里山保全活動 /富之郷里山クラブ
事業の概要
私たちは荒廃した里山の再生と保全を行うことで、自然のダム機能を復活させることを目的として活動しています。滋賀県多賀町の里山に自生するオケラ、キキョウ、ササユリなどの貴重植物を獣害から守るため、保護柵を設置しています。会員は毎月1回、保全作業と自然観察会をそれぞれ行い、一年に1回は一般の人を対象とした自然観察会を開催しています。
2017年11月25日、富之郷クラブの活動「里山保全活動」を訪問してきました。
富之郷(とみのさと)里山クラブは、多賀町富之尾の里山をフィールドとして2006年に発足しました。毎年の活動として3~11月に毎月1回の里山保全作業と自然観察会、そして年1回一般の方を対象とした自然観察会を実施しています。一般の方を対象とした自然観察会は、いろいろな方々が里山での体験を通し、自然を愛し、貴重な植物を守っていこうという思いを広めていくことを目的としています。里山を健全な状態に保つことが、自然循環の中で琵琶湖の水を守ることにも通じていることを伝えていきたいと、日々の活動に取り組んでおられます。
お邪魔したのは、月1回の里山保全作業の日でした。寒さが厳しくなっていく中、出かける前には、もしかすると11月25日は紅葉のベストタイミングかもしれないと期待が膨らんでいました。着いて尋ねてみると、う~ん先週がピークだったかもしれないですねとのこと。捕らぬ狸の皮算用でした。
今日は、枯れた松の倒木作業を中心に行うとのこと、場所や時間などの確認を終えて、早速チェーンソーの準備です。
チェーンソーを使い慣れた方が、混合燃料とオイルの入れ口について説明しています。間違えたら事故につながることです。機種によってキャップの色が違うこともあるので、要注意だそうです。
教えていただき、早速、燃料とオイルを入れます。
こうやって、基本的なことの指導を受けながら作業を進めることは安全のために欠かせませんし、作業ができる人を増やしていくためにも大切です。
必要な機材等を持ち、今日の作業となる場所へ移動です。
事前に、どの木を倒すかについては協議済みです。木を倒す方向は、周囲の地面の凸凹、周りの立木の様子、立木の傾きなどを考慮して決めます。木を倒す時に人力で引くためにロープをかけるために、はしごに上っていきます。そもそも枯れた松を倒すわけですから木の状況も不安定で、下から見ていると大丈夫かなあという気持ちになります。
周りの低木で危ないものがあれば、切っておきます。
倒す木にかけていたロープを繋ぐことになりました。結び方も教えていただきます。
次は、「受け口」を作ります。この受け口がある側が木が倒れる方向です。正確に切っていくことが大切だそうです。
印をつけた線の上をチェーンソーで切り込んでいきます。
受け口ができました。
この反対側に「追い口」を入れていきます。受け口の中ほどより上にチェーンソーを入れるのがポイントだそうです。
切り込んでいくと、少しずつ木が傾いていきます。ここでというところで「引っ張れ~!」と声がかかりました。受け口を入れた方向にロープを張っていた先で、みなさんが力を入れます。「もっと引け~!」「せ~の~!」と声が響き渡ったかと思うと、ミシミシミシと音を立てて木が傾きドオオンと倒れました。
あっという間のできごとで、うっかり写真を撮り忘れてしまいました。そのくらい、緊張感が高かったのです。
こちらの写真は2本目を切ったときの切り倒された木です(参考までに。2回目だったので、作業の流れや次の様子がイメージできたので撮れました!)
倒した木は、まず枝払いを行います。
ここもチェーンソーを使います。
次は玉切りです。切り倒した場所の近くに集めて置いておくのに適切な長さで切ります。そして運びます。
午前中の作業で、3本伐採しました。午後からも作業が続きます。
作業の間中、声をかけあい注意点を確認しながら、作業が進んでいきました。まだ慣れていないメンバーにとっては、そのひとつひとつが経験となって積み重なっていきます。
伐採作業の前には、夏原グラントでの取り組みの目玉でもある保護柵について、説明してくださいました。
実はこの保護柵、設置はすでに6月に終わっていて作業の様子を直接見ることはできませんでしたが、かなりの効果が期待できるとのことです。
富之郷里山クラブでは、オケラ・キキョウ・ササユリなどの希少種を獣害から守るために、2012年から保護柵を設置してきています。柵を設置したことで一定の成果はあるものの、高さが1mと低いことや雪害の損傷を受けるなどのことから、獣害から守りきれないということがわかってきていました。
そこで、より高さもあり網目の堅固なパタサクを設置したのです。
写真では見えにくいのですが、高さと頑丈さが結構な威圧感です。
このパタサクはL字型になっていて、網が垂直の柵と地面に這う形で続いているために、柵の下の地面を掘って中に入ることができないようになっています。地面の部分はこんな感じです。
わかりにくいですね。
こんな感じです。
(正和商事のHPより)
「オケラは低い柵の時には、3つ4つくらいしか確認できなかったのですが、このパタサクを設置したことで10倍くらい見つかっています。やはり、この柵の効果だと思います。すごいなあと、今、実感しているところです」
「オケラだけではなく、サルトリイバラなども見られます」
「このような柵を考えた人がいて、製品化されたおかげです」
6月設置なので5カ月程経過しているわけですが、その間で効果が実感でき、地道な作業を続けてきた人たちに喜ばれていることがすごいです。試行錯誤を重ねながらよりよい成果が得られると、それが活動の原動力になるのだと思います。
枯れた木を伐採するという地道な活動は続けていくことが重要ですが、担い手が少ないという根本的な課題を抱えています。興味を持った人がみんなの輪に入って作業を進めている様子は、飛躍的な変化ではないけれども、確実に里山保全につながっていくのだと思います。そして、新たな工夫が取り入れられた柵を設置して成果があったと感じられることと、その喜び。どちらも活動を続けていくために欠かせない大切なことだと感じました。