野生動植物の保護・保全や生物多様性維持の活動 /室橋コウノトリを育む会
事業の概要
2019年にコウノトリが飛来して以降、人工巣塔を設置し、ビオトープづくりに取り組むなどしてコウノトリを育む多様な生態環境づくりに取り組んでいます。引き続き、ビオトープのよい状態の管理とともに、学習会、小学生との環境学習機会などを設けていきます。
2025年7月27日、「室橋コウノトリを育む会(以降、育む会と記載)」のビオトープ周辺の維持管理作業を見学に、京都府南丹市八木町室橋地区を訪問しました。活動現場である「文覚池(もんがくいけ)」周辺は、京都縦貫自動車のインターチェンジにほど近い、水田に囲まれたエリアでした。
室橋 地域の周辺の様子
8時過ぎに現地に到着したところ、育む会の皆さんはすでに作業終盤。夏場の草刈り作業ということで、早朝から草刈りを始められ、8時15分ごろにはほとんど終えられていました。
作業後、事務局の若井睦巳さん(集合写真、前列の右端)に活動について伺いました。
ビオトープに使っている水田周辺の草刈り
8:00でも暑い 木陰で休憩
育む会の活動は、2019年の秋、初めてコウノトリのペアがやってきたことがきかっけで始まりました。多いときは6~7羽が文覚池や周辺の田んぼに飛来し、エサを取っていたそうです。コウノトリは翼を広げると2mを超えるほどになる鳥で、とにかく「でかい!」という驚きが当初の反応だったと言います。地域の方たちも珍しく、たびたび文覚池や田んぼで過ごす様子を見に行っては見守るようになったとのことでした。
2020年撮影 エサを探すようす(育む会facebookページより)
今、文覚池のすぐそばには高い塔の上にアンテナが付いたようなものが建てられています。コウノトリ営巣用の人工巣塔です。兵庫県豊岡市を拠点に活動する「日本コウノトリの会」の協力により2020年に建てられました。2021年4月には「室橋コウノトリを育む会」を設立し、勉強会や飛来したコウノトリの観察などに取り組んでこられました。過去には地道な観察活動の結果、栄養失調で動けなくなっていたコウノトリを見つけ、保護された経験もあるとのこと(弱ったコウノトリは、市教育委員会との連携の末、福知山市動物園にあずけられたそうです)。
夏原グラントには2023年にファーストステップ助成へ採択され、助成金を活用しながら生息地の維持管理活動などを続けておられます。
巣塔 土手の向こうが文覚池
文覚池 写真奥の岸辺に巣塔とビオトープがある
文覚池のようす
文覚池のようす 葦原になっているエリアもある
育む会は、巣塔を設置した時の自治会役員が中核メンバーとなり、現在の自治会役員が加わる形で活動をされています。当初から、生物の先生だった育む会会長の三觜昭さんを中心に、亀岡市で活動されている日本コウノトリの会理事の八木昭さんとも情報交換し、同会会長 佐竹節夫さんの講演会を開催したり、勉強を重ねて歩を進めてこられました。
この日は盛夏の活動となりましたが、コウノトリの餌場である文覚池と、周辺の水田を転用して整備したビオトープの維持のためには重要な作業でした。
コウノトリは肉食の鳥で、水辺に棲む生き物を1日に500gほども捕食するそうです。文覚池は農業用水のための池でもあり、冬場は大幅に水量を減らします。10月ごろから水を抜き、11月にはヨシ刈りを行うという、年間のサイクルで、安定した生き物の棲息場所を確保することは、育む会にとっての課題でした。
そこで、文覚池の水位が減らされると池の中の魚を集め、川に避難させて、春先にまた池に戻したり、隣接する田の持ち主の協力を得て、ビオトープとして活用、生き物の棲息場所となるように整備されました。
ビオトープ 水が溜まり、水草が見える
周囲に刈った草をかぶせて湿地を保護
だた、水田ビオトープは安定して水が溜まらず、文覚池からポンプで水を揚げるなど、維持のための試行錯誤が続いています。法面の草刈りは年間3~4回実施されますが、この夏は乾燥防止もかねて、刈り草を草マルチとして田に入れるなど、少しでも生き物が過ごしやすいように工夫をされているとのことです。
眼前2枚の田をビオトープにしている 上部は水が溜まるが、池の傍は抜け気味
育む会の皆さんは、巣塔建設後、その場で営巣してくれることを目指し活動されています。
毎年、夏ごろから秋までコウノトリのペアが飛来し、日々の観察の中で巣塔での交尾を確認するなど、営巣への期待が高まりましたが、いまだ実現していません。「綾部市には5か所も営巣している。室橋は毎年来るけど“よりみち滞在”みたい」と若井さん。
2022年撮影 ペアと巣塔(育む会facebookページより)
「コウノトリも当初は複数飛来したが、毎年来るのはペアになった。そうなるとこちらも慣れてきて、地元の関心も薄れる。なんとか盛り上げたい」と話し、コウノトリ保全の先進地、豊岡市への研修に会メンバーだけでなく地域の方も伴って訪問されたり、広報誌の自治会配布を通して会の活動を発信するなど、地域の機運醸成・モチベーションの維持にも気を配った活動をされています。
「コウノトリは人の顔を覚えています。私や三觜さんも覚えていて逃げない。知らない人が来ると逃げます」と、若井さんのお話には日常的な観察活動のようすが垣間見えます。「営巣まではすぐではないらしい、10年はかかるかな」とのこと。コウノトリ営巣の夢に向けて、地域一丸となった活動に向け息長い実践が続きます。





