野洲川北流跡自然の森創生プロジェクト /やす緑のひろば
事業の概要
野洲市を流れる野洲川は、国の河川改修で廃川となった旧北流跡があり、その後30年間ほぼ放置された状態でした。そのため自然林と竹藪が生い茂りゴミの不法投棄も多く人が近づきがたい状況となってしまいました。平成21年から3年間、竹の伐採が実施され、見えてきた自然林の調査が行われました。すると野鳥の営巣地、渡り鳥の休憩地となるなど、豊かな生態系の森であることがわかりました。 そこで、やす緑のひろばを中心として、野洲川北流跡自然林育成協働会議を立ち上げ、散策路の開拓や実生の育成など自然の森としての整備を行ってきました。 今回の事業でも、継続して自然の森の保全を行い、地元小学校の環境学習の場として活用します。滋賀県立大学の研究室やエコキャンパスプロジェクト、樹木医等と連携して活動します。
2016年5月26日、やす緑のひろばの定例活動にお邪魔しました。
活動場所は滋賀県野洲市の野洲川の元河川敷だった旧北流跡、面積は約4ヘクタールです。野洲川は平野を大きく蛇行して琵琶湖に注いでいたため、氾濫を繰り返していました。治水工事でまっすぐに流した結果、30年前に南北に旧河川敷ができ、南流跡は現在びわこ地球市民の森になっています。
一方北流跡は特に何も計画されないままだったため、侵入竹に覆われ人が入れない状態でゴミの不法投棄が行われるなど、一時は環境が悪化していたそうです。
2009年度から3年間をかけて滋賀県の事業で、一定のエリアの竹を伐採したところ、樹齢50年ほどのエノキ、ケヤキ、ムクノキ、コナラ、クヌギなどがある自然豊かな森であることがわかりました。
しかし、その後行政が手入れする予定はなく再び竹林に戻る可能性が大きいと、地元の有志で構成した、やす緑のひろばの皆さんが中心となって野洲川北流域跡自然林育成協働会議を立ち上げ、森の保全活動を続けているのです。
JR野洲駅から琵琶湖方面へ歩いて20分、大きな機械音が聞こえてきました。ここが、やす緑のひろばの皆さんの活動場所です。
大きな音は竹を粉砕するチッパーという機械の音でした。伐採した竹を叩き、縦に割ってからチッパーに入れると、細かい繊維状になって出てくるのです。
竹を砕いて積み重ねておくと堆肥となり、カブトムシが卵を産み付けるそうです。カブトムシの幼虫の良い寝床になるのです。
3、4年経つと幼虫の数が減ってくるので、また新しく竹を粉砕して積もらせていっているとのこと。
器用なメンバーが手作りした立て札。とても上手に仕上がっています。やす緑のひろば代表の熊本さんに、森の中を案内していただきました。
野洲川の中堤防だった名残がこの散策路です。1メートルくらい盛り上がっていて森の中を縦断しています。昔は子どもたちが小学校への通学路として使っていた時代もあるのだとか。もともと野洲川の河川敷は、地元の人に里山のように使われていたのですね。
竹林を切り拓いて最初に作ったのがこの散策路。今では緑豊かな散歩道になっていますが、最初は昼でも暗いジャングルだったそうです。
道路と散策路との間に広場を作り、竹で作ったトンネルが置いてあります。これは子どもたちの遊び道具。
道沿いの樹木に名札が付けられています。定期的に滋賀大学のエコキャンパスプロジェクトチームが森の自然や動物などの生態調査に入っているので、この森には野鳥が多く、渡りの中継地点としての役割を果たしていることがわかっています。私が歩いている間にも、ヒバリ、ウグイス、キジの鳴き声が聞こえてきました。
中には竹を伐採した跡地を広場にしてある部分もあります。明るくなると下草とともに植物の実生も増えてきたそうです。その苗をあちこちに植えてありました。
ここは住宅地の中の森なので、シカやイノシシの食害はないそうです。
森の端に来ると、やす緑のひろばの皆さんが草刈り機で除草作業しているところに出ました。なにしろ広いので、月3回、定期的に集まって除草作業や小道の保全などをされているのです。
熊本さんに「森を見渡せる場所があるから」と案内されたのは、森の外にある小高い丘でした。この丘は人工のものだそうで、もともと野洲川の氾濫など災害時に、土のうに詰めるための土を盛り上げているとのこと。
周囲にはオレンジ色の外来植物が咲き乱れています。
丘の上から見た森の端っこです。滋賀県南部のランドマーク、近江冨士(三上山)が見えます。
反対側の森の端っこです。住宅地がすぐそばまで迫っています。
今度は森と反対のほうをながめてみました。野洲川が琵琶湖へ流れ込む方向です。
野洲川がまっすぐの流れに変えられた場所が見えました。
丘を降りてから再び森の中の散策路を戻り、住宅地方向の端まで歩きました。途中にはメンバー手作りの丸木橋が渡されていて、元は川だったという窪地を越えて道路まですぐに出られるようになっています。
数年前に伐採した後、手入れしてないという竹林もありました。密集しているので中に入ると暗く、頭を竹にぶつけることもしばしば。
こちらの木は、年に何度か行うイベントの時、ロープでブランコを作るそうです。そう言われるてみると、確かにおあつらえ向きの枝振りです。子どもたちはきっと夢中になるでしょう。
市内の親子連れに呼び掛け、初夏には森の中で筍を探し、炭火で焼きタケノコを味わうイベント、秋には森を巡回し、竹細工作りや竹飯を楽しむ森の観察会を開催しているそうです。子どもたちは楽しみながら森の自然に親しみ、保護者には、この自然豊かな森を次世代に残すべく、保全活動への参加を呼び掛けます。メンバーは知人や別の活動の場で勧誘するなどして仲間を増やしていますが、リタイア世代が中心なので「隣接の住宅地に住む子どもたちのお父さんが手伝ってくれたら」という目論見もあるそうです。「それでも、そううまくは行きません。でも、子どもが巣立って、リタイアする頃には活動を引き継いでもらえたらいいなあ、という気持ちです」と熊本さん。
森の広場で休憩する皆さんです。手作りの梅ジュースや冷凍果実などがふるまわれ、和気あいあいと次のイベントの相談などが行われていました。今日は全員が胸に夏原グラントのバッヂを着けてくださっていました。うれしかったです。皆さん、どうぞ気をつけて作業なさってくださいね!
この森が安全で気持ちよい場所になったので、地元の保育園では、散歩コースに取り入れているところもあるとか。放置竹林だった時には誰も近寄れない場所だったのが、やす緑のひろばの皆さんを中心にして保全活動をされた結果、子どもたちが遊ぶ森がよみがえってきています。
この竹林サイドは日常通っていましたが、こんな活動がされてる場所とは露ほども知りませんでした。
今度、晴れた日に自転車で行ってみようと思いました。
大江様
コメントありがとうございます!
手入れされている場所は、気持ちよく歩けますよね。
定期的に整備活動を続けておられますので、もしもお出会いされた時にはお声掛けしてみてください。喜ばれるはずです。
守山の水保に在住していますが近くの河川敷は人工的で綺麗でありますが自然の良さが無いのが残念に思っていました。野洲川北流域を拝見して自分の理想の林と嬉しく感じて連絡致しました。
実は昨年岐阜で採取したカブト虫が孵化し始め近くの山に離してやりたいのですが地域外の昆虫を離すのは嫌がられるので躊躇しています!
勿論、純粋な日本のカブト虫ですので外来種ではありません!
大義名分了解頂けたら堂々と放虫出来るのですが如何でしょうか?
ダメな場合は岐阜まで車で走るつもりです。
しがNPOセンターの西川と申します。
夏原グラントを通してのお問い合わせありがとうございます。
そして先程は、電話で失礼しました。
電話が終わってから、所内で話し合ったところ、自然系博物館などに学芸員の方がいらっしゃり、その方が対応してくださるのではないかとのことになりました。
いくつか県内の博物館をあげてみました。
こちらに相談されるのも、ひとつの方法かと思います。
栗東自然観察の森
http://www.city.ritto.lg.jp/soshiki/kyoiku/kansatunomori/index.html
甲賀市みなくちこどもの森自然観
http://www.city.koka.lg.jp/kodomonomori/
守山市みさき自然公園
https://www.misaki-park.com/
ご参考までに。
今後ともどうぞよろしくお願いします。