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京都市・深泥池における池畔林伐採実験のモニタリング /深泥池池畔林研究会

事業の概要

京都市にある深泥池(みぞろいけ)は、生物群集が国の天然記念物に指定されています。現在、その周囲の林の木の枝が水面にまで張りだし、明るい水辺を好む動植物に影響が出てきています。昨年、京都市が林を試験的に伐採したので、そのモニタリング調査を実施します。

深泥池池畔林研究会 活動写真

訪問 深泥池池畔林研究会

10月20日、深泥池池畔林研究会の皆さんの調査の現場に伺いました。

あいにくの雨の中、皆さんはカッパ姿で植生調査に取り組んでおられました。

深泥池池畔林研究会 活動写真

こちらの活動現場は、京都盆地の北に位置する深泥池(みぞろがいけ)です。この池は,周囲1.5キロメートル,面積9ヘクタールの小さな池で、一見、どこにでもある普通のため池か何かのように思えました。

深泥池池畔林研究会 活動写真

ところが、この池の中央には「浮島」と呼ばれるミズゴケ湿原があり、氷河期から生き残ってきた動植物、そして豊富な種類の水生植物や動物、植物が生息しているそうです。昭和2年には水生植物群落の保護のために国の天然記念物に指定され、昭和63年には深泥池生物群集として全体が天然記念物対象になっています。

深泥池池畔林研究会 活動写真

池の真ん中から左側に見えるのが浮島。もう紅葉が始まっていてきれいでした。

深泥池池畔林研究会 活動写真

深泥が池のほとりにはぐるりと遊歩道があります。しかし、遠くから道は見えません。木々が生い茂って湖面にまで張り出しているからです。

深泥池池畔林研究会 活動写真

もともと、この池の周辺の林は炭燃料として定期的に伐採されていたのですが、高度成長期以降、主エネルギー源が炭から石油に移ってしまい、長期間全く伐採されることなく密生してしまいました。現在の所有者である京都市に里山部分に手入れをするための予算もほとんどなく、ほぼ放置された状態です。貴重な湿地帯の豊かな生態系が今後も長く維持されるためには、この池周辺の林の変化がどんな影響を及ぼしているのかをきちんと調査し、どのような手入れをすべきかを明らかにしなければなりません。上の写真は池の周辺の林の現在のようすです。人の手が入っていた頃、アカマツや低木が中心だったのに、現在では地面まで光が当たらないため低木が生えていないのがわかります。台風の爪跡なのか、枯れた木が倒れたままなのも何本か見られました。

深泥池池畔林研究会 活動写真

そこで、深泥池池畔林研究会は、深泥池を美しくする会や深泥池水生生物研究会などの市民活動団体、また京都市の文化財保護課、文化庁などの行政と連携しながら、池岸の木々の伐採(池畔林伐採)実験を実施しています。

2012年に京都市が行った伐採は、写真のように池岸から2~10メートル程度、長さ20メートルに渡っていて、それが2カ所あります。伐採直前、伐採直後にそれぞれ調査を行っていて、今回はその2年後の調査です。

深泥池池畔林研究会 活動写真

今回は伐採された部分の植物を同定(生物の分類上の所属や種名を決定すること)、記録しています。やり方は、岸辺の道を1メートル幅にテープで区切った上で、道から岸までの区間を調査区画とし、その中の植物を読み上げる人と記録人に分かれて、順番に移動していくというもの。作業を見ながら副代表の加藤さんに説明していただきました。

「5メートルおきに調査区画を設定し、その中に生えている植物全てを同定して個体数や高さ、生えている位置などを記録しています。たくさんの鹿が山から入り込んでいるので、実生やササの葉などは食べられて、7月の予備調査では生えていたのに、今回は消えてしまったり、背丈の低くなってしまった植物もありました。本当は池を全て防獣ネットで囲まなければいけないかもしれません。でも、とてもそんな予算はないので、今のところはできないですね。

夏の間には池の岸際でも水生動物の調査をしました。池畔林を伐採した場所では、明るい環境を好む水生動物が増えてきているようです。この調査の結果を深泥池の健全な生態系の維持のために役立てたいです」

下の写真で、遠くに見える水色のカッパの人が加藤さんです。

深泥池池畔林研究会 活動写真

比較のために、伐採されていない岸辺についても日を改めて同じ植生調査を行う予定だそうです。この写真は、次回の調査のために地面に印を付けているところです。

深泥池池畔林研究会 活動写真

印のため黄色いテグスを結びつけたペグ(金属製の小さな杭)を、メジャーで等間隔に打ち込んで行きます。

深泥池池畔林研究会 活動写真

池の向こう岸からも、遊歩道で作業している皆さんの姿が見えました。(写真では見えにくくてすみません)

深泥池池畔林研究会 活動写真

深泥池では、この日、鴨がのんびり泳ぐ姿が見られました。周囲は山に囲まれた閑静な住宅街です。緑あふれる環境のよい池のように思えました。ところが、会の調査に参加されていた深泥池水生生物研究会の方は「池にはもともと15種類の魚がいたのですが、ブルーギル、ブラックバスが入り込んでしまい、今では5種類しかいません。水面に浮かぶタヌキモも、在来種のすき間に外来種のタヌキモが入り込んでいるので、船を出して除去作業をしています」とおっしゃいました。ここでも外来種が日本の生態系を大きく狂わせているのですね。

 

深泥池池畔林研究会は、京都大学の学生を中心とした学生団体です。訪問当日は他大学から浮島の調査に来られていた先生と学生の皆さんも調査に協力されていました。市民の方もおられましたし、幅広い連携をされているようです。現場に伺ってみて、深泥池本来の豊かな生態系がこれからも維持されていくため、活動に直結する大切な調査だと感じました。

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