年齢に応じた子どもたちの自然体験を通じて子育てママ等を支援する「こそだてママnet☆」の取り組み 〜ボランティア団体から法人へ、ニーズの多様化から次のステップを考える~〜
NPO法人こそだてママnet☆は、木津川市を拠点に京都府南部エリアで幅広い子育て支援活動をしている。夏原グラントでは、2018年度から2022年度にかけて助成を受けている。最初の3年間は、「鹿背山おやこ森のkichi」のファミリークラス、プレクラスに対する助成で、ステップアップ助成では、「森のようちえんプレ事業」を実施した。事業名はステップアップ助成ではで少し変わっているが、いずれも鹿背山をフィールドにした親子の野外体験活動である。
今回は、こそだてママnet代表の福井さなえさんにインタビューした。
(文責 阿部圭宏)
⚫️活動のきっかけ
福井さんは子育て期の不自由さ、社会との断絶、日々のストレスなどから、こうした悩みを共有できる自主保育サークルを設立し、子育てサロンを始めた。2012年にこそだてママnet(任意団体)を立ち上げ、本格的に活動を始めた。その後、京都府や木津川市からの助成を受け活動の幅を広げた。
(代表 福井さなえさん)
(おやこ広場のようす)
初めは子育て支援として室内での活動だったが、親子ともにリラックスできない。そうしているうちに、鹿背山に親子で遊びに行く機会があり、子どもは勝手に遊び始め、福井さんもとてもリラックスできたそうだ。親にとっても子にとっても、外で過ごすことがとてもいいということが分かり、森で親子活動を始めた。
鹿背山では、保全活動団体もあって、特に夏原グラントの助成を受けていた鹿背山元気プロジェクトには野外活動のノウハウを多くを教えてもらった。
市民活動のよさは、ノウハウを独占するのではなく、ノウハウを教え合うことで、活動の質を上げることができる。
夏原グラント助成に採択された2018年度にNPO法人化された。
⚫️活動内容
(親子自然体験 チラシ)
親子の自然体験プログラムを「鹿背山おやこの森のkichi」という名前を付けて実施してきた。未就学児、小学生を3クラスに分け、それぞれ「プレクラス/森のようちえん部」「ファミリークラス/自然体験活動部」「アドベンチャークラス」としている。
プレクラスでは、2〜5歳児と保護者を対象に月1回開催するもので、自由に里山を散策し、四季折々の自然の恵みにも触れることができる。ファミリークラスは年中以上の子どもと保護者を対象に月1回開催し、下草刈りなどの山の仕事の手伝い、直火クッキングなどの経験を積むことができる。
アドベンチャークラスは、小学3年生以上を対象に、より高度な里山整備活動を行うものだ。
年齢に合ったプログラムがいろいろ用意されているので、子どもたちの成長や興味に合わせてクラスを選ぶことができる。
⚫️現場を活かす
体験活動の醍醐味は、その場に応じた現場対応力によってプログラムが運営されている点だ。鹿背山元気プロジェクトなど、現場での活動ノウハウを持つ団体から、まさに体験技術を伝授されて独自に活動プログラムを開発している。
木津川市は自然に恵まれ、学研木津北地区にある「かせやまの森」が生物多様性の保全に貢献している区域として、2025年3月14日に環境省の「自然共生サイト」に認定された。
「かせやまの森」は、オオタカの飛来やヤマトサンショウウオの生息等が確認され、持続可能な生物多様性保全の活動を推進していくとされている。こそだでママnetもその活動に参加してノウハウを蓄積している。
⚫️コロナの影響
新型コロナは社会に大きな影響を与えた。こそだてママnetでは、野外の体験活動はニーズもあって継続してきたが、保護者のコロナでの孤立防止が大きな課題となって、京都府の支援を受けておやこ広場を開催した。
コロナによって、こそだてママnetでは2つの大きな動きがあった。1つは木津川市内の子育て支援団体のネットワーク形成が進んだこと、もう1つがオルタナティブスクールの開設に向けた取組みが始まったことである。
⚫️子育て支援団体のネットワークの形成
コロナの影響で子育て団体が直接出会えるケースが減少したが、いろいろ意見交換したい、交流したい、運営ノウハウを教えてほしいなど、団体のニーズが可視化され、何とかしたいと思っていた。それを助けてくれたのが、オンライン会議のシステムである。今では、オンライン会議の仕組みが一般化したが、そのきっかけはコロナと言ってもよく、木津川市内の子育て団体の交流ができるようになった。
オンライン会議のよさは、場所と時間を飛び越えて人が集まりやすいことだ。特に子育て世代の保護者にとっては、新しい可能性を開いたと言える。
今でも子育て支援団体の交流は活発に行われていて、ネットワークが広がっている。
(子育てズーム会議)
⚫️オルタナティブスクール開設
コロナの影響で全国的にも不登校の児童生徒が増えており、木津川市でもフリースクールや子どもの居場所が必要となっている。これまで親子の森kichi利用者だった子どもが就学年齢に達し不登校になるなどの相談もあって、2022年度にオルタナティブスクールの準備会を立ち上げ、2023年度から森kichiスクールという名称で体験会を開催してきた。体験会は2024年度も実施してきて利用希望は多い。
2025年度からは、森kichiスクールとして週3回での運営をしている。
(森kichiようちえん・森kichiスクール チラシ)
(ほっとカフェ 不登校支援)
ただ、自然体験プログラムを入れていても、スクールを継続して運営していこうとすれば、その拠点が必要である。
こそだてママnetの事務局は、市役所隣の「木津川市情報発信基地キチキチ」の中にある。キチキチは、木津町商工会だった建物を市民有志が改修を行い自主運営されていて、常設のフリースクールとしていくだけの空きスペースがない。
現在は、キチキチ、社協をベースに鹿背山、山城町森林公園などのフィールドを活用して開設している。
(情報発信基地キチキチ)
今後ますますフリースクールや居場所のニーズは高まっていくだろう。全国的にもフリースクールが数多く運営されているが、その組織基盤が脆弱な団体が多いのが実情だ。フリースクール運営には拠点の確保が必要となるが、団体の努力だけではなかなか難しい。そのためには、行政等のバックアップ態勢がしっかりされるようにしていかないといけないだろう。こそだてママnetとしては、拠点確保に全力を入れて取り組んでいるので期待したい。
⚫️こそだてママnetのこれから
親子の自然体験活動がコロナの影響で制限を受けたことに加え、幼保無償化もじわじわ活動にダメージを与えていて、参加者が爆発的に増える状況が難しくなっている。そうした中で、新たなニーズが前述のオルタナティブスクールである。福井さんも体験スクールを通じて、その必要性を痛感している。ベースとなる活動量が減っているので、団体の基盤が揺らいでいる面がある。
この間、役員やスタッフの中にも諸事情で団体を離れる方がいた一方で、危機感の共有により、役員が新たな役割を担うようになった。
NPOのよさは、運営の軌道修正を柔軟に行えることであり、今後の活動に期待したい。
⚫️取材を終えて
久しぶりにお会いした福井さんは、いつもどおりにこやかに接してくれて、こちらも元気をいただいた。
こそだてママnetに対するさまざまな期待があり、それに応えていくことは難しい面もあるとも思う。木津川市とも自然共生サイトでは都市計画課、子ども・子育て会議ではこども未来課というように関係性ができているので、ぜひ、こうした行政とのつながりをうまく活かし、協働事業をできるようにしていってほしい。




