巨木を育む豊かな森と水源の郷をつくるトチノキプロジェクト /巨木と水源の郷をまもる会
事業の概要
高島市、旧朽木村において、源流に残る森の保全と、源流の郷に暮らす人々のくらしの文化の保全を図る活動です。この事業では、ほおっておくと伐採される巨木を守るために、巨木観察会や啓発広報活動をおこないます。巨木のなかでもトチノキについては、分布調査や、苗育て、保全の見回りなどが特に重要です。
訪問 巨木と水源の郷をまもる会
秋晴れの真っ青な空のもと、10月20・21の2日間にわたり開催された『栃(とち)の木祭り』。安曇川流域の巨樹の調査と保全活動に取り組んできた「巨木と水源の郷(さと)を守る会」が中心となり今年はじめて企画されたお祭りです。
20日の参加者は99名、21日は228名とはじめての試みにしてこの集客数!関わったスタッフは約50名。いつもは静かな山村地が大賑わいだったんですね。
10月20日、このイベントの初日におじゃましてきました。「学び、探検し、味わう」をコンセプトに様々なプログラムが組まれていましたが、中でも楽しみなのはなんといっても大トチ(巨木)見学!でもまずは、オープニング会場へご案内!
会場は高島市朽木中牧の山村都市交流館「山帰来(さんきらい)」です。
たくさんの人で身動きもままならないほどでした。
「安曇川の水は水温が低い。これがびわ湖に入ることで水が浄化される。」と、オープニングのご挨拶で水源の森の大切さを話されたのは、地元朽木平良の林業家、松原理事。
朽木古屋(ふるや)の梅本さんは、家に伝わる江戸時代の古文書から飢饉を救ったトチノキの話をしてくださいました。
朽木西小学校の生徒のトチノキ研究の発表は、大人顔負けの詳細で専門的なもの。みんな大絶賛でした。
「8600個の花が咲いて、できた実が100個、1.2パーセントの確率です」
「へ~っ。恐れ入りました」
トチの実は、かつて山に住まう人の大事な食糧でしたが、動物にとっては今も大事な食糧です。 自然地理研究会の藤岡さん(近畿大学所属)は、トチの実が何に食べられているかを調べるため、9本の木の下に15台のビデオカメラを設置したそうです。
「映っていたのは、シカ、イノシシ、タヌキ、テン、ヤマドリ、アカネズミ、そして小学生でした」(トチノキ研究のため頻繁に木を訪れていたんだね)
京都府綾部市にある古屋(朽木古屋は‘ふるや’、綾部は同じ漢字で‘こや’と読む)は朽木と似た環境でトチノキの森があり、住民は5軒6人という京都で一番小さい村だそうですが、廃村にしたくないと5年前からトチの実のおかきやあられを作り始め、いまや大勢のボランティアに支えられ、事業も順調、今年は1200㎏のトチの実を収穫したそうです。
綾部市古屋のおばあちゃんたち。みんなお元気で肌もつやつや。
昼食は外で山の幸をいただきました。むかごご飯とビワマスのホイル焼き。美味~!
●巨木10
さて、おまちかねトチの巨木ツアーですが、私たちが選んだのは、古屋の大トチコース。ガイドは巨木と水源の郷をまもる会の青木代表。「ここ20年の間に忘れ去られたトチの巨木が見つかってきた。発見じゃない。確認です」「ここは地域の人にとって命を支え、命をつなぐ森だった。」
道の左下に川があり、植林されたスギ林がある。右手山側は広葉樹の森。
谷筋。「トチは川の音の聞こえぬところには生えぬ」
まもる会のメンバーは、深い谷を見つけたらトチノキを探してどこまでも急坂を上っていくのだそうです。そうやって7月に見つけたのが、幹回り8.07メートルの巨大トチノキ。新聞やテレビでも話題になりました。
まもる会では、2009年に調査を始めて、直径1mの巨木を約400本確認し、GPSで場所を特定して高さや直径とともに戸籍簿を作成しているとか。
到着しました。古屋の大トチです。胸高5m58cm、樹高28m。高島市所有の唯一のトチノキ。昔から山の神として大切にしてきたものです。樹齢は450年ぐらい。
しーんと静まり返った森に黒々と腕を伸ばして天にせまる姿は神々しいものでした。幹には苔やシダ植物が生えています。どっしりとした落ち着きも感じさせる巨木。見ているだけで癒され、畏敬の念がわいてきます。
約2時間の大トチ見学ツアーを終えて会場にもどりました。会場では体験プログラムとして、トチ餅作り、トチノキ細工、トチ染めなどが行われていました。お土産売り場にはトチ餅と地元で作られたお漬物、自然薯、サバ寿司なんかもありました。
滋賀県にこんな素晴らしい水源の森があるのを知ると同時に、この森を守ろうと活動を続ける「巨木と水源の郷をまもる会」のみなさんと地域のみなさんが手を取り合っている、その輪が他の地域にも広がっているのを見て大きな感動を覚えました。会のスタッフ小松さんは、「晴天に恵まれ、大勢のスタッフのおかげで、初めてのイベントにしては、盛りだくさん過ぎる内容にもかかわらず、参加者にも満足してもらえ成功だったと思う。地元の方々の関心も深まりました」とおっしゃいます。
みなさん、ありがとうございました。今後のご活躍をお祈りいたします。たくさんのエネルギーをくれた巨樹にも感謝!