和邇川流域の環境再生 /しがの里山や川を美しくする会
事業の概要
大津市北部、和邇川流域にて、ホタル・シジミ・稚鮎の群れの復活をめざします。地域で聞き取り調査を行い、マップを作りながら、自然環境の再生を通じてコミュニティの回復をはかります。
11月16日、しがの里山や川を美しくする会(略称:「しがの会」)の和邇(わに)川の生物調査を訪問しました。
朝、和邇公園に集合し、公園のすぐそばを流れる和邇川のポイントに向かいます。
これが調査の道具です。川底をかき混ぜて目の細かい網ですくうと、川底の生物たちが集められます。集めたら白い植木鉢の底に敷く皿に入れます。白いからとてもわかりやすいのです。木の枠は、徹底的に生物の種類と数を調査する時使うそうで、今回は使われませんでした。
霧が出て肌寒い朝ですが、メンバーの皆さんは慣れた様子で水に入り、調査を始めました。
黙々と川底をすくう皆さん。
本日の下流域での成果は↑こちらです。
魚はドンコ、ヨシノボリ。昆虫はカワゲラ、ヘビトンボ、トビムシ、ガガンボ、カゲロウの幼虫など。貝はカワニナ。
水質を調査する方法として薬品などを使う方法もありますが、この調査では環境省が示している指標生物を調べる方法を採用しています。きれいな水質のところに多い生物が多いときれいな水環境であると言える、という感じです。「子どもたちに川の環境状態を体感してもらいたい」という願いから、この方法を採用しているそうです。
すくった生物は簡易顕微鏡で細かい部分を確認し、何という種類の生物かを確定させます。シャーレの中に昆虫がいますが、ライトが当たって光っています。調査でつかまえた生物は持ち帰り、後から確認をします。
車に乗り込み、川をさかのぼり上流にやってきました。こちらでも同様に生物をつかまえて調査します。
さっきのポイントに比べると川幅も狭く流量も少ないですね。
上流での成果は↑こちらです。だいたいさっきと同じですが、下流にはいなかったサワガニがいました。
上流での調査が終わって、近所の公民館でまとめの時間です。調査の指導に来られているのは、大津環境フォーラムの中の「子どもが遊べる川づくり」プロジェクトの中西さんと本多さん、丸山さんです。生物の同定(生物の分類上の所属や種名を決定すること)を行うために使われていたのは、『滋賀の水生昆虫・図解ハンドブック』『滋賀の水生動物・図解ハンドブック』(滋賀県小中学校教育研究会)のシリーズでした。地元の生物について豊富なイラストで子どもでもわかりやすい本でした。今回は上流までの移動したため「子どもが遊べる川づくり」プロジェクトの方が持ち帰り、わかる範囲で同定して結果をまとめてくださいます。
おおつ環境フォーラムと「しがの会」では、同じ内容の調査を8月中旬にも行いました。その時は子どもたちとその保護者、会の役員、あわせて約40名で、下流域(同じ和邇公園内)と中流域とで手分けして同時に行ったそうです。子どもたちの中には魚捕りに夢中になる子もいて、アユ、カワムツ、ヨシノボリの仲間なども見つかりました。調査人数・時間そして季節によっても見つかる生物の種類が大きく変わるそうです。
「子どもが遊べる川づくり」プロジェクトの中西さんは「例えば魚のために魚道を設置したいと思っても、どんな魚や生物が川に暮らしているか知らないままでは無理なことです。今回のように川に入って生物調査を行うことを積み重ねたデータは滋賀県では貴重。和邇川の調査は、水生生物が成長している3月あたりに実施するとわかりやすいですよ」とおっしゃっていました。
「しがの会」代表・山田さんは「里山や川を美しくする、という名前の会ですが、今まで生物調査はしたことがありませんでした。そこで大津環境フォーラムに協力を求めたわけです。指導していただき、たいへん助かっています。時期も考えつつ、これからも定期的な観察を続けていきたいと考えています。現在、もうひとつの助成事業として、地域の方対象にシジミやホタル・アユの群れを『最後に見たのはいつか』というアンケート調査を実施し回収したところです。これからがんばってまとめます」とおっしゃっています。
夏原グラントの事業がきっかけで環境保全活動の内容がさらに深められるというのはうれしい効果ですね。この調査を長く続けて和邇川のデータを蓄積されたら、それは地域の宝物になるだろうと感じました。