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棚田保全ボランティア活動 /熊野・棚田を育てる会

事業の概要

滋賀県蒲生郡日野町熊野地域の棚田は、経済環境の変化、過疎化や獣害などにより耕作を放棄された田んぼが荒廃地となり、自然環境も悪化しています。そこで棚田保全をボランティアで行い、地元の地区行事へ参加し、放棄された田んぼを復活させます。

熊野・棚田を育てる会の活動写真

2014年10月4日、滋賀県蒲生郡日野町の熊野地区の棚田で行われた、熊野・棚田を育てる会の稲刈りに伺いました。今年は予定よりも稲の生育が遅れ、稲刈りも遅くなってしまったそうです。伺ったのは餅米の刈り取りの日でした。

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熊野地区の入り口には、グリム冒険の森があります。オートキャンプ場や宿泊用コテージがあり、豊かな自然を楽しむための施設となっています。

この施設を通り過ぎ、日野町の山として親しまれている綿向山に向けて自動車で登っていくと、数分後に中腹に熊野の集落に到着しました。集落の真ん中に鎮座するのが、熊野神社。今日の稲刈りはこの神社のしめ縄用の餅米の稲なのです。

熊野・棚田を育てる会の活動写真
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この神社から少し下ったところに、棚田が広がっていました。
先週、稲刈りが済んだという田んぼです。正方形ではない、地形に沿った形の棚田が段々に重なっています。

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うるち米の田んぼは一週間前におおぜいのボランティアの力もあり終了していました。
見事な棚田の曲線美ですね!

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棚田の周囲には、獣害を防止するための柵が張り巡らされています。

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餅米の田んぼが2枚。稲がまだ青いのは、しめ縄用のためわざと青いまま刈っています。この2枚の田んぼでおよそ3畝(せ)、3分の1反(たん)ほどとのことです。

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倒れかけた稲を手で刈っているところです。今日は棚田ボランティアとして男子大学生が2人参加されています。

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刈った稲は2~3株を一まとめにして藁でくくります。学生のお2人も教えてもらいながら黙々と稲を刈って、くくっていました。

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刃がギザギザしている稲刈り用の鎌。

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シンプルな稲刈り機も大活躍です。コンバインでは脱穀しながら稲を切り刻んでしまうので、この機械は稲刈りだけを行っています。

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こちらは脱穀機。稲から籾を取り除き、袋に集めていきます。

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一方、籾を除いた稲藁はトラックに乗せて乾燥させる小屋へ運びます。

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稲刈りボランティアに参加していた小さな男の子もがんばって藁を運んでいました。

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2枚の田んぼがきれいに刈り取られたら、次の田んぼに移動します。急斜面を登っていく脱穀機、ちょっとハラハラしましたが、無事に舗装路に上がりました。

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逆方向から見た田んぼです。やはり獣害よけの柵がぐるりと張り巡らされていますね。

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これはビニールハウスではなく、獣害よけのネットで覆われた畑です。ここまでしなければ農作物が守れない状況だということがわかります。
熊野・棚田を育てる会の福井さんによると、棚田は維持するのが大変なので、どうしても耕作放棄されやすく、そうなると草が生い茂って獣たちの潜む絶好の場所となる。だから、会では一度放棄されて荒れた田んぼを復活させたとのことでした。

熊野地区の人だけでは難しいので、棚田ボランティアを呼び掛け、他の地域の人に農作業の手伝いをしてもらっているそうです。

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今度はもう一つの田んぼに移動して稲刈りです。
さっきの田んぼよりも川のそばに降りてきたところにあります。柵の向こう側の休耕田はコスモス畑にされています。ほかにも休耕田を田んぼではなく植林してドングリの木を育て、シイタケのホダ木にする方法もとられています。どの田も川よりも高いところにあるので農業用水の確保が大変なのだそうです。やはり棚田は耕作を続けるのが難しいのですね。

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遠くに稲刈りしている田んぼが見えています。
コンバインや稲刈り機が止まるとあたりは静まります。山を渡る風の葉ずれの音、小鳥のさえずり、虫の音、谷川のせせらぎだけが聞こえ、自然の中での生活はこんなにも季節の表情豊かなものなのだと改めて感じることができました。

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稲刈りの済んだ田んぼから、歩いて熊野神社を目指していると炭焼き窯がありました。炭焼きも行っていた地域なのです。
途中の山道では、椎の実が一面に落ちている光景に出会い、思わずいくつも拾ってポケットに。まるで子ども時代に返ったような時間でした。

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刈り取った稲藁は、こうして乾燥させています。

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地域のシンボルツリーとなっている、通称「タコ杉」。たくさん枝分かれしているのが特徴です。

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稲藁は、来年この注連縄になる予定です。

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向かい側には的を置く場所があります。成人の日、熊野ともうひとつの地区の16名の長男が烏帽子儀(元服式)を終えてから「弓取の神事」を行うそうです。
昔、この塚には修験者が退治した大蛇が埋められているという伝説の「おろち塚」に向けて矢を放つのです。
稲刈りが午前中に終わり、参加者は公民館に集合しました。

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公民館では地元の女性メンバーが昼食の準備をされていました。

手作りのカレーや漬け物をいただき、棚田ボランティアと地元の会員が交流する大切なひとときです。稲刈りは午後からも続きました。

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熊野集落の現在の戸数は18戸。高齢化が進み「限界集落」と言われる状態です。しかも、そのうち農業を営んでいるのはわずか2戸。耕作されなくなった田んぼや畑が増え続けていたそうです。3年前、棚田ボランティア募集を開始するまでは何をするにも人手が足りない状態でした。
いまではリピーターとなる企業や大学がいくつもあり、子育てファミリーや大学生など老若男女が自然の中での農作業や集落の人とふれあう機会を楽しみながらボランティアとして参加しているということです。

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熊野・棚田を育てる会では、いったん荒れてしまった農地を復活させているのでこれ以上獣害を大きくするのを防ぐ効果も期待できます。また、棚田には土砂崩れを防ぎ、地下水を蓄えるだけでなく、生き物の多様性をまもるなど、多様な役割を果たしています。

里山の自然は人が手入れしなければ荒廃してしまいます。つい最近まで山間地では当たり前だった棚田が失われていくのを必死で食い止めている会の皆さん。そして、熊野の人と自然のファンになった棚田ボランティアの皆さん。この二つの力が合わさって、里山の自然がこれからも受け継がれていくことを願うばかりです。

熊野・棚田を育てる会では、常時棚田ボランティアを募集しています。
詳しくは下記のサイトをご覧下さい。
http://www.kumano-tanada.com/

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