猪子山・地獄越え山道整備事業 /猪子山・地獄越え周辺の山道を良くする会
事業の概要
滋賀県東近江市能登川町にある猪子山は、きぬがさ山や観音寺山にまで連なっている山です。地獄越えという峠を越えていく山道は険しく、丸太や石による階段が設置されていますが、補修しなければどんどんなくなってしまいます。14年前から個人的に行ってきた補修が限界となり、2年前に会を立ち上げ、夏原グラントファーストステップ助成を受けて活動しました。道を利用するハイカー自身に丸太を運んでもらうなどして、この2年間で500本を越える丸太階段の補修ができました。今回の助成では、永源寺地区から運んできた丸太と鉄杭、鎹(かすがい)を購入し、人力で頂上付近まで搬送、そこで丸太の皮むきを行い、古い丸太を撤去し新たな丸太を鉄杭と鎹で固定します。最後に段差ができないよう石や土で整地して完成です。4~6月、9~11月、3月に一月に30本の交換を行う予定です。他には除草や枝打ちなどして快適に登山できるようにします。チラシを作成し、現地視察トレイルの実施を通じて地元の方や一般のハイカーにも協力を呼び掛けていきます。
2019年9月25日、滋賀県東近江市、JR能登川駅からすぐの猪子山へ、猪子山・地獄越え周辺の山道を良くする会(以下、会)の皆さんの活動日に伺ってきました。
ここは猪子山から連なる繖山の山腹にある繖峰山神社から麓の大鳥居までの岩場の急斜面を、立派な御輿を引きずり下ろす、勇壮な「伊庭の坂下し」祭で知られています。また、タカの渡りのチェックポイントとしても、野鳥好きの方の間で有名です。
猪子山から、峠となっている地獄越えを経て繖山、観音正寺にも抜けられ、JRハイキングなどでも人気のコースになっています。
猪子山から連なる繖山の山腹にある繖峰山神社から麓の大鳥居までの岩場の急斜面を、引きずり下ろす、勇壮な「伊庭の坂下し」祭で知られています。また、タカの渡りのチェックポイントとしても、野鳥好きの方の間で有名です。
猪子山から、峠となっている地獄越えを経て繖山、観音正寺にも抜けられ、JRハイキングなどでも人気のコースになっています。
この活動は、14年前から一組のご夫婦がこつこつと山道の保全活動をされていたそうです。しかし道の周辺の倒木などの木材を使っていたので使い尽くし、補修のための材木や杭を購入する必要が。そこで会を立ち上げ、2017年度から夏原グラントのファーストステップ助成を2年間受けました。この2年間で1000本を越える丸太階段を補修されました。支援を得て調達した丸太以外に、中心となるご夫婦自らが調達したものや、現状の丸太で使えるものを再利用もしているそうです。
今年度からは夏原グラントの一般助成を受け、年間400~500本の丸太階段の補修・交換作業を計画されています。
会の代表、堀久雄さんは、朝から永源寺の森林組合まで行き、荷台いっぱいに30本の丸太を調達し猪子山の山頂手前まで軽トラックで運びました。
今回は堀さん以外に3名の会員の皆さんが集まって、軽トラックから山道の途中まで丸太を背負い、運びあげます。2本で約25キログラム程度あるそうです。
しばらく登ったところに、小さな空き地があり、そこに丸太を積んでいきます。
一度に2~3本が限度、ということで何度か往復されていました。
山道の端に「ご協力のお願い この先の山道を直しております。この下に置いてある丸太 赤の布で印の場所まで運ぶのを手伝っていただけるとありがたいです。 重たいのでくれぐれも無理せずお願いします」と書いた紙が貼ってありました。
丸太の皮むき作業を開始。皮をむいてないと、道で使っているうちに皮が浮いてきて滑ってしまう危険があるのだそうです。
準備ができた丸太は、こんなふうに道の端に積まれています。
そこへ会のメンバーでもあり、山歩きサークルのメンバーでもある女性2人組がおいでになり、一本をさっと2人で担いで出発されました。こんなふうに、山歩きを楽しむついでに、丸太を運んでくれるボランティアの方も多いのだそうです。
皮むきが終わった丸太2本を背負った堀さんに、その先の丸太置き場まで案内していただきました。
堀さんたちに「一本いかがですか?」と、持って移動するように勧められたのですが、傾斜がきつい部分もあって私には無理。自分の体を運び挙げるだけで精一杯でした。
きれいに整備された丸太の階段に、たまに丸太が崩壊して段がなくなっている箇所もありました。このような箇所は、また運んでもらった丸太を使って補修していくそうです。
丸太にマジックで日付けや名前をサインしてあります。運んでくださったボランティアの皆さんが記念に書き込んでおくそうです。
地元能登川の居酒屋の店長さんが、富士山の登山をする前にトレーニングを兼ねて猪子山に登り、丸太を運んでくれたのだとか。地元の方による地域貢献の場ともなっているのがわかります。
こちらは、女性のボランティアの方。何本もサインしてあります。堀さんも「まだお会いしたことはないのですが、この方のお名前だけは丸太で何本もお目にかかっています」とのことでした。
かなり急な坂を登ったところに、目印の赤い布がありました。丸太はここまで運ぶのです。私は何も持ってないのに、かなり息が上がりました。
堀さんが運んだ丸太には、Hと書かれています。
この道をそのまま歩いて行くと、地獄越えです。
「地獄越えから繖山、観音正寺、そして五個荘側へ下山、五個荘山本の貴船神社横から再び登り、箕作山、赤神山を経て太郎坊宮に出て、延命寺公園側から下山し、近江鉄道八日市駅から帰る、東近江市で最長のトレッキングコースとしてつなげたいと考えています」と堀さん。
地獄越えの名前の由来を尋ねると、堀さんは「少し下ったところが地獄越えなので、そんなにきつくないです。なんで地獄なのかわかりません」とのことでしたが、別のメンバーの方が「信長の時代にたくさんの女性が殺されたところだかららしい。すぐ下にあるお寺で供養されていますよ」と教えてくれました。
地獄越えのすぐ近くには、信長の居城、安土城があります。観音寺山は佐々木六角氏の居城であり、山自体がまるで要塞のように城があちこちにちりばめられていたそうです。歴史的にも何かがありそうな土地ですね。
丸太を置いた堀さんに、来た道を折り返して北向観音まで案内してもらいました。
こちらはちょうどタカの渡りのシーズンとあって、多くの野鳥ファンが望遠レンズのついたカメラを抱えて空を観察していました。
琵琶湖と東近江市の平野が見渡せる、すばらしい眺めです。
琵琶湖の手前の青い池は、伊庭内湖、城があった八幡山、沖島、向こう岸の比良山地などもクッキリ見えています。
琵琶湖の北湖まで見える雄大なパノラマ。この眺めを見るためだけにでも、猪子山から地獄越えのトレッキングコースは歩く価値がありますね。
ここからは、作業を続ける堀さんとお別れして能登川駅から電車で帰りました。
丸太運びのボランティアと、会のメンバーは常時募集中です。特に丸太運びは、予約不要、どなたでもいつでもできます!
手入れのゆきとどいた山道は、自然に囲まれ爽快でした。子どもから大人まで、自然とふれあうにはとてもよいフィールドです。フィールドを利用する方々の力も加わることと、夏原グラントからの助成金を加えることにより、整備活動を継続されています。その創意工夫が素晴らしいと感じました。
猪子山・地獄越え周辺の山道を良くする会の皆さん、体に気をつけて長く活動を続けてください。