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都市公園で育むナチュラル・ガーデンとナチュラル・キンダーガーデン /森の風音

事業の概要

滋賀県営の「びわこ文化公園」は、滋賀県大津市の瀬田丘陵に位置し約43ヘクタールもの広大な面積を有しています。そのうち約20ヘクタールある西側の里山ゾーンで、森の風音は月に2日、ボランティアとして遊歩道整備や植樹など、公園の手入れを行ってきました。また、この公園を使って、せた♪森のようちえんが保育活動を行っています。公園の管理会社や、森のようちえんと協力して、多様な動植物を保全し環境教育が行えるナチュラルガーデン、ナチュラル・キンダーガーデンを整備します。また、この活動を広く知らせるためのイベントやシンポジウム開催、出版も予定しています。

森の風音 活動のようす画像

2019年7月3日の午前中、大津市の瀬田丘陵にある、滋賀県びわこ文化公園で開催されている森の風音の皆さんの定例活動とせた♪森のようちえんを訪問しました。

森の風音 活動のようす画像  
びわこ文化公園は広大な県営の公園で、県立図書館、和風庭園(夕照の庭と夕照庵)も園内に配置されています。森の風音の皆さんが活動されているのは、このマップの右手上部周辺の森です。

森の風音 活動のようす画像
森の風音は2001年から活動を始め、60代~70代の33名の会員が、毎月2日定期的に公園の一部の手入れを行っているそうです。
そのため、滋賀県の担当部署と指定管理者である企業との信頼関係も築いていて、森の風音が植栽を手入れする道具を収める小屋も芝生広場の隅にあります。

森の風音 活動のようす画像
小屋の壁には、いつ、どんな活動をしているかの予定表、そして「参加者募集」の表示もありました。

森の風音 活動のようす画像
こちらの方たちは森の風音のメンバーで、落ち葉の堆肥の手入れ中です。ナチュラル・ガーデンの肥料にしているそうです。

森の風音 活動のようす画像
周囲の木には名前などの情報と写真の入った、手作りの名札が掛けてあります。図鑑を持って散歩に来てなくても名前がわかるのはうれしいですね。

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森の風音 代表の金子龍太郎さんが、活動フィールドを案内してくださいました。
ここがナチュラル・ガーデンです。ヤマアジサイ、ギボウシが植えられています。ナチュラル・ガーデンには園芸種ではなく在来種を植え、日本に従来からある花や実、紅葉などを楽しむのだそうです。

森の風音 活動のようす画像
少し歩いたところには、紅葉山と名付けられたところがありました。放置され、うっそうと繁っていた森を間伐して明るくし、紅葉を植えているゾーンです。

森の風音 活動のようす画像
森の風音 活動のようす画像
森の風音が植えたヤブラン、ツワブキ。
どちらも秋や冬といった比較的花の少ない季節に咲いて、小動物や昆虫たちの餌となる植物だそう。

森の風音 活動のようす画像
ミツマタ。
和紙の原料になる植物です。夏原グラントの助成金で今年の春に子どもたちと一緒に植えたそうです。ミツマタは春にかわいい花を咲かせるのできれいでしょうね。

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ちょうど今、ホタルブクロがたくさん咲いていました。これも以前、子どもたちと一緒に植えたのだそうです。

森の風音 活動のようす画像
森の中はこのように平らな遊歩道もあるので、今後散歩道として整備後公開する計画もあるそうです。

森の風音 活動のようす画像
ここから向こう側は、全く手を入れてない森だそうです。一面のウラジロが生い茂る森で、道もなく踏み込めそうにありません。

森の風音 活動のようす画像
せた♪森のようちえんの方向に歩いている途中で、小さな池がありました。これは以前、重機で掘って人工的に作った池とのことですが、現在ではスイレンやヒツジグサが咲いているだけではなく、トンボも飛び回っていてビオトープのようになっていました。

森の風音 活動のようす画像
また歩いていくと森の風音のメンバーが草刈りをしているところに出会いました。こうして下草刈りを定期的にしないと、草が茂って道を覆ってしまうんですね。ここは森と言っても手入れが必要な、里山的な場所だと思われました。

周辺にはマムシやイノシシの注意を促す看板も立ててありました。スズメバチの姿も見かけました。公園の中の森だと思って肌を露出した服装で入ってしまうのはよくなさそうですね。

森の風音 活動のようす画像
道のそばにオミナエシ。

森の風音 活動のようす画像
一重のクチナシ。園芸種ではない自生のものだそうです。

森の風音 活動のようす画像
森の中に、間伐された明るい場所が見えてきました。ここが、せた♪森のようちえんの拠点です。森の風音が整備した森の中で、子どもたちが過ごしています。

森の風音 活動のようす画像
一斉に同じことをするのではなく、バラバラに好きなことをして遊んでいるようでした。

森の風音 活動のようす画像
背の高い木に掛けたターザンロープにつかまって、子どもが一人ずつ交代で遊んでいました。
毎回、このような遊具は片付けて持ち帰らないといけないのだそうです。

子どもたちは3才から5才、各学年3人程度なので全部で15人くらいが参加しています。毎週2日、保護者が広場のところまで連れてきて、そこから子どもだけで歩いてこの場所までやってきます。一緒にいる大人は4人~5人。保育士や幼稚園教諭の免状を持つ人が有料で保育を行う、無認可保育です。

森の風音 活動のようす画像
森の風音のメンバーの男性がクワガタムシをつかまえて子どもに渡すと、その子はじーっと興味を持って見つめていました。

森の風音 活動のようす画像
他の子も集まってきて昆虫図鑑を取り出し、どんなクワガタなのかを調べていました。これは生きた勉強! 実体験に基づく知識になりそうです。

せた♪森のようちえん代表の西澤彩木さんは「ここでは子どもたち自身が話し合って、何をするかを決めることを尊重しています。でも残念ながら、卒業後は指示され、やらされる場面がどんどん増えてしまうんですね」と、この場での子どもたちの過ごし方について説明してくれました。
金子さんは発達心理学が専門の大学教授。森の中で遊ぶことについて「人間の小脳は幼児期の7,8才まで成長し、その後は成長が止まります。小脳の成長期に、さまざまな運動をさせておくとよい、と言われています。だから、この森のようちえんのように自然の中で遊ぶ体験はとても大切です」と教えてくださいました。

森の風音が2001年から間伐など公園の自然を手入れするボランティア活動を続けているうちに、2012年からは自主保育のグループせた♪森のようちえんも連携して活動をするようになり、現在では専門家が保育をする形になっています。単なる公園の整備ではなく、子どもたちの成長に大切な自然環境、キンダーガーデン(幼稚園の祖・フレーベルが提唱する、子どもがイキイキと成長できる自然の庭)として整える活動でもあるんですね。

森の風音 活動のようす画像
公園と隣接する龍谷大学への道のすぐそばには、瀬田丘陵で製鉄が行われていた時代の遺跡があります。そんな歴史と文化のある地域の公園の、大人が手入れした自然の中で、子どもたちが遊ぶ姿は本当にのびのびと楽しそうでした。

森の風音では、今年度に冊子を作成し、シンポジウムを開催するなどして、広報にも力を入れる予定だそうです。

この公園の中の里山の価値が認知され、保全活動をする仲間がもっと増えるといいですね。森の風音の皆さんが環境保全活動を、これからも長く続けられることを願っています。

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