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小谷山・山田山森林整備事業 /ほっこりおせんどさん山里の会

事業の概要

滋賀県長浜市上山田町の放置森林を整備し、森の中に間伐材を利用した小屋を建てて人が集う拠点とします。森林の中の整備した場所を利用して、夏休み中の学童の子どもたちに森林遊びの体験や、山間地の田んぼや山の現状を伝える学習会を行います。音楽イベントや馬搬体験も予定しています。

ほっこりおせんどさん山里の会 活動のようす画像

2019年11月2日、ほっこりおせんどさん山里の会(以下、会とする)で、小屋を建てるための準備作業を行うとお聞きして、滋賀県長浜市上山田に伺いました。路線バスがないので最寄りのJR河毛駅から、ほっこりおせんどさん山里の会の小障子 正喜さんに車で迎えに来ていただいきました。

ほっこりおせんどさん山里の会 活動のようす画像
会の拠点のある上山田町には山田山が。
 
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そして谷の向かい側には小谷山がそびえています。小谷山には浅井長政の拠城となっていた、小谷城がありました。織田信長などが小谷城を攻め戦場となったところです。上山田町は山田山と小谷山とにはさまれた谷間にあるのです。
 
古い戦場は、静かに紅葉の季節を迎えていました。
 
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朝9時、会のメンバーや参加者が集まり、挨拶と今日のスケジュールなどの説明がありました。
 
小障子さんからは「今日と来週の二日間で、木材に墨付けを行い、刻みを行います。今日は、この小屋に使う木材の由来を紹介します。昨年の台風21号で倒れてしまった木を間伐し、それを使います。ぼくらは製材機を持っているので、間伐した木材を使うことができます。あとで木が倒れていた現場で、小屋を建てる場所を見に行ってもらいます。」との説明がありました。
 
会の代表である松本 茂夫さんは「この小屋を皆さんと一緒に建てることで、山の現状を知ってほしいのです。大量に植林された杉の木は、今や利用価値がありません。外国から安い木が入ってきていますし、更に大量生産された木材が安い価格で出荷されています。手間暇をかけないといけない木材は建材としては、とても使えません。燃料としても、何かの補助事業としてしか使えない状態です。燃やすのはもったいないけど、それ以外に使い道がないのです。台風で倒れても誰も何もしないので、森林組合が後始末をすることになっていますが、ほとんどが倒れたまま放置されている状態です。私たちは地元の山からの木材を使いたいと思っています。そのうちの1つとして。この事業を行っています」と、あいさつされました。
 
それからすぐに全員、車で移動して小屋を建てる場所を見に行きました。
 
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車で数分移動し、林に囲まれた空き地にやってきました。ここは元々植林されたけれど、手入れがされなくなり竹藪が入り込んで暗くなった森でした。しかし竹藪は3年間国の事業として今から5、6年前までに伐採してきれいにしたそうです。
 
その森が昨年の台風で、木が根元からなぎ倒されて危険な状態になってしまいました。そこで倒木を伐採・製材し小屋を建て、誰でも使える場所にしよう、というのがこの「小谷山・山田山森林整備事業」です。
 
ほっこりおせんどさん山里の会 活動のようす画像  
切り株を見ると、かなりの太い木が根元から浮き上がっています。よほどの風だったのがわかります。
 

広場の隅には、伐採され玉切りされた木が積まれています。これらは薪にして燃料として使われるそうです。

 
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道路をはさんで向かいの小谷山側はまだ手つかずで、こんな荒れたままになっていました。台風直後は小屋を建てる予定の空き地周辺もこんな状態だったそうです。
 
手当てされず、ほったらかしにされた傷跡を見ているようで、つらい光景でした。
 
小屋を建てる現地の見学を終え、戻ってきてから簡単な自己紹介をしました。会のメンバーの方は周辺の方ですが、一般参加者の方は、市外からでした。中には県立大学の先生と二人の学生も。
 
古民家をセルフリフォームしたい、大工仕事に興味があるから、などの理由で参加されたそうです。
 
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そして今回の棟梁の松井さんから、墨付け、刻みのやり方の説明を受けました。
 
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墨付けとは、製材された柱に印を付けること。この印通りに切ったり削ったりして組み立てていきます。もしも、この墨付けを間違っていると、小屋は建たなくなるという、とても重要な工程です。
刻みとは、その墨通りに切ったり削ったりすることです。
 
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伝統的な物差し、指金(さしがね)を使って墨付け。
皆さん熱心に説明を聞いています。
 
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墨付けが終わった柱は、印に従ってほぞを差し込むための穴を掘ります。昔はノミで削って行った、たいへんな作業だったそうで、ほぞの穴を掘る専門の職人さんもいて、結構な高給取りだったとか。

今では、こんな機械が電気で掘ってくれます。
機械の使い方も説明してもらいました。
 
一通りの説明が終わると、みんなで実際にやっていきます。

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機械で掘った穴の仕上げはノミを使い人の手で行います。
 
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このほぞにはめ込むのは、柱の先端のほぞです。こんな機械で切ると、ほぞのできあがり。円盤ノコギリ4枚がタテとヨコに組み合わせてあり、いっぺんにほぞを刻んでくれる仕組みになっていました。やっぱり道具は大事ですね。
 
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あとは、全員で作業に取り組みました。
屋根の垂木(たるき)に、角度をつけてノミで削っているところです。
 
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こちらが、削り終わった柱です。同じ角度に削られているのが見えますね。
 
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松井さんの指導を受けながら、墨付けをする人も。
 
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一方、小障子さんは昼ご飯の仕込みに取りかかっていました。「せっかくだから」と、わざわざ焚き木を燃やして羽釜でご飯を炊いています。
 
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心づくしのお惣菜まで用意していただき、おいしいランチタイムとなりました。
 
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モノづくりが好きな人ばかり、和やかな時間です。
 
午後からも作業は続き、今日作った柱は来週組んで棟上げを行う予定だということでした。
 
秋晴れの一日、作業に適した日となりました。
  
ほっこりおせんどさん山里の会 活動のようす画像 
  
今回、台風で痛めつけられた山の状態を目の当たりにして、林業ではお金にならないから作業する人手がないのがよくわかりました。
 
手をつけられていなかった、被害にあった林を伐採して製材し、生えていた場所に自分たちの手で小屋を建て、新たなコミュニティの場にする。その時間を楽しみながら。
 
昔は、自宅を建てるのは先祖が植えてくれた山の木材を使ったとか、整地や壁塗りなどは近所の人が集まって手伝ったなどと聞いたことがあります。そんな伝統の家の建て方を現代に復活させているのですね。こうして少しでも森や林の中に手が入りますように、と祈る思いで作業場を後にしました。
 

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