びわ湖流域赤シソ栽培ネットワーキング事業”Team Hira Perilla” /一般社団法人 比良里山クラブ
事業の概要
獣害問題を抱える山間農地で赤シソ栽培に取り組むグループをネットワーク化し、有休農地拡大に歯止めをかけ、里山環境保全の”滋賀モデル”を誕生させ、全国に広く波及させていきます。 当会の栽培スタッフが主体となり、4月と6月に同地にて講習会や説明会を開催します。収穫前時期には、各地区の巡回や現場での指導を行い手厚くサポートします。収穫期後も、種採り作業や来期に向けた農地の管理方法を指導し、期末には全体報告会を持ち、”Team Hira Perilla(チームヒラペリラ)”の成果を発表し、次期につなげます。
2015年7月15日、滋賀県大津市にある、一般社団法人 比良里山クラブのクラブハウスを訪問しました。すぐそばにある赤シソの畑で収穫作業が行われ、びわ湖流域赤シソ栽培ネットワーキング事業”Team Hira Perilla”のメンバーの研修も兼ねているということでした。
比良里山クラブの拠点は比良山系のふもとにあります。山と湖に囲まれた田園地帯は、のどかで静かです。
比良里山クラブのクラブハウスです。いろいろな道具類が保管されています。
クラブハウスのそばには、赤シソの畑が広がっていました。
畑の赤シソをよく見ると、葉の縁がフリルのように縮れています。これまで種を比良で更新し続けている赤シソで、ジュース専用にこだわって育てているとスタッフの方が説明してくださいました。
また、栽培は毎年滋賀県の「環境こだわり農産物」の基準をクリア。有機肥料と無農薬を原則とした栽培方法で、除草も農薬ではなくマルチング(シートなどで土を覆う方法)を使用しています。
メンバーがそろったところで、いよいよシソの収穫です。この機械はお茶の葉の刈り取り機なのですが、これが赤シソにも応用できて大助かりなのだとか。以前は手作業で摘み取っていたので大変だったそうです。
機械に大きな袋をセットし、3人一組で刈り取ります。カットされたシソの葉は、風で袋の中に送られる仕組みです。
畝の片側を刈り取ったら、もう片方を折り返し刈り取ってきます。
大きな袋がシソの葉で一杯になりました。
刈り取られたシソは、すぐに伸びるのでまた収穫できます。
次はシソの軸から葉だけを外す作業です。
シートの上にどっさりと積まれた赤シソ。ここは手作業で行うので畑のそばに作られた日陰で、メンバー総出で行います。
この作業を手早く行わないと、暑さで葉が乾燥してしまいます。
あたりにはシソのよい香りが漂っていて、癒やされます。気持ちがリラックスして、作業する手に勢いがつきます。
大津市北船路地区から来られた方は「今年、試験的に赤シソを栽培しているんですが、計画した時点では簡単に考えていたのに、やってみると結構難しいので研修に来て教えてもらっています」とおっしゃっていました。
いま、滋賀県の山里の共通の悩みは獣害です。山から出てきた鹿、猪、猿たちが農作物を荒らすのです。農地は高い金網フェンスや電気柵、トタン板、ネットなどで囲わなければ作物を収穫できないようです。
比良里山クラブの赤シソ畑もご覧のとおりのフェンスが張り巡らされています。ただ、赤シソは害獣もあまり好まないそうなので被害もほとんどないそうです。
獣害との戦いは今に始まったことではありません。比良山のふもとには獣の侵入を防ぐために石垣が築かれています。写真で、薪が積まれている石垣が獣害対策としての石垣「シシ垣(がき)」だと伺いました。何キロも延々と続いているそうです。
とても古い感じがしますね。江戸時代のものだそうです。私たちのご先祖様はどうやって石を運び、積み上げたのでしょうか。重機のない時代にこんな石垣を築くのは大事業。よほど悔しい思いをしたのでしょう。
比良里山クラブは2003年に設立され、大津市南比良にある雑木林「まほろばの里」を拠点として、里山の保全や子どもたちの自然体験・環境学習をテーマに活動してきました。その中で高齢化などが原因で里山に耕作放棄地が増え、獣害も拡大していくことを目の当たりにしました。
そこで里山の自然を守るためにも獣害に強い農作物である赤シソを栽培することを開始。そして2008年に「比良の元気なシソを作る会」が発足し、実際に安心安全なシソ栽培を行いました。ヒラペリラとは栽培している赤シソの名前で、ジュースの商品名にもなっています。ヒラペリラの収益金は、子どもたちの環境学習やシシ垣の修復など里山の保全事業に充てられています。
比良里山クラブでは、この獣害に負けない赤シソ栽培を県内各地区で展開してもらおうと、今回の事業「びわ湖流域赤シソ栽培ネットワーキング事業”Team Hira Perilla”」を企画しました。滋賀県内の各地で上質な赤シソが栽培できたら、赤シソジュース「ヒラペリラ」を安定供給できるようになり滋賀の名産品となります。赤シソが滋賀の名産品となれば山間部の農地の放棄に歯止めがかかります。そうなると獣たちが潜む耕作放棄地も減って獣害も減り、地元にも活気が生まれるというわけ。この好循環をもたらそうというのが、「びわ湖流域赤シソ栽培ネットワーキング事業”Team Hira Perilla”」なのです。
赤シソの畑は周囲のグリーンに対して鮮やかな赤紫色。赤シソが名産となれば、あちこちに紫の絨毯が敷きつめられたような独特の景観が生まれ、新たな観光スポットになる、というのもこの事業の未来予想図です。
確かに滋賀県の山里で、どこでもこのような赤シソが見られたら、かなり印象的な景色となりますね。想像するだけでワクワクしてきます。
この紙袋に赤シソの葉を詰めること3キロ。どんどん袋に葉だけを詰めていきます。私も少しお手伝いさせていただきました。
赤シソを詰めた袋はリヤカーで一時保管場所へ。
保管場所とは、山から流れている川の冷気を利用した天然のクーラーでした。お昼休みには本当の冷蔵庫に移動させて保管し、メーカーに搬入し、迅速にジュースに加工します。
作業が一段落ついたところで冷えたスイカの差し入れが。人間もクールダウンです。貴重な梅雨の晴れ間をフルに活用し、この日は午後からも収穫作業を行って27袋の収穫を目指すということでした。
比良里山クラブ代表の三浦さんは「せっかく作った農作物も、商品として売れなければどうにもなりません。うちのシソジュースはお客様から『香りが良い!きれい!おいしい!』と好評をいただいています。ネットワークで赤シソ栽培のノウハウを共有し、生産地を拡大していきたいと思っていましたが、今年実際にやってみると、課題もいくつか見えてきました。各地区で一斉に同じ作業が行われるわけで、指導に行く時間を作るのが難しいです。自分のところで精一杯ですから。来年は、早め早めで先回りして準備をしていこうと思っています」と早くも来年に向けての対応策を考えておられました。