「ヨシ群落・水郷・琵琶湖」の魅力を発信・案内するしくみづくり /ヨシネットワーク
事業の概要
滋賀県近江八幡市に広がる水郷地帯の、ヨシ群落をはじめとした豊かな自然を次世代へ継承するため、地域住民と大学生、環境団体が協力して次の事業を行います。 県外からの修学旅行生や海外からの留学生に、琵琶湖や水郷地帯の魅力を知ってもらうためのガイドマニュアルを作成し、それを用いたエクスカーションを実施します。 また、これらを実施し報告会を開催して、琵琶湖の自然の魅力を広く発信します。8月以降、地元団体や行政、ヨシネットワークも参加する「まるやまの自然と文化を守る会」が立ち上がりました。
2018年7月14日、ヨシネットワークのイベントが開催される会場の草の根ハウスまるやまへ向かいました。会場は滋賀県近江八幡市の円山地区にあります。バス停から歩いていくと最初に見えてきたのは、水郷めぐりの船着き場でした。
このあたり一帯は昔から産業としてヨシが栽培されているのです。農作業に行くにもどこに行くにも舟に乗っていたそうで、その風情は今に受け継がれ、2006年には重要文化的景観の全国第1号として国から選定されています。
草の根ハウスまでの道の脇にはヨシが繁り、水路に舟が係留されています。水郷の夏景色の美しさに見とれてしまいました。
道の途中に文化庁の看板が立てられていました。茅(かや)のことをヨシと呼んでいるのですね。
しばらく歩くと、目的地の草の根ハウスまるやまに到着しました。草の根ハウスとは、地域自治の拠点のことだそうです。以前、建設する時に県から補助金が使えたとか。
玄関脇には、テントが特設され、中でお魚博士が地元で獲ってきた魚が見られます。
琵琶湖博物館「うおの会」のお魚博士 中村聡一さんがコーナーにずっといて、立ち寄った人に魚クイズを出して魚への興味を誘っていました。
ペットボトルを利用すると、魚を近くで観察できます。子どもたちだけでなく、大きなお友達(お母さん、お父さん、おばあさん、おじいさん)も目を輝かせていました。
「これは何かな?」
ヒゲがチャームポイントの……ナマズでした。
これはオイカワ。今の時期に色はついていませんが、美しい婚姻色が印象的な魚なので男性の皆さんが「知ってる!」と口をそろえておられました。お孫さんのいる世代の方は、幼少期に魚を自分でつかまえて食べた経験があるからか、名前もすぐに出てきました。
草の根ハウスの中に入ってみると、ヨシ工作のコーナーがありヨシと段ボールで額つくりが行われていました。地元企業・日吉の社員と研修生が工作に取り組んでいるところでした。3人はインドから来られています。社員の方は日本語が上手なので研修生2人にずっと通訳をされていました。
この日は、イベントや体験ワークショップ情報満載の冊子「びわ活」ガイドブック(写真の右側)に掲載された、ヨシ工作の日だったのです。「ヨシの働きを学び、ヨシで遊ぼう!」というイベントです。
夏休み中の子どもたちがたくさんやってきて、ブーブー鳴るブーブー笛、パンパイプを派手に鳴らし、ヨシのおもちゃで楽しそう!
会場には、ヨシを利用した手作りバッグの展示も。これは大津市の工房IMURAオリジナルバッグで、「どうしてもヨシを使ったバッグを作りたい」と願って自然の染料で染めた手織りの生地にヨシを編んだものを取り付けたそうです。手織り作家の方は、「タペストリーとしてヨシを部屋の中に取り入れることで、自然に触れる安心感を演出したい」と今後の夢を語ってくれました。
11時からはよし笛サークルのミニコンサートです。クライマックスになると、よし笛サークルの方が舞台にあがって大合奏となりました。
哀愁を帯びた音色は、素朴で水郷の風景にとてもよく似合っています。
ランチタイムになると地元の食材や郷土料理を盛り込んだお弁当。事前に予約しておいたのです。丁字麩の辛子和えなど、お品書きには一品一品、工夫された料理の説明があるのでより美味しく感じました。
午後1時から3時までは、まるやまフォーラムです。
自然と文化を活かしたまちづくりを考えよう!という主旨で、ヨシネットワークのメンバーだけでなく、様々な立場からの参加者がそろいました。
地元自治会の前会長を初め地域の方々、地元ヨシ商、京都大学の森里海連環学教育ユニットの先生、立命館大学の学生、地元の企業・日吉社員と研修生、ヨシ織物作家、近江八幡市市役所職員、びわ活担当の滋賀県琵琶湖保全再生課の職員、守山市市役所の職員、きんき環境館の方など。
司会を務めるヨシネットワークのメンバー。もともとヨシネットワークは大津市や草津市、守山市の人がほとんどで、円山地区や周辺に住んでいる人はいません。しかしヨシつながりで地域に入り、環境省の地域活性化に向けた協働取組の加速化事業を2年間行ってきました。その間に築いたせっかくの人脈を「事業が終わったらおしまい」にしたくない、と新たに「まるやまの自然と文化を守る会」を立ち上げることにしたそうです。
その設立を記念したフォーラムが今回のまるやまフォーラムなのです。
立命館大学の学生の皆さんからあいさつがありました。大学の宮下先生の指導を受け、この円山地区で事前に撮影し編集した動画を初披露するのです。これは大学のプログラムの前期の課題で、若者の感性と「ヨソモノ」としての視点を活かした、地域のプロモーションビデオを作成せよ、というものでした。
動画には、水郷めぐりの舟に乗って、船頭さんとのやり取り、ヨシキリの鳴き声、飛び立つサギなどが映っていました。また、ちょうどその日行われたヨシの葉を使ったチマキ作りの様子や、ヨシを使った製品作りのお話、水郷のそばにある円山の頂上からの眺めなども。
学生自身による語りも入っていて、初めて訪れた水郷の自然と、地元に根付くヨシ文化のすばらしさに素直に驚いているのがとても伝わりました。
ヨシネットワーク事務局長の鳥飼さんが進行を担当して、参加者の皆さんに動画の感想を聞きました。
「こういうビデオは近江八幡市文化観光課で作らなければいけないのでは?」
「もうちょっと長く見たかった。撮影されたお寺の屋根はヨシ葺きなので、それもぜひ入れてほしい」
「BGMのよし笛の曲が内容や画像ととても合っていた」
「インドは人が多すぎて自然が守れない。日本はどこも川のよい景色がある」
「まちづくり協議会のホームページに載せたい」
「ヨシネットワークのホームページにもぜひ」
など、絶賛されました。
地元の方からは「普段見慣れていて気付かないが、改めてすごいところに住んでいると思わせてもらった」との感想も出されました。
びわ湖守山・新文化推進協議会の理事である宮川さんからは「自転車で立ち寄った時、なんて温かいおもてなしをしてくださるところだろうと思いました」という言葉が。このように、自然だけでなく迎えてくれる人の心に触れて円山のファンになった人もいます。
それから、参加者全員から意見を言う時間を持ちました。
ヨシ卸商の西川嘉武さんは「円山には他の地域にはもういなくなってしまったヨシ地主が10人くらいいて、昔は冬の農閑期の仕事として地域の方々が関わっていましたが、もう仕事として関わっている人はいません。さっきの動画で水郷めぐりをした学生の皆さんも、ヨシがあるから素敵な風景だと感じたはずです。水郷の景色は、ヨシ地主がヨシ田を手入れしてきたからこその景色です。ここは日本一美しいヨシだと思います。絶対になくしたくない」と訴えておられました。
奈良教育大学の中沢先生は「この水郷の景色はほったらかしではない自然です。昔からヨシが大切だから手入れしてできあがったものです。でも、百年後はわかりません。単に守るだけでなく雇用を作っていくのが大切です」と景色を守るためには経済的なことも重要である、とおっしゃっていました。
この山は草の根ハウスのそばにある円山です。この日、真夏の太陽の光の中で緑が輝いていました。
ヨシネットワークは20年間ボランティアベースでヨシを守る活動を続けてきたそうです。
事務局長の鳥飼さんは「ヨシ帯はほっておいたら変化していき、劣化しています。楽しくないと活動は続きません。もっとヨシの魅力を発信して、これからもたくさんの人にヨシのよさに触れてもらう機会を作っていきます」と締めくくりました。
みなさん立場は違いますが、水郷と円山の自然と文化を心から愛するという共通点があるのですね。
フォーラムが終了してからは、「まるやまの自然と文化を守る会」の設立総会が行われたそうです。
円山自治会主催の「秋祭り」でヨシ工作ブースの開設、近江八幡観光物産協会が竜王アウトレットで出展する時のヨシ展示やヨシ工作体験の協力などの依頼が来ているそうです。ますますヨシが美しい水郷地域になるよう、発足ほやほやの、まるやまの自然と文化を守る会の皆さん、息の長い活動を期待しています。
琵琶湖博物館うおの会の中村です。
丁寧に作ってあって、感心いたしております。
私は、琵琶湖博物館の職員ではないので、「うおの会」を入れてもらった方が誤解がないと思います。
中村様
お子さんたちが魚を身近に感じられるコーナー、楽しかったです。
レポート修正しておきますね!すみませんでした。
幡さん、
素敵な記事をありがとうございます。
折角、円山に来てくれたのに
不在で申し訳なかったです。
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しがNPOセンター事務局です。シェア、お願いします!!
とても素敵な地域ですね。個人的にこの後、水郷のさとの水郷めぐりの舟にも乗り、本当に満喫できました!ありがとうございました!