竹の魅力発信基地の創設 /特定非営利活動法人 加茂女
事業の概要
京都府木津川市の竹林は「山城たけのこ」の産地でしたが、衰退し放置竹林が増えてしまいました。そこで様々な層の多くの市民に関心を持ってもらえるよう、竹林内でイベントを実施し、竹と筍の魅力発信の基地を作ります。間伐した竹を使った竹炭、穂先のチップ化など新たな事業展開を考えています。

2017年7月8日、京都府木津川市の竹林にある、特定非営利活動法人 加茂女(以下、加茂女)の皆さんの竹林整備活動を訪問しました。
木津川沿いの道路から入ったところに駐車場があり、そこからすぐ竹林です。
見事な孟宗竹の林をきれいに切り拓いた広場になっています。
次々と加茂女のメンバーが軽トラックで集まり、整備活動を開始しました。
この竹林は、持ち主と契約して手入れを行っているそうです。
以前、竹林の間伐をした際に切った竹はそのまま山の斜面に積んである状態です。それを適当な長さに切り斜面から投げ落とし、その竹を集めて燃やしていきます。
丈夫な橋。これも加茂女のメンバーが木を切ってきて、竹を上にくくりつけた手作りだそうです。この橋を渡り竹を拾って広場に運んで来ます。
ひたすら竹を運びます。
どんどん竹が集められ、鉄板でできた竹炭窯にくべられていきます。竹炭窯は分割できるのでトラックで持ち運びができ、数時間で100キログラムの竹が燃やせるそうです。
竹が燃える時は派手な音を出して爆発します。燃やす竹は、人がいなければ乱暴に放り投げても問題ないので、いいストレス解消になりそうです。
こちらはチェーンソーで大きな竹を切り倒すところです。
あっという間に竹が切られて長さをそろえられていきました。
この竹は橋の材料だったのです。もう一本橋があると大回りしないで済む、と見る見るうちに竹の橋ができあがっていきました。
橋脚まで竹でできています。
その作業をする西辻さんの足下で、何か音がするな、と思ってよく見てみると、鹿威し(ししおどし)でした。これも手作りだそうです。
手作りというと、この小屋も竹製で西辻さんが建てたもの。
屋根の上には小さな太陽光発電パネルが設置されていて、日が当たると小屋の中のライトが光るようになっています。
竹製の小屋には、夏原グラントや他の助成金の表示がされていました。
トイレも竹製の手作り。よく見ると四方の柱は生きている竹を利用しています。
トイレのドアノブとカギも、竹利用。凝っていますね。
広々としたトイレ内部。
竹は建築材としても使えるのですね。
そろそろお昼ご飯の準備を、と加茂女の代表理事 久保田さんと理事の曽我さんが竹を燃やしておにぎりを焼き始めました。小さく割って乾燥させた竹は燃料としても優秀ですね。
「菜箸を忘れたから、長い箸を作ってもらおう!」
頼まれた西辻さんが、竹を輪切りにして、ナタで割り角を削ると菜箸のできあがり。
「テフロンのフライパンだから、金属じゃなくて竹がいいでしょ」と、久保田さん。できたての竹の菜箸で豚肉を炒め、焼きそばを作って、お昼ご飯の時間となりました。竹は料理用の道具にも使えますね。数時間のうちに、竹の素材としての実力と、それを使いこなす人の技を再発見することができました。
作業をしていた皆さんが集まり、いっしょに焼きそばと焼きおにぎりを食べました。お昼代として参加者から300円を集めて作ったものです。
メンバーのお一人が茶畑農家なので、インターンとして海外からの学生を受け入れているとのこと。今日はそのお一人、カナダ出身でフランスの大学で学んでいるレアさんがお手伝いに来て働いていました。皆さん、英語まじりの日本語で、片言の日本語と英語で話すレアさんと会話をしていました。
そんな小さな国際交流を行いつつ、昼食後もみんなで竹を切り、投げ落とし、拾って運び、燃やし続けました。
午後2時過ぎ。そろそろ終了の準備開始です。
小川をせき止め溜めてある水を、ポンプで汲み上げて炊き火を消します。
ポンプを動かすのは発電機です。
念入りに竹炭窯の炭に水をかけ、熱をさましました。
解散前に記念写真です。皆さん、お疲れさまでした!
曽田さんが「かき氷を食べて行って!」と声を掛けたので、何人かは加茂女の活動拠点に移動しました。ここは事務所兼、カフェ「かもめの台所」兼、筍の加工場でもあります。
カフェでは食器をすべて竹で統一。平日は喫茶のみで、木曜日は手作りのランチも出すそうです。
カフェの店内。加茂女の活動アピールも。
店内のコーナーをよく見ると「筍するめ」「筍グラッセ」、筍とリンゴで作った「竹林ジャム」筍瓶詰め「かぐや姫の恵み」など、オリジナルの加工食品が並んでいるではありませんか。
このコーナーには出ていませんが、生地に竹の微粉末を混ぜた筍のおやき「かぐや姫のおやつ」は山城食品加工コンクールで最優秀賞に輝いたそうです。これらはホームページから通信販売も行っています。
かき氷をご馳走になった後、筍するめを試食させてもらいました。
「するめの味になってるでしょ? 筍するめの味付けは、鰹節や椎茸、昆布などの出汁と調味料だけ。旨味調味料は使ってないんですよ」
まるでイカを使ったおつまみの「するめ」のような味と歯ごたえでした。1袋がほぼ筍1本分に相当するとか。カロリーが少なく食物繊維がたっぷりですから、美容と健康によさそうです。発想がおもしろいうえにおいしかったので、いくつか買ってお土産にしました。
「もともとは筍が名産だった木津川市でしたが、今では持ち主が手入れをしないので放置竹林がゴミの不法投棄先となるなど大きな問題になっています。
私たちは、竹林がお金になるんだ、ということをみんなに知ってもらいたいと思い、筍の商品を開発してきました。竹を食べて減らすという方法なのです。竹がお金になれば、持ち主も竹林の手入れをするようになるからと、がんばっていろんな商品を開発しまた。たくさん表彰もしていただきました」と曽我さん。
見回すと確かに表彰状がたくさん飾ってありました。活動が認められている証拠ですね。
地元に向けて、活動情報をミニコミ紙「加茂女つうしん」にして配布しているそうです。地域からの信頼を得るためには、このように継続して出すことが大切ですよね。
1989年に子育て中のお母さんサークルとして始まった加茂女は、京都府の地域力再生交付金事業として竹林の清掃や間伐などの保全活動を開始、定年退職をした男性の居場所として竹工房を設立、2010年にNPO法人化しました。竹の食品加工やカフェの運営のほかにアルミ缶の回収、竹林でのピザ焼きイベント、京都府内のイベントへの出店なども行っているそうです。
活動は多岐に渡りますが、すべては放置竹林問題の対策という点で一貫しています。加茂女の皆さんには、いつか放置竹林がなくなる日まで元気に活動を続けていただきたいと思いました。