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近江の苗木ニューブーム推進事業~全国植樹祭を成功させよう~ /滋賀県苗木ネットワーク

事業の概要

滋賀県産の苗木を育てる業者は、5年前に1軒となってしまっていました。従ってほとんどの植栽用の苗木は県外から購入している状態です。2021年、全国植樹祭が滋賀県で開催されます。この時に植樹する苗木を滋賀県産にしたいと考え、そのために今から種をとるイベントを開催し、その保存方法や種まきについての研修を行います。また、苗木の食害対策のモデル林を実施します。

滋賀県苗木ネットワーク 活動のようす画像

2018年10月28日、滋賀県苗木ネットワークの皆さんの種採りの集まりに参加してきました。

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集合したのは、2021年に全国植樹祭の会場となる甲賀市の鹿深夢の森公園です。このイベントで植樹される苗木は今から育てて準備しなければ間に合いません。そこで県内に自生している樹木から種を集めているのです。

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この日集まったのは、滋賀県苗木ネットワークのメンバーで、栗東市林業振興会、甲賀愛林クラブなどからの8名。種採りの指導は樹木医でもある鹿田良男さんです。

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公園の中央にはなだらかに傾斜した広場があります。JR甲賀駅から徒歩でも来られるアクセスのよさが評価されて会場として選ばれたのだとか。しばし、メンバーでながめてどんな会場設営になるのかなど、話がはずみました。

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広場に植わっているのは、主に園芸用のようで外来種ばかり。そこで公園のはずれの林で種を集めることになりました。

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クヌギからドングリを集めます。

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地面に落ちてしまうと、枯れ葉にまぎれて見つけにくくなります。

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そこで、こんな感じで枝についているのを集めました。

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イロハモミジの種も枝についているものを手で集めます。

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地面に実生(みしょう・自然に落ちた実から芽が出て生えること)のかわいい苗が育っていました。今日集めた種もこんなふうにすくすく育ってほしいものです。

鹿田さんのお話では、モミジの種は早めに集めないといけないそうです。枝についたまま乾燥しきってしまうと発芽が難しくなるからです。なので集めたらすぐビニール袋に入れて乾燥を防ぎます。

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しばらく草むらをかき分けて種集めをしていたため、「ひっつき虫」と呼ばれる草の種が靴やズボンにたくさん着いていました。これも植物が生き残るための戦略なのですね。

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続いて移動したのは、甲賀市の油日神社です。本殿、楼門と回廊(3棟)そして拝殿が国指定の重要文化財です。すべて檜皮葺の屋根という、ものすごい建物なのです。この素晴らしい雰囲気を活かして、映画やドラマなど数々のロケが行われています。

こちらの杜(もり)には多様な樹木があるそうです。

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油日神社には日本一の幹の太さを誇る、コウヤマキがそびえていました。

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滋賀県の自然記念物にも指定されています。幹胴は6.5メートル、樹高は35メートル、樹齢は推定約750年との表示がありました。

参加メンバーの中に油日神社の総代の方がいらっしゃったので、宮司さんに直接お話も聞けました。

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それから鹿田さんに、植物の生存戦略の方法でもある種の飛ばし方のお話を聞きました。

自分で親の木から離れた遠くのほうへ飛ぶために、こんなグライダーのような形をした種もあるのです。同じ種類の樹木が同じ範囲で生えてしまうと、養分や日光の取り合いになってしまうので、種はなるべく別の場所に行こうと考えるんですね。

他にもいろんな種子の実物を飛ばしてみせてもらいました。

フタバガキという木の種にはウサギの耳のようなものが着いていて、くるくる回ります。ボダイジュの種にはプロペラそっくりの羽根がついています。キササゲの種には、ふわふわのタンポポの種の綿毛のようなものが着いています。ニワウルシの種には細長い円盤がついていて、ねじれて飛びます。

鹿田さん「土の中のアルミニウムはpHが4.5以下になると溶け出して草の根の成長を抑制する働きがあります。植物の中でも樹木の根は大丈夫です。そこでpHを下げる物質を出して雑草の根が伸びないようにして、その分、土の中の栄養素を根で吸い、少しずつでも樹木の内部に溜めていきます。環境が厳しくてもなんとか成長しようとする戦略です。荒れ地でも樹木が育っているのは、戦略の成果なんですよ」。

じーっと同じところにいて何もしてないように見える木が、そんな高等戦術を行っているとは!全く知りませんでした。

それから油日神社の杜の中の樹木をめぐって歩き、いろいろな特徴を教えてもらいました。

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この木はタブノキです。沖島のタブノキがカワウのコロニーによって大打撃を受けたストーリーも聞きました。カワウのフンにより土が酸性化して、タブノキには合わなくなってしまったそうです。

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杜の中は野鳥のさえずりでとてもにぎやかでした。樹木が茂っているので野鳥もすみやすいのでしょう。

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最後に鹿田さんから手作りのかわいいストラップをいただきました。これはいわゆるドングリですが、その中にもアラカシ系とコナラ系の2種類があるそうです。右側の青っぽいのがアラカシで、まだ枝の上にあり、熟していません。お皿は横しま模様。左側の細長いほうがコナラで、お皿の模様は波のようです。ドングリ(団栗)のドンは団で「丸い」という意味の漢字だそうです。この話も知りませんでした!

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そして全員で記念写真。

参加者の皆さんからは「植物が必死で生き残りのための進化をしている話は面白かった」「いつも山に入っているのに、全然木のことを知らないことに気がついた。もっといろいろなことを知りたい」「とても充実した内容のお話が聞けた」と、大好評でした。苗を育てるにしても種の戦略を知っているのと知らないのでは、力の入りようが変わってくるかもしれませんね。


油日神社は油の神様と同時に種の神様もまつってあるそうです。全国植樹祭までに、滋賀県で集めた種から元気な苗を育てて、滋賀県での大会を成功させてください。

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