非農家に適した農法判断の実験と適用 /お野菜大学
事業の概要
非農家に対して、農業に触れる機会の提供と実践的農業に伴う最適な農法の検討実験を行い、農法を決定し適応させることを目的としてこの事業を行います。 野菜の栽培を自然農法で行い、追い肥に堆肥や鶏糞を用いてより収量が高まる組み合わせを探します。同時に活動拠点の地域の方や市民とともに実行し指導します。最適と思われる農法を、一般向けに文章化し、体験イベントとして開催し、広く情報拡散を行います。
2016年2月25日の夕方、お野菜大学代表の本郷真理さんとともに滋賀県野洲市中主町にある中道農園に伺いました。この日、お野菜大学が事務局として関わっている滋賀県内の農家の皆さんの交流会が開催されるのです。有機農法で非農家の農業を模索するお野菜大学の活動の一環です。
農家の中でも有機栽培に取り組んでいる方が滋賀県の南部の各地から集まっているとのこと。有機栽培の農家ネットワークです。事務局が世話役を務める、このような集まりは今までに3回行われてきたそうです。
お野菜大学だけでなく、株式会社はたけのみかたの社員さんたちも事務局を務めていました。この会社は京都で学んだ大学生が、有機農法で野菜を生産する農家の皆さんと出会い「応援したい」「この野菜を消費者に届けたい」という思いから2014年11月に立ち上げたそうです。大学を卒業したばかりで、社長の武村さんはじめ若い人ばかり。農業=高齢化という単純なイメージしかなかったので、ちょっと驚きました。
集まっているのは、この離乳食(manma 四季の離乳食)の原材料を生産する農家の皆さんとのこと。お互いを知らなくても、知り合いの知り合いという感じで紹介していただいたのだそうです。最初に株式会社はたけのみかたの社長・武村さんから「4回目の会。初心の戻って大事なところから見直して話し合いたい」と挨拶がありました。
参加費を払い、名札をもらって胸に貼ると、まずは1分自己紹介です。
集まった方の中に、夏原グラントで2012・2015年度に助成を受けている、特定非営利活動法人 百菜劇場の方もいらっしゃいました。ネットワークを着実に広げておられますね。
ほかに地元中主町、草津市、湖南市などから若手農家さんが集まっておられました。
会場提供された中道農園の中道さんは「有機農法の農家が集まるこんなつながりができて涙が出るほどうれしい。20年前は孤独だった。今、TPPも目前で農業も生き残ろうと必死になっている」と熱いメッセージ。
農家の皆さんは、自分で生産した農産物を使ったおむすび、お総菜、漬け物、デザートなどを持参。食べながらの自己紹介タイムです。お野菜大学の本郷さんの提供は数種類をブレンドしたフレーバー紅茶。「南フランスの香り」「ニューヨークオレンジ」などネーミングも楽しくて話題になっていました。
持ち寄られた食べ物のおいしいこと!野菜が新鮮なのは当たり前でしょうが、更に食材自体のおいしさを感じました。特におむすびとの取り合わせが美味しくて、食べ終わったらもう一個、と手が出てしまいました。
満ち足りたところで、会合が本格的に始まりました。
最初は、甲賀市信楽町のカリスマスマイル農園の木村さんが、ご自身の仕事についての報告をされました。
関東で音楽活動を続けていたが、実父が還暦を迎えたのを機に故郷に帰り、自然農に取組みはじめた。農業時人口が減少を続けている今、なんとか農業に携わる人を増やしたい。そこで、クリエーターが住み込む農園を作り「半農半X」を実践してもらう。現在、子育て中のお母さんたちが畑を借りて自由保育を行っている。信楽ローカルのネットワークを作り、「循環」を消費者に伝えたい……。
農業を通じて地域社会を変える熱いプランが発表されました。
続いてグループでのワークです。はたけのみかたの社員・川村さんが司会役として、いままでの簡単なふりかえりと今日のテーマを説明し、3グループに分かれて話し合い開始。テーマは「この会は自分のためにどんなことができるか」
意見をポストイットに書いて模造紙に貼り付けていきます。
3グループそれぞれ、少しずつやり方は違いましたが、お話は活発に盛り上がっていました。
時間が来たら、それぞれのグループの代表が模造紙を見せながら、内容を発表しました。
「ここに来て何を言っても馬鹿にされない。利害関係がないので相談に乗ってもらえる。問題を解決できる」
「消費者の情報がほしい。直接出会える消費者ツアーなどをしたらいい」
お野菜大学の本郷さんも発表しました。
「この会は教育と出会いの場であり、情報共有できる場。技術があっても独りでは何かあるとくじけてしまう」
続いて2つめのテーマ「この会は自分以外のために、どんな存在になれる?」でした。
こちらも熱い意見が交わされ、各グループの代表が発表を行いました。
最後は記念撮影をしました。皆さん、とてもいい笑顔ですね。とてもよい雰囲気の場であったことが伝わってくる写真です。先輩から後輩へ、経験や知識など、情報が伝えられ、新しいことにチャレンジするための土壌が醸成されていると感じました。この後は中締めとして、解散でしたが、皆さん話が尽きないようで、あちこち立ち話が続いていました。
この日、農家の皆さんからは「高齢化や過疎で農業人口が減り、うちの地元の農地はどうなっていくのか先が見えない」「初めて農業を始めた人の8割が辞めている。トラウマになっている人もいる」など、農業の厳しい現状についての話も聞かれました。
しかし「ローカルのネットワークを作ってみんなが地元の農産物を持ち寄って売るマルシェを開催したい」「都会からワーカーを呼んで自分の食べるものを作り、収穫の手伝いで現金収入を得るような農園を作りたい」「一見対立しそうなところが味方になったら強い」「料理人、行政、他のいろんな立場の人も巻き込んでいきたい」など、わくわくするような話もたくさん出てきました。
今後、事務局が運営するスタイルから、農家の皆さんご自身の手で運営へと以降していく方向ということです。安心・安全な農産物を生産している皆さんの笑顔が、頼もしく感じられました。これからもこの熱いネットワークを維持させてくださいね。