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野の花観音径の自然を知り、郷土の風景を子供たちに伝えるプロジェクト /特定非営利活動法人 ひとともりデザイン研究所

事業の概要

滋賀県大津市にある寿長生の郷(すないのさと)の一部、野の花観音径(かんのんみち)は、和菓子メーカーの広大な敷地の庭園の一部ですが、多種多様な動植物の宝庫でもあります。園芸種や他所から植えられた野草なども入り交じっているので、専門家による調査を行い、その結果を地元の人や子どもたち・来場者に普及啓発するための資料として作成し、地元の大石小学校と連携してイベントを開催します。

ひとともりデザイン研究所活動のようす画像

2018年10月4日、滋賀県大津市大石にある寿長生の郷(すないのさと)の敷地内をフィールドの1つとしている、特定非営利活動法人 ひとともりデザイン研究所(以下、ひとともりデザイン研究所)の活動を訪問しました。

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JR石山駅前から出ているシャトルバスに乗り、約30分で寿長生の郷の入り口に到着しました。今回は、ひとともりデザイン研究所の理事長、増永さんと監事の原槇さんが植物の調査を行うそうで出迎えてくださいました。

増永さんと原槇さんは、お仕事の関係で植物に詳しく専門技術もお持ちだとか。今日は二手に分かれて調査をするとのことで、増永さんと私は、原槇さんとここでいったんお別れしました。

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その背中に「調査中」の印が。夏原グラントのロゴマークも大きく表示していただいています。ありがとうございます。

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実際に和菓子に使われる梅の畑。花が咲く頃には観光客でにぎわうそうです。

寿長生の郷は広大な敷地内に和菓子屋さんの本社やレストラン、和菓子の材料となる梅林など、さまざまな施設や畑などがあります。観光バスで団体客が訪れ、散歩しながら和菓子や食事を楽しむところです。

その敷地の中には里山の自然を残した丘陵も含まれ「野の花観音径(ののはなかんのんみち)」と名付けられた遊歩道が作られています。今回の事業は、この遊歩道沿いの自然をきちんと調査しその結果を冊子にまとめて周辺の小学校に配布し、小学生に現地を訪れてもらう観察会を実施するというものです。

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畑から山のほうへ向かうと、すぐに地面を掘り返されたあとがありました。イノシシのようです。やはりここも獣害が多いので、寿長生の郷の敷地はぐるりと金網で囲われて野性動物が入ってこられないように対策をしています。

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途中には登り窯が。ここの施設で使う器などを焼いているそうです。

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今日は道の側に生えている植物を調べていく日です。増永さんは、どこに何が生えているかを私に説明しつつ、せっせと記録していました。

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山道を歩いていくと、ヌルデが見つかりました。茎の横にヒダのようなものがついているのが特徴で、さわると肌がかぶれる人もいるそうです。

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赤い実はコバノガマズミ。食べられるそうです。

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黒い実はナツハゼ。これも食べられて甘いそうです。

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ハイゴケや、ホソバオキナゴケなどの苔は、粘土質系の土が好きなようです。生えている植物で土壌の様子もわかるんですね。

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登っていくと、見晴らしのよい場所に出ました。

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そこで見つけたピンク色のかわいい花。

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さっそく増永さんは図鑑を取り出し確認しました。「これはママコナという植物で、他の植物の根に半寄生するんですよ」。半寄生している植物なんて初めて見ました。

この丘陵はもともと赤松の林に覆われていたのですが、松枯れでほとんどなくなってしまい、その後に生えてきたのがコナラでした。しかし、ナラ枯れのせいでコナラも減少し、現在は植生が変わりつつあるということです。

増永さんは「ソヨゴ、リョウブ、カラスノサンショウなどは成長が早くて、そこに生えていた大木が枯れたりするといち早く荒れ地に生えるパイオニア的存在です」と教えてくれました。

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山を下ってきたところで原槇さんと落ち合いました。天候が雨交じりだったため、今日の調査はここで終了、解散しました。

ひとともりデザイン研究所活動のようす画像 ひとともりデザイン研究所活動のようす画像  
遊歩道の脇には秋らしい花、ハギとオミナエシも咲いていました。
これらは、植えられた園芸種かもしれないそうです。ただ、オミナエシは自生しているものは、京都府ではレッドデータに加えられる希少種だとか。

寿長生の郷ができて約50年が経過したので、今後在来種と園芸種が混交するこの自然をどう活かしていくのがよいのか、検討するためにも現在の植物や動物などの調査を行うことが大切だということです。確かに少し歩くだけで豊富な種類の植物に出会うことができました。増永さんに解説してもらったので、一見不変であるように思える山の植物たちが、20年、30年と経過するうちにかなり変化していくのもよくわかりました。ほかに敷地内のため池周辺にはホタルが自生していることも確認されているそうです。

今年計画していた小学生を招いての自然観察会は、台風の影響で来年度に延期となりました。将来的に調査の結果は報告冊子にまとめ、小学校に配布する予定とのこと。

子どもたちが地元の自然に親しむ場となる可能性を秘めている、野の花観音径。詳しい調査の結果と、実際に山道を歩く子どもたちの反応が楽しみです。

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