会の今年の第1回ササユリの里づくり活動に伺いました。甲賀市は甲賀流忍者のふるさととしても知られています。忍者は全国を巡り、情報を収集していたのだそうで、甲賀で盛んな売薬とは無関係ではなさそうです。そんな歴史から市内には製薬関係の企業も多く、滝区にも製薬会社があります。

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集合場所は、滝会館。庭にりっぱな看板が立ててあります。

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既にたくさんの方が集まっていました。

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全員そろったら開会式です。年間3回、このように総力をあげた活動をするそうです。滝区ササユリの里づくり委員会の会長である片岡 博明さんの挨拶のあと、70名以上の参加者がそれぞれの所属ごとに立ちあがり自己紹介をしました。

子ども会、ゆうゆうクラブ(老人クラブ)、民生児童委員、自治会執行部、自治会評議員、甲南高校の校長・教諭・2年生・OB、龍谷大学の佐藤教授と学生、油日小学校の教頭、油日自治振興会担当者、甲賀市職員。

この活動も今年で11年目とのこと。それぞれの挨拶を聞いていると、幅広い年代の方がササユリのために、心をひとつにして活動を続けていることがわかりました。

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滝会館の入り口には、夏原グラントの目録が貼り出されています。

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活動の記録DVDを見て、今日の活動内容を確認して開会式が終わったら、全員で記念撮影をしました。それから、全員で近くにある、梅垣城趾にササユリの開花状況を見に行きます。

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滝区はこのような田園風景が広がる町です。
ササユリは里山の木陰を好む花で、草刈りや間伐をしない荒廃した里山になると咲かなくなります。各地で「昔はどこにでも咲いていたのに、最近めっきり見かけなくなった」という話はよく聞かれます。

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梅垣城跡は周囲をぐるりと丸く土塁で囲まれています。増やしたササユリの球根をここに植えているのです。

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草が生い茂って入る中、負けずに可憐に咲くササユリが見られました。

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白や桃色、少しオレンジがかったものなど、様々です。
清楚で可憐な花と、ほのかな香りには人々をトリコにする魅力がありました。

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今年、ササユリの里委員会の推進委員に最年少で着任したのが、松本さんです。油日小学校時代、バイオ栽培して記念に植えたササユリの根元には植えた子どもたちの名前が。滝区ササユリの里づくり委員会・委員長の渡邉健三さんは「松本くんの名前がここにある」と指さして教えてくれました。

松本さんは、ササユリのバイオ栽培を体験したことがきっかけで甲南高校に進学し、地元の会社に就職してササユリの里づくりの推進委員として戻ってきたのだそうです。こうして次世代へのバトンが渡されているとは、頼もしい限りです。

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ササユリの美しい花を見て、ほのかな香りをかいだあと、それぞれの持ち場に分かれて活動を開始します。

小学生とゆうゆうクラブの皆さんは、ササユリの育苗ハウスに直行し、花が咲いている苗をポットに移植し始めました。

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ハウスには鉄条網がめぐらされ、監視カメラも付けてあります。一度、盗掘されたことがあるので、畑だけでなく梅垣城趾にも監視カメラが設置されていました。

滝区全体でこんなに手間と時間をかけて、やっと咲かせたササユリを盗むなんて、あまりにもひどい行為ではないでしょうか。怒りを覚えます。

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ササユリの鉢は滝区の全戸に配布しているそうで、手分けして子どもたちが一軒ずつ手渡して回りました。

そういえば、周囲の住宅の畑などにも立派なササユリが咲いているのが見られました。

苗を受け取る方と手渡す子どもたちが一緒に記念撮影。みんな笑顔です。有線テレビや市の広報などにも取材されていて、子どもたちの晴れ舞台にもなっているようです。

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一方、ゆうゆうクラブの皆さんは梅垣城趾の草刈りの後、ハウスに遮光のためのシートをかぶせる作業を行っていました。ササユリは日陰を好むのだそうです。テキパキと仕事を進める姿は、本当に高齢者のクラブなのかと疑うほど。

ゆうゆうクラブの皆さんは、年に3回の活動日だけでなく、下草刈りや種まきなども担当されていて、結構お忙しい様子です。

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ササユリを配布し終わった子どもたちは、甲南高校へ向かいました。ここには県内ではめずらしい、クリーンベンチという設備があるので、バイオテクノロジーによる種苗増殖が可能です。

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毎年、高校生3年生が、クリーンベンチでの作業の仕方を小学生に指導してくれるそうですが、今年は修学旅行に行っていて、まだ習熟してない2年生が対応。代わりにOBたちが指導してくれました。

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子どもたちも白衣とマスク、手袋を身につけ、作業にあたります。

この中からは風が吹き出してきます。人の息がかからない、雑菌がない環境で作業するためだそうです。
ササユリの球根を梅垣城趾のすぐそばから採取してきて、よく洗浄して処理しておきます。
それをこのクリーンベンチで小さな切片に切り分けます。
培地の入った試験管の口をバーナーで焼いて殺菌し、冷ましてユリの切片を試験管に植え、フタをするまで、ここで行います。

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培地に植えられたユリ根の切片。

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滝区にある、インキュベーターという機械の中で光を遮断し、温度を適温に保っておくと、またこのような一株のユリ根に育つのでその状態になったら畑に植えて大きく育てます。

ササユリは種からも増えますが、それだと花が咲くまでに6年~7年くらいかかるところ、このバイオ技術の力を借りる方法だと3~4年で花が咲くというのです。

作業を終えた小学生からは「100個くらい作った」「細かい作業だから目が疲れた」「難しかった」という感想が聞かれました。

また、最後のほうでは試験管を洗浄していた大学生や保護者の皆さんもOBから指導を受けながらバイオ増殖の作業を体験していました。

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作業が終わったら、全員であいさつして解散。

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渡邉さんに活動の経緯を伺いました。
「私の実家は代々売薬と農業だったので、私自身もその道に進み、滋賀県の農業試験場と農業大学校でバイオ技術の研究をしていました。そろそろリタイヤの時期を迎えるというので何か地元のために働きたい、と考えたところ、子ども時代には当たり前に咲いていたササユリが、最近咲かなくなったと聞き、これだ!と思いました。というのも、ササユリを種から増やすのと、バイオ技術を使って増やすのでは、花の咲くまでの時間が半減できると知ったからです。
 
定年後は、同じ市内の製薬会社に再就職することで、クリーンベンチを使ったササユリの増殖作業を滝区の小学生に担当してもらうことができました。ところが、その製薬会社もリタイヤすれば、クリーンベンチは使えなくなります。どうしようかと思っていると、地元にあり、県内で唯一薬業科があったためクリーンベンチの設備がある甲南高校の校長として赴任してきたのが、かつての農業大学校時代の教務主任。さっそく交渉しました。そして、高校生に小学生を指導してもらう教育を行う、ということで甲南高校の協力が実現しました。

ただの種まきだと、子どもたちは興味を持ちません。先端の技術に触れられるからこそ、喜んで『やりたい!』と言うのです。また、5年生と6年生が関わることで上級生と下級生のつながりも育っています。さらに、子どもの頃にササユリの里づくりに一役買ったと言う経験が、いつの日か郷土を愛する意識の高揚につながるものと期待しています」。

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まさか忍者の里であるという歴史的事実が、このササユリの里づくり活動に密接に繋がっていて、更に活動の後押しまでしているとは思いもよりませんでした。地域にある宝物・ササユリを守るため、同じく地域の宝物である、子どもたち(小学生・高校生・大学生)・高齢な方々・地縁組織・人脈・歴史(忍者)・学校(薬業科があった高校)を結び活性化しているのが実感できました。

また、奥さんで民生児童委員を務める渡邉満栄さんに、これからの目標を聞いてみると「現在少ない30代40代の皆さんにも協力していただきたいですし、もうひとつは滝区の取り組みを甲賀市全体に広げていって、甲賀市を幅広い世代が協力するササユリの里にしたいです」というお答えでした。大きな夢があるのですね。

滝区ササユリの里づくり委員会のみなさん、これからもササユリの花を守り、幅広い世代による保全活動を甲賀市に広げていってください。

2 Comments on “滝区ササユリの咲きほこる里づくり

  1. さかい

    こんにちは
    ササユリについて質問です。
    ササユリにムカゴは付きますか?
    百合根と種以外に増える手段があるのか知りたいです。

    返信
    1. しがNPOセンター 投稿作成者

      さかい様
      ご質問いただき、ありがとうございます。

      滝区ササユリの里づくり委員会の渡辺さんからお返事です。
      「ササユリは残念ながらムカゴはつきません。他のユリ、例えば今真っ盛りに咲いているオニユリ等はたくさんムカゴが付き増殖しますが・・・・・。そのため、私たちは、バイテクによる球根の増殖と、種子による増殖を行っています。」
      ということです。

      返信

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