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家棟川の生態回廊の再生―ビワマスの遡上する川をつくる /特定非営利活動法人 家棟川流域観光船

事業の概要

秋期に琵琶湖から遡上するビワマスを家棟川のシンボルとして、ビワマスが遡上、産卵、繁殖できる環境を整えることなどを通じて、家棟川およびその支流河川(童子川、中の池川など)の自然環境を再生し、ひいては野洲市のまちづくりや活性化につなげていくことを目的としています。 多くの市民、行政、専門家、企業の協働のもと、家棟川流域の清掃活動、水・魚調査とビワマスの稚魚調査、ビワマスの産卵床の造成と魚道の設置に向けた検討、ビワマスの違法採捕の監視活動などを行います。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす

2016年10月10日祝日の朝、野洲市の家棟川流域観光船の皆さんの活動に伺いました。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
なかよし交流館の駐車場に集合しミーティング。今日のメンバーの紹介と、今日行う作業はビワマスの産卵床を作ることであること、その工程と注意点などを共有しました。

参加者の所属は、以前から生態調査を行ってきた地元の元自治会長や市民、TOTO滋賀工場、琵琶湖研究所、滋賀県の水産試験場、水産課、農政課、琵琶湖政策課、野洲市環境課など。行政の方が多いので驚きました。しかも、県と市が協力しています。TOTOは水に関する環境保全活動への助成を行っていて、家棟川流域観光船は昨年まで助成を受けていたそうです。現地で合流する人も入れて全部で18名、お子さん連れの方もいて、にぎやかに出発しました。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
家棟川に注ぐ童子川と、中ノ池川の合流地点付近に、産卵床を作ります。ビワマスが産卵したくなるのは、しっぽでパタパタすると掘れるような砂利の河床。ところが、今は川の底には泥がたまっています。そこで、人間の手で2~3メートル四方の河床を20~30センチ掘り、大粒の砂利を敷き、その上に小粒の砂利を敷いてやるのです。砂利が流れていかないよう、この砂利床の一番下流に土のうを沈めておきます。

ここで作業は2班に分かれ、川底を掘る班と砂利を運ぶ班がそれぞれ仕事を進めていきます。

堤防までトラックに積んできた砂利は、川の流れまで運ばなければなりません。堤防は傾斜がきつく、また川の流れまでは10メートルくらいあるので手で運ぶのは危険。そこで、ベルトコンベアならぬ手作りのトタン滑り台が登場しました。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
トラックの端からトタンを下まで掛けておき、砂利をスコップですくって流す、という仕組みです。この砂利降ろしのトタンを使う仕組みを考え作ったのは、ビワマスの生態調査を続けてきた山本さんです。

2007年に野洲市が環境基本計画を立てた時、川部会ができ山本さんも中心となって活動をしたそうです。その中で川の調査などを始め、その後もプロジェクトとして川を中心とした自然の保全活動を続けてきました。5年ほど前にビワマスのプロジェクトチームができ、たくさんの人が関わるようになったそうです。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
トラックの上では砂利の選別を行います。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
ガラガラ……。ものすごい音をたてて砂利が滑り落ちていきます。
あたりは一気に工事現場らしくなりました。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
トタンに流れてきた砂利はバケツに入れ、川までバケツリレーされます。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
川まで運び、産卵床になるよう敷き詰めます。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
掘った川底の穴に砂利をまいています。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
平行して2カ所で産卵床作りが行われました。

参加者の中の川の専門家の方のお話では「この川は花崗岩が多く、この規模の川で琵琶湖までこのサイズの砂利が続く川は見たことがありません。ビワマスが好きなのは川に入ると足が沈むような、ふわっとした川底です。昔の川は台風などがやってくると大水が出るので『耕されて』いました。今の川は『耕される』ことがなくなってカチンカチンに固まってしまうことが多いです。ビワマスはいい川を選んでいますね」とのことでした。

山本さんによると「ビワマスは風の強い日にのぼって来ます。浅いところへと行きます」とのこと。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
ご近所にお住まいの河村さんもビワマスのことをお話くださいました。
「この川の生態調査をしてみると、在来種がびっくりするくらいいることがわかりました。中にはビワマスも上がってきてくれています。
産卵の時には、メスが川床をしっぽで穴を掘って石の藻を取ってきれいにします。その間、オスは待っていて、メスが産卵したらオスが精子をかけて、受精した卵に石をかけます。稚魚は石の間に隠れて生きています。今年3月にその稚魚が見つかりました。ビワマスが確かにここで産卵しているという証拠です。
産卵の動画も撮れました。ビワマスは色もきれいで感激しました。色のついたのがメスです。感動もんです」

その動画は、NPO法人家棟川流域観光船が、夏原グラントの二次審査である公開プレゼンテーションをする時、背景のスクリーンに映されていたので、私も見ました。本当にカメラの真ん前で産卵しているのです。感激しました。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
産卵時期はビワマスの漁は禁止されていることを示すのぼりが、あちこちに立てられています。昔は「秋じまい(稲刈りなどの農作業が終わるお祝い)」のご馳走として川からビワマスを捕って食べていたのだとか。だから食べるもので、保護するものじゃない、という高齢者もいるそうです。当たり前にいる魚だったんですね。今では、貴重な魚になってしまいました。

お昼になりました。なかよし館で昼食です。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
なんと、ビワマスを炊き込んだ「アメノイオご飯」が!守ろうとしている魚を食べてもいいのか?と思ってしまいました。でも、こうして美味しく食べるのもビワマス文化です。
滋賀県でもビワマスを「琵琶湖の宝石」と呼び他の淡水魚とともに「琵琶湖八珍」として売りだそうとしています。ビワマスは滋賀県の水生生物のシンボルとしても、年々存在感を増しているようです。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
山本さんがごあいさつ。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
しじみ汁と一緒に、いただきます!
これぞ琵琶湖の幸ランチ。本当に美味しくて、お代わりしました。

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なかよし館では歓迎の看板を立ててもらっていました。作業に参加した皆さんもそれを見て喜んでおられました。そこで特定非営利活動法人 家棟川流域観光船の代表の松沢さんと、今回お世話になった顧問の北出さんに記念写真をお願いしました。

午後からも作業がありましたが、ここで私は帰るため北出さんの車で駅まで送っていただきました。

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駅まで行く途中、魚道を設置する予定の堰に連れて行っていただきました。ゆるやかな川が急に狭くなり高さが変わります。かなりの傾斜で水深も浅く、とても遡上できそうにありません。しかしここに手作りの魚道を設置することで、これから上流にもビワマスが遡上できるようになります。

野洲駅のすぐ近くまで流れている支流もあり、住宅のすぐそばまでビワマスがのぼってくるようになったら、と思うと想像するだけでワクワクしてきます。

後日、北出さんからできあがった魚道の写真が送られて来ました。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
コンクリートなどで作る魚道と違って、費用も安くて取り外し可能だそうです。
もちろん、河川管理の部署にも許可はもらっています。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
魚道をのぼる魚影も撮影されています。勇壮ですね。

NPO法人家棟川流域観光船の活動のようす
また、今年遡上中のビワマスを手づかみしている写真も!堰からさかのぼれない川も多いそうです。
たくさんのビワマスが無事産卵できるといいですね。

これからも家棟川など川の環境を守り、ビワマスが遡上する川としての復活を果たすための活動を続けていただくよう期待しています。

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