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湖西のハマエンドウの保全 /滋賀植物同好会

事業の概要

琵琶湖湖岸で育成する海浜植物のハマエンドウは絶滅危惧種で、彦根市の新海浜だけとされていました。滋賀植物同好会で調査を行ったところ、大津市の南小松から北比良の間に新たに3か所の群落地を発見しました。除草などで環境と整えるとともに、詳しい生態調査と研究を行うことで、今後の保全活動をより効果的にしたいと考えています。

滋賀植物同好会の活動のようす画像

2019年5月16日、滋賀植物同好会の上田 收さんから「夏原グラントのファ-ストステップの2年間の活動を通して湖西のハマエンドウの生育環境を整備してまいりました。今年は順調に生育面積を拡げ、生育状況も良好で、多くの人に観察できる状況になりました。今ちょうど花をつけ見ごろとなっていますよ」とお誘いがあったので、今回、湖西のハマエンドウの群生地のうち、南小松から北比良間の3ヶ所を案内してもらいました。ハマエンドウは海岸ではごく普通に見られる植物ですが、琵琶湖のハマエンドウは海岸のハマエンドウが淡水の湖岸に侵入し、閉じ込まれ、長い時間が経つうちに独自に進化し、この地に適応して生育し続けています。このため、滋賀県では絶滅危惧種で県条例の指定希少野生動植物種にもなっている貴重種だそうです。

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最初の訪問先は近江舞子内湖の公園内の群生地です。JR湖西線の近江舞子駅で下車し、湖岸へ向かいます。

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まもなく近江舞子内湖に沿ってのどかな公園に入ります。この公園の南端に、ハマエンドウが群生していました。公園内のクスノキの根元やツツジの生垣内とか生垣に隣接する公園の芝地などでハマエンドウがそれぞれ生育環境が異なる3ヶ所に分かれて群生していました。

最初の訪問先は近江舞子内湖の公園内の群生地です。JR湖西線の近江舞子駅で下車し、湖岸へ向かいます。
クスノキを中心に半径3mの円を描くようにハマエンドウが取り囲んでいました。

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藤にも似た、マメ科の植物で紫色から濃いピンク色の花はきれいです。カラスノエンドウくらいの大きさを予想していたのですが、それよりも大きいので驚きました。

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ほかにも、公園の沿道にはツツジの生垣があり、その生垣の隙間からハマエンドウが顔を出して咲いています。
居心地がよいのか、いつも他の群生地のハマエンドウより早く成長し開花しているそうです。この時期、同系色のツツジも開花し始まりました。

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ハマエンドウの花は5月末頃終わり、結実すると地上部は枯れて休眠します。でもハマエンドウは多年草で地下茎は生きていて、休眠を終えた秋頃、新たに地上部に芽を出し、翌年4月には他の植物に先駆けて花を咲かせるそうです。

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これは、海岸で掘り出したハマエンドウの地下茎です。地面に沿って多方向に地下茎を伸ばし、節から地上部に芽を出して葉をつけます。貴重種の琵琶湖のハマエンドウの地下茎を掘り返し調べることができないので、海岸のハマエンドウで地下茎の伸びや広がりなどの成長状況を調べているそうです。

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この公園には、ハマエンドウ同様に琵琶湖に生育する海浜植物のタチスズシロソウが開花していました。一時期レッドリストでは「絶滅危惧増大種」とされていましたが、野洲市のマイアミ浜で大群生地が発見されるなどして、現在では「その他重要種」とランクを下げているそうです。小さな白い、ダイコンに似た花を咲かせていました。

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この写真は公園内の芝生内に生育するハマエンドウの群生地です。生育面積がしだいに拡張されてきています。
生育地にはどこも、「ハマエンドウ 滋賀県では絶滅危惧種で希少野生植物種に指定されています。採取は硬く禁じられています。」という文面の立て札を立ててロープを張り、生育地内の立ち入りを禁止しているとともに、ハマエンドウの存在を多くの人に知ってもらえたら、という思いで数多く設置したそうです。

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上田さんは「ハマエンドウの保全活動は保護柵の設置以外に、主にハマエンドウを覆ってしまう周囲の高茎植物の除草活動が主体です。周囲の植物を完全に駆除すると、土地が乾燥し過ぎてハマエンドウの成長を阻害するようです。過剰な除草でなく、自然状態でハマエンドウの適した生育環境つくりを模索しているところです」と説明されました。

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近江舞子内湖の公園をあとにして、約600m離れた次の群生地、比良川右岸の公園に向かいました。雄松が崎の美しい松林を通り過ぎ、比良川の橋を渡り、左折すると琵琶湖に面した目的地の公園があります。ここにも大きく3ヶ所の群生地があるそうです。

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比良川を渡り、左折すると湖岸へでます。

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比良川右岸の公園の中のハマエンドウの群生地です。「2m×4mの生育面積に広がりました」と上田さん。

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「ここは3年程前に地元住民の方から連絡があり整備してきました。生育地はどこも移動していることもあり、後々のためにスマホのGPSアプリで生育地の位置情報をピンポイントで記録しています」ということでした。

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この公園はお天気がよいと、対岸の沖島や伊吹山、三上山まで見渡せる気持ちのよい場所です。

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公園の立木の木陰にもハマエンドウが生えていました。

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上田さんは、色の褪せた立て札を、新しい立て札と交換。

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文字が読み取れなくなっていましたが、ハッキリと文字が読める新品と替えてひと安心です。

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昨年の21号の台風で浜辺に波が打ち寄せられ、砂に埋もれてしまったハマエンドウもあるそうです。

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砂地のハマエンドウ。なんとなくイキイキしているように思えました。

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同じ公園内に自生するカワラナデシコも教えてもらいました。夏に咲くそうです。
川のそばの公園なので川原に咲くナデシコが好むのでしょう。カワラハハコやカワラマツバなどの河原植物も見られます。

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続いて今回最後の群生地のそぐら浜に向かいました。

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比良川の公園より約700m離れたそぐら浜の湖岸にも、ハマエンドウが咲いていました。

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石垣の隙間、波打ち際に生えるヨシの間から紫色の花が見えています。ヨシが生い茂ってしまうと、全くわからなくなるそうです。そのためハマエンドウの開花期にヨシも成長し始めるのである程度は刈っているとのこと。
「5年程前にヨシが優占し、20~30個の花をつけていたハマエンドウも、その後の成長期にヨシを刈ることにより、今年は1000近くの花を咲かせ驚きました。15m×1mの南向きに面した細長い砂地の多い土地で、周囲は石垣に囲まれ、太陽の放射エネルギ-を十分に享受し、ハマエンドウにとって最適な生育環境かもしれません」と上田さん。


ここで、この日のハマエンドウの群生地めぐりを終えJR比良駅へむかいました。


歩きながら上田さんに保全活動に対する思いを伺いました。
「本来なら、地元の皆さんがこの貴重な植物に気づいて誇りに思い、保全活動を継続してくださることを望みますが、ハマエンドウにとって出来る限り自然の状態で生育できる環境をつくり、必要最小限の作業で無理のない永続的に活動できる条件探しを行い、その成果である保全ノウハウを確立して引き継ぎたいと思っています。
                           
長い時間をかけて淡水の琵琶湖の砂浜に適応して生き残った特異な海浜植物たちの中でも、保全活動の進んでいるハマゴウやハマヒルガオ、湖東のハマエンドウは広く知られて保護活動もされているそうです。湖西に4ヶ所の群生地をもつハマエンドウも、絶滅危惧種から脱却できる環境つくりを目指して頑張っていきたいです」

滋賀植物同好会の皆さんのこれからの保全活動と調査に期待しています。

2 Comments on “湖西のハマエンドウの保全

  1. 藤田 善武

    上田さん?に20日、近江舞子の内湖で、説明を受けた者です。
    ありがとうございました。
    湖西を彷徨していますので、関心を持って確認してみたいと思います

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  2. しがNPOセンター 投稿作成者

    コメントありがとうございます。このレポートを作成した、しがNPOセンターのスタッフです。

    海から遠く離れても咲く琵琶湖湖畔のハマエンドウ、ぜひ観察してみてください!

    返信

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