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カスミサンショウウオの保護に向けた生息場所(保護池)設置事業 /田村山生き物ネットワーク

事業の概要

長浜市の南部、田村山に生息し、絶滅が危惧されている「カスミサンショウウオ」の保護にとりくみます。現生息地の近隣地において、将来にむけての安定した生息場所を確保するため、保護池を設置し、産卵場所を整備します。とともに周辺地域の環境保全を図ります。

田村山生き物ネットワーク 活動写真

カスミサンショウウオの保護に向けた生息場所(保護池)設置事業 /田村山生き物ネットワーク

訪問 田村山生き物ネットワークの保護池

2014年5月2日、日曜日、田村山生き物ネットワークのカスミサンショウウオの保護に向けた生息場所(保護池)を訪問してきました。
田村山生き物ネットワーク 活動写真
田村山は長浜市田村町・寺田町に位置する小さな山です。周囲はのどかな田園地帯。平らな田んぼの中にあり見る方向によっては、まるで前方後円墳のように見えます。
サンショウウオというと、山奥にいるイメージだったのですが、それはオオサンショウウオのものでした。カスミサンショウウオは愛知県から西の地域で丘陵地にも生息している、7センチから12センチくらいの小型のサンショウウオです。環境省のレッドリストにも「絶滅危惧II類」(滋賀県版レッドリストでは希少種)として掲載されています。サンショウウオの祖先は人類が登場するよりずっと前、約3,000万年前に現れ、それからほとんど姿を変えずに生息し続けているのだそうです。

今回は田村山生き物ネットワーク会長の齊藤さんが案内してくださいました。
田村山のふもとに車を停めると、こんな大きな看板が出迎えます。
「この地域には希少生物が生息しています。みんなの手で守りましょう。」というメッセージとともに、会長のお名前と電話番号が書いてあります。
看板を見て「こんなに明らかにしてしまったら、よくないのでは?」と、心配になりました。
田村山生き物ネットワーク 活動写真
しかし斎藤さんによると「この看板を立ててからは来なくなりました」ということなのです。それは、周囲に住んでいる方や通りかかった地元の方が、怪しい人を見かけたらすぐに電話をしてくださるようになったからだそうです。何度か駆けつけて目的などを問いただすうち、不審者はぱったり来なくなりました。
看板を立てることで、地元の方にも田村山生き物ネットワークが希少生物を守っていく活動をしていることが伝わり、希少生物をねらう人を許さないという断固たる姿勢を理解してもらえたのです。
田村山生き物ネットワーク 活動写真
これがカスミサンショウウオの保護池です。このそばの水路に産卵しているのを2005年3月に、齊藤さんとお子さんが発見しました。お子さんは長浜市に引っ越してくる前、関東で里山に生息するトウキョウサンショウウオを研究していました。引っ越しした長浜市でも、同じく里山で生息するカスミサンショウウウオを研究したい、と探していたので発見につながったのです。
ところが2009年の春、この水路が壊れ、たまっていた水は干上がってしまったため、幼生たちは全滅してしまいました。
これがその水路の写真です。U字溝をつなげて作られています。その継ぎ目は1センチ以上開いていました。訪問した日は雨の後だったので水はありましたが、晴天が続くと水が漏れて無くなってしまうそうです。
田村山生き物ネットワーク 活動写真
このまま毎年幼生が全滅したら、田村山に棲むカスミサンショウウオも絶滅してしまいます。
そこで齊藤さんは、カスミサンショウウオが希少生物であることを住民の皆さんに説明し、田村山生き物ネットワークを立ち上げました。地元の自治会、教育・医療・事業の関係者、六荘地区地域づくり協議会の役員、行政、と様々な立場の方が役員となり協力して自然と人間の共存を目指すことを決めたのです。

最初は水路を補修し、水を補充することで産卵場所を守ろうとしました。しかし、それは大変な作業にもかかわらず水漏れは止まりませんでした。

そこで水路のそばに池を造ることを計画し、近くにある長浜バイオ大学キャンパスで実験的に池を造りました。齊藤さんは長浜バイオ大学教授。教え子の大学生が池作りのほか、カスミオオサンショウウオの保護活動に協力してくれているそうです。
田村山生き物ネットワーク 活動写真
2011年、田村山のふもとの水路で育った幼生をこの池に放流したところ、2年後には成長したカスミサンショウウオが池に戻ってきて産卵したのです。

実験が成功したのを受けて、20013年の冬、水路のそばの土地に保護池を作りました。このとき、地元の方々の他、長浜バイオ大学の学生や虎姫高等学校「科学探求部」、米原高等学校「生物部」の生徒たちもいっしょにがんばったそうです。池は水が抜けないようにシートを敷いてから土や石で覆っています。また、井戸からポンプで水を引けるので水位が下がり危険になると水を足すこともできます。
田村山生き物ネットワーク 活動写真
これが保護池です。会長の齋藤さんと事務局長の松居さんが立ち会ってくださいました。
今年も水路に生み付けられた卵塊105個を、4月にこの池に移動させました。
田村山生き物ネットワーク 活動写真
これがカスミサンショウウオの卵塊です。もう抜け殻になっています。
田村山生き物ネットワーク 活動写真
そして目を凝らすとカスミサンショウウオの幼生が、池の石の上にたくさん見えてきました。

田村山生き物ネットワーク 活動写真
田村山生き物ネットワーク 活動写真
拡大してみると体の外にエラがあり、まるでウーパールーパーのように見えます。まず手が生えてから後ろ足が出てきて、8月頃に親と同じ姿になり池から出て田村山に帰っていくそうです。
(以上2枚の幼生画像は斎藤さんからご提供いただきました)

田村山生き物ネットワーク 活動写真 これが人工池の周辺全景です。地主さんの理解・協力があって、井戸水を入れるためのポンプ用に電信柱を立てて電気を引いてあります。
池の周囲の柵と看板で「この地域は住民みんなで希少生物を守っていくんだ」という強い意思が示されています。
田村山生き物ネットワークでは、県内各地で見つかった19カ所のカスミサンショウウオの生息地の調査で、それぞれDNAが異なる地域集団化した5系統があることを明らかにし、集団の現状を維持することの大切さをデータの上でも証明しました。また今までに4回の学習会を開き、大学や企業の研究者だけでなく、長浜市立長浜南小学校、市立西中学校、県立虎姫高校、県立米原高校、長浜バイオ大学そして県立岐阜高校の生徒・学生による各生息地でのカスミサンショウウオの研究が発表されるなど、文字通りネットワークを広げています。このように幅広い立場の市民が協力して調査と保護を行っている田村山生き物ネットワークの取り組みは、滋賀県と滋賀経済同友会で創設された、平成25年度しが生物多様性大賞を受賞しました。

「もっと観察会などを実施して多くの子どもにカスミサンショウウオに触れ合ってほしいのですが、網ですくって見せるたびに、幼生はダメージを負ってしまいます。そこで次に考えているのが水中カメラによる成長記録の作成です。いつでも卵や幼生の成長画像を見られるようにすることで、カスミサンショウウオへの理解を深めてもらえると思っています」と齊藤さんは語ってくれました。

「人と多様な生物がいっしょに暮していけるまち」はとても魅力的に感じました。田村山生き物ネットワークの皆さんが、これからも活動の輪を広げていけばカスミサンショウウオはこれからの何万年か田村山できっと生き続けてくれるのではないでしょうか。

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