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土から刈り取り土に還す~茅刈りでつなぐ伝統的自然素材の資源循環再発見プロジェクト~ /湖北古民家再生ネットワーク

事業の概要

古民家の茅葺き屋根葺き替えのための茅の刈り取りを行い、茅場を再生します。茅場は伊吹山の中腹で、刈り取った茅は余呉町の保管場で乾燥させます。刈り取りイベントでは、カヤネズミの生態観察も行います。

湖北古民家再生ネットワーク 活動写真

訪問 湖北古民家再生ネットワーク

 11月23日、湖北古民家再生ネットワークの「伊吹山茅刈り体験」活動におじゃましました。
 生活スタイルの変化により茅葺きの民家が少なくなり、同時に茅場も少なくそして荒れるようになってきました。このような中、湖北古民家再生ネットワークは、地域に息づく生活文化と美しい自然風景を受け継ぎ、素材の資源循環を再発見することにより環境意識を高めてもらおうと、多様な団体と連携しながら活動に取り組んでおられます。

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茅刈り体験が行われるのは、伊吹山の三合目。集合場所の三之宮神社から林道を車で登っていきます。着いたのは、林道が少し広くなった見晴らしのいい場所です。車を降りてみると、外は思ったより靄がかかっていました。気温もかなり低く、念のためと防寒を考えた服装で来て本当によかったと、改めて実感しました。
茅は枯れて葉の青い所がない方が良質なのだそうです。なので少しでも置いておいた方がいいのだけれども、あまり待ちすぎると雪が降り茅を刈れなくなってしまうとのこと、いつ刈るかは天気を見計らってのことになるそうです。「今回はちょっと早くてまだ青いところがあるけれども、来週となると雪が心配だからなあ」と空を見上げながら、スタッフの方が説明してくださいました。

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このプロジェクトは、湖北古民家再生ネットワークと県立大学とのコラボレーションです。当日は、県立大学の学生6名と指導の先生も参加してくださり、総勢12名でした。学生の中には、茅刈りは初めてという人もいて、プロの茅葺き職人の方が丁寧に指導してくださいました。

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まず、根本の方で鎌で刈ります。茅を束ねて脇で抱えるように持ち、スッと引くように刃を当てるとのことです。鎌の使い方は慣れていないと危ないからと注意点を教えていただきました。そして鎌だけではなく、切り口も危ないから注意するようにとのこと。プロの方でも、うっかりすると切り口が顔の近くまで来ていて慌てることがあるそうです。

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刈った茅をまとめて、重ねて置いていきます。両手で軽く一抱えくらいほどになったら、一束として荒縄で括ります。場所によって生育状況が違うので高さが違いますが、なるべく同じくらいの長さのもので揃える方がいいそうです。
括るのは3ヵ所。根本と真ん中、そして穂先です。下の方から縄を通し、上へ上げるようにするとスムーズに縄が通るそうです。

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結び目の作り方を間違えると茅をほどく時に手間がかかるので注意するようにと、何回もお手本を見せてくださいました。結ばずにねじりながら、荒縄の下を通す方法です。通すだけで大丈夫なのかなと思いましたが、しっかりと止まります。荒縄ならではです。

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最後に束を立て、全体を揃えます。この時、屋根を葺く時のことを考え、根本をきちんと揃えるようにします。
 結び目のことや根本を揃えることなど、屋根を葺くための材料である茅の束は、作業の段階で常によりより状態に作っていくことが重要なのだなと思いました。

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思い思いの場所を見つけ、作業が始まりました。学生のみなさん、声を掛けて作業を互いに確認しています。最初は戸惑いながらも、だんだんコツがつかめてきたようです。「寒かったけど、だんだん暖かくなってきた」「普段やったことがないことなので難しいけどおもしろい」「茅を刈り取っていくと、切り開いていくようでやりがいがある」と感想を話してくれました。

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 普段鎌を使うことも少ないものの、「茅刈り体験」におじゃました身としては、ここは「体験」です。早速、茅の中に分け入りました。茅ではない植物が混じっていると鎌の引き具合が違うため、少々手こずります。それでも何回も何回もやっていくうちに、刃の使い方がわかってきました。ひとりで一束を作ろうと思うと、かなりの量が必要です。なんとか束に括り、みんなで集めた束の上に載せました。


 プロジェクトでは、カヤネズミの生態調査にも取り組んでおられます。カヤネズミは高さ1m前後のところに、茅の葉を使って巣を作るのだそうですが、生態についてはあまり詳しいことはわかっていないのだそうです。この巣を見つけたら報告してくださいとのことでしたが、おじゃましている間には報告はありませんでした。
 こうして茅刈りは午後4時までの予定で続けられ、翌日の11月24日と合わせての2日間が今年の体験メニューだそうです。明日には一般参加もあり、今日よりは人数が多いだろうとのこと、最後まで見届けられないのは残念です。
一昔前までは日常であったことが今となっては「普段はやらないこと」になってしまったのは、この茅刈りだけではありませんが、生活文化の継承や環境保全の取り組みは、一度途絶えてしまうと再現は難しくなります。その意義を伝えながら、昔のままを取り戻すのではなく今できる範囲で楽しみながら活動を続けていくことの大切さを、改めて感じました。

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