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荒神山ファンクラブプロジェクト /荒神山ファンクラブ

事業の概要

2015年から始まった、滋賀県立大学と彦根市が主体となり荒神山で活動する市民団体と連携し山の荒廃問題などに立ち向かう、彦根デザイン・カレッジ荒神山キャンパスは、2017年度で終了しました。この連携と事業を引き継ぐのが荒神山ファンクラブです。事業を更に発展させ、月1回の松林の整備活動を実施しマツタケの再生を図り、伐採した木材をバイオマス燃料として利用、ワークショップ開催など、これらの活動をSNSやメールマガジン、HPなどを使い荒神山の魅力を発信していきます。

荒神山ファンクラブ 活動のようす画像

2019年3月23日、彦根市で活動している荒神山ファンクラブの「里山里地イノベーション~マツタケ復活プロジェクト~」に伺ってきました。

荒神山ファンクラブ 活動のようす画像
午前の部は朝8時半から荒神山に現地集合して保全活動を行い、午後の部は「マツタケ復活させ隊のあゆみとこれから」と題したフォーラムです。

荒神山は琵琶湖の近くにある三日月型の山で、ふもとには自然の家や公園、神社があり山頂にも神社、ハンググライダー場があるなど彦根市内の人に広く親しまれている山です。しかし、かつて主要生活エネルギーとして使用されていた落ち葉や木が、生活様式の変化に伴い石油や電気に変わったことで、里山に手がはいらず樹木が生い茂る状態になってしまいました。その結果山に入る人は減少し荒廃は進むばかりです。

また、かつて荒神山は松茸の群生地として知られており、50年前には地域の名産でした。下石寺町と上石寺町では共有財産の部分(荒神山の琵琶湖側の山腹にあたる)を総山と呼び、自治会などの組織で管理してきましたが、松茸の姿が消え、さらに松食い虫やナラ枯れにより立ち枯れた木が増えてきたため、総山管理委員会を立ち上げて有志で保全活動を行ってきました。総山管理委員会は夏原グラントの2015年~2017年度助成を受けています。その時の活動レポートをご覧ください。

里山保全・整備活動 /総山管理委員会

里山保全・整備活動



会ではメンバーの高齢化や活動が広がらないという悩みを抱えていました。そこへ滋賀県立大学の「彦根デザイン・カレッジ荒神山キャンパス」が2015年に設立され、荒神山周辺の地域課題に取り組む学生の拠点となり、彦根市、荒神山自然の家、滋賀県立大学、荒神山を愛する仲間の会、荒神山山王会(総山管理委員会も含まれる)と、官民学が連携し活動にとりくんできました。しかし、「彦根デザイン・カレッジ」は文部科学省の事業であったため2017年度をもって終了しました。

その後、今までつくりあげてきたネットワークと活動を終わらせたくないと、2017年6月に荒神山ファンクラブが誕生しました。
荒神山ファンクラブの代表、水野華織さんは滋賀県立大学の卒業生で、学生の頃から荒神山に関わり活動していました。卒業後、荒神山周辺地域の石寺集落に移住し、大学職員時代に「彦根デザイン・カレッジ荒神山キャンパス」の担当をしていた縁もあり、荒神山ファンクラブとしてその活動を続けたいと思ったそうです。

荒神山に集うファンを増やそうと、ロゴマークやそれを使った会員缶バッジ、毎月の定例保全活動のほかに、バーベキューや焼き芋、山歩きなどの健康的なお楽しみイベントを開催していますが、目玉は「松茸復活プロジェクト」です。

荒神山ファンクラブ 活動のようす画像
今回伺ったイベントは、松茸復活のための作業とフォーラムで多くの人に関心を持ってもらうことが目的です。
河瀬駅からメンバーの車に乗せていただき、荒神山のふもとから山を登りました。

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2004年~2009年に、滋賀県の事業として松枯れ木の伐採や間引き、また松などの植栽も行われた際に造成された山道はかなり急で、この日も砂利を載せた耕耘機が途中で登らなくなったとか。

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山道を10分ほど登っていくと古い神社跡と東屋がある広場に出ました。ここが活動拠点だそうです。ここでメンバーの集合を待ちます。

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チェーンソーの目立てをしている方、たき火をしている方、三々五々集まって来る方々は口をそろえて「登ってくる度にしんどくなる気がする」と、おっしゃいます。ほとんどが男性で平均年齢は軽く60才を越えている雰囲気です。それでも若い女性の方も何人か混じっていました。

荒神山ファンクラブ 活動のようす画像
朝のミーティングで「傾斜がきついので、石を落とさないように気をつけてください」など活動中の注意と、今日のスケジュールを確認し活動現場に移動しました。

この山道は総山管理委員会の活動レポートでも写真を撮っていますので、比べてみてください。今回は冬で、前は夏だったこともありますが、かなりスッキリと間伐されているのがわかると思います。

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斜面に登って作業開始です。

この傾斜、かなり急です。そして、きれいさっぱり立ち枯れの松、雑木や雑草が取り除かれて地面が見えています。

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うっそうと繁っていた以前の斜面とは、全然違っているのでびっくりしました。メンバーの皆さんは、その斜面を登っていくと、思い思いに作業を始めました。切り株の根っこを掘り出す人、下の道まで捨てにいく人、堆積している腐葉土を取り除いて捨てる人。

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とにかく急斜面なので転げ落ちないように立っているだけでも、普段使わない筋肉が使われているのを感じました。

雑木を切り出し、地面から腐葉土を取り除くというのは、松茸がたくさん採れた昭和の半ば頃の環境を再現しているのだそうです。公共の山として地元の皆さんが交代で雑木や落ち葉を取りに来て自宅で煮炊き、お風呂などの焚き付けとして使っていた時代には、山はこんなふうに見通しのよい状態で、地面にも落ち葉がなかったのです。

黙々と作業していると、午後に講演をしていただく講師の吉村先生と先生が代表をつとめておられる京都市左京区岩倉で活動している「松茸復活させ隊」のメンバーが到着しました。

再び神社跡のある広場に集合し、お出迎えしました。

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人数が増えて作業もはかどりました。

荒神山ファンクラブ 活動のようす画像

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お昼前になり、山を降りて石寺公民館へ移動し昼食タイムです。

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石寺町のコミュニティスペースで毎月第四土曜日のみオープンする滋賀県立大学生が主体で運営する、「コメニティカフェcomecome」が特製米粉カレーを販売。ご飯の形は、もちろん荒神山をかたどっています。カレーのとろみは、地元で生産されたお米の粉を使っているので、普通の小麦粉のルゥとは口触りが違っていました。味も見た目よりもスパイシーです。

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間伐材を使って子どもたちが栽培した椎茸のバター焼きもデザート代わりにいただきました。椎茸を栽培することで、子どもたちが荒神山のふもとに行く機会を作っているそうです。

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夏原グラントの助成金は、この椎茸栽培に使う椎茸ドリル、間伐に使うチェーンソーなどの備品や、燃料、チラシのデザインの費用にも使われています。

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学生の一人からコミュニティカフェ、ならぬコメニティカフェcomecomeの紹介と営業案内をしてから、午後の部開始です。

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荒神山ファンクラブ 活動のようす画像
荒神山ファンクラブ 活動のようす画像
まず、連携している滋賀県立大学の原田研究室所属の大学生による発表は、伊吹大根、琵琶湖周辺のオオカナダモ、伊吹山の帰化植物についての研究で、どれもとても興味深いものでした。

荒神山ファンクラブ 活動のようす画像      
また、滋賀県立大学近江環人地域再生学座受講生の杉浦啓介さんからは、荒神山フォトコンテスト「とっておきの荒神山2018」の活動報告がありました。滋賀県立大学のキャンパスは荒神山を借景にしているのに大学生は全く荒神山を意識していないことから、SNSを使って荒神山写真を募集したそうです。

集まった写真を見せてもらいましたが、思いがけず遠く(例えば白鬚神社)からも荒神山が見えることがわかりました。これは地元の方も知らなかったそうです。このように若い世代にも希求する方法で荒神山の魅力を発信するのもいいですね。

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そして最後にフォーラムです。
吉村さんが今回、午前の部で一緒に作業してくださった、京都のまつたけ山復活させ隊の皆さんが実際に松茸を復活させるまでと、その後の状況などを紹介されました。質疑応答の時間には、地元の皆さんから熱心で具体的な質問が続き、松茸への期待が大きいことを感じました。

吉村さんのお話から、アカマツと松茸との関係性やアカマツの樹齢、そして松茸の菌が飛んできてうまく着床するかどうか、地理的なものなど、さまざまな要素は複雑で、どうなるかは誰もわからないのだとわかりました。しかも長期戦になりそうです。

荒神山ファンクラブ 活動のようす画像
松茸が収穫できるまで、山での保全作業を楽しく続けることができるといいですね。荒神山ファンクラブの皆さん、吉報をお待ちしています。

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