希少種の保全 ヤマトサンショウウオの生息環境保全 /特定非営利活動法人亀岡人と自然のネットワーク
事業の概要
京都府亀岡市内の池で、希少生物であるヤマトサンショウウウオの生息が確認されましたが、開発のために一か所の生息地が消滅してしまいました。野外カメラ設置や地元への周知協力要請、現地調査、専門家のアドバイスを受けるなどして、生息状況の確認と環境保全を行います。
2020年8月1日土曜日、亀岡市交流会館で開催された、地球環境子ども村主催の「亀岡生き物大学特別講座 昆虫教室」にお邪魔しました。
「亀岡生き物大学特別講座 昆虫教室」は、自然豊かな山の中にある亀岡市交流会館で毎年開催されているもので、昨年は親子連れの参加者が総勢100名を超えるほどの人気のあるイベントだそうです。しかし、今年は新型コロナウイルス感染予防のため、12人に絞ったとのこと。
窓を開け放した教室に、参加者は十分に間隔を開けて座り、いよいよ講座の始まりです。まずは、NPO法人亀岡人と自然のネットワークの会員であり、亀岡ふるさと研究室として自然体験活動アドバイザーや学術アドバイザー、京都府文化財保護指導委員でもある仲田丞治さんが「昆虫クイズ」を進めていきます。
画像を見ながら、昆虫についての知識を尋ねられる三択クイズは、テンポがよく子どもたちもノリノリ! 手を挙げてマイクで答えを言いたくてたまらない様子です。
この教室は、地球環境子ども村と、亀岡人と自然のネットワークとが協力して行っている事業で夏原グラントの助成事業ではありません。しかし、クイズの後、亀岡人と自然のネットワークの宇野さんが講師となり、亀岡市内に生息する希少生物、ヤマトサンショウウオについての説明を行うコーナーがありました。
「サンショウウオは何の仲間?」
カエルとイモリのイラストから選びます。サンショウウオは両生類なのでカエルの仲間なんですね。形が似ているトカゲorヤモリは爬虫類なので仲間ではありません。
そんなクイズから始まり、現在は海にはすんでいないこと、市内には、オオサンショウウオ、ヒダサンショウウオ、ヤマトサンショウウオ3種類がすんでいることなど、とても身近なことをわかりやすく解説していきます。
これが、スライドのうちの1枚です。
かわいらしいサイズと姿なんですね。
そして、亀岡人と自然のネットワークでは、「食べにくる動物からまもること、どれくらいいるか知っておくこと、亀岡の人に知ってもらうこと」の3つでヤマトサンショウウオを守る活動を行っていることも、夏原グラントの助成も含めて紹介されました。
イラストのサンショウウオは「絶滅危惧種、つまり生き物の数や生活する場所が減ってきて、近い将来でいなくなってしまうかもしれないということ。僕ももうみんな会えないかもしれない。」と涙をこぼします。
宇野さんはお話の最後を「みんなへのお願い」として「今日知ったことを覚えておいてほしい。いろんな生き物がいることはすごいこと。もし生き物のいる場所が消えてしまうことになったらどう思うのか考えてみてほしい。」それに「自分たちでできることは何かな?考えてみてください。」と締めくくりました。
10分程度ではありましたが、基本的なことを子どもにもわかりやすい言葉とイラストを使って説明しているので、子どもたちも最後まで静かに聞き、自分たちの住む地域に、こんな両生類がいるんだということがわかったようです。
教室でのお話が終わったら、実物の昆虫を触らせてもらって、その後は外に出て昆虫をつかまえます。
会場の裏山が森林公園なので、みんなで出かけました。
しかし、昼下がりの時間帯ですから、夜行性のクワガタムシなどは身を潜めています。
そこで、仲田さんは事前にトラップを仕掛けておいたのです。クワガタムシなどが大好きなコナラの幹に湿らせた段ボールをヒモで巻いておきました。
こんな簡単なものが、トラップ?
と半信半疑で見ていると、外した段ボールから、実際に虫が出てきました。主にムカデが多かったですが、コクワガタも少し出てきて、子どもたちは大興奮していました。
ただし、捕まえた虫は観察が済んだら森に返すお約束。
子どもたちは名残惜しそうでした。
このトラップ作業を担当されているのも、亀岡人と自然のネットワークの皆さんです。
以上で「亀岡生き物大学特別講座 昆虫教室」が終了し解散です。さあ、いよいよ亀岡人と自然のネットワークとしての活動が開始です。
亀岡市内で発見されたヤマトサンショウウオの生息地で、サンショウウオを食べてしまう動物についてカメラで観察する実態調査を行っているのです。
亀岡市交流会館から、ヤマトサンショウウオの生息地の近くまで車で連れていってもらいました。
山道を歩いていくと、水たまりのような池が出現しました。水深が浅いため、ここは植物も含めて生き物が豊かなところだそうです。
トンボもたくさん飛び回っています。
足元はいつしか湿地になり、雑草に覆われた地面を歩く度に水音がします。
もう、ヤマトサンショウウオは卵からかえって幼生になってしまっています。パッと見たところ、特に何もいるようには思えません。
しかし、宇野さんが網ですくってみると……。
いました!ヤマトサンショウウオの幼生です
まだエラが体の外に出ている状態で、まるでウーパールーパーのようにかわいい姿でした。
成長するとこのエラは体内に収まります。
かわいいからと言って、素手で触ると両生類は人間の体温からのダメージを受けるので、触らないよう注意しましょう。(京都府の許可を受けて調査しています。)
アカハライモリの幼生とオタマジャクシもいました。黒いのがイモリです。
宇野さんは、私たちが写真を撮ったらすぐに池に戻していました。
その後、宇野さんは水たまりの周辺に仕掛けてある、カメラのデータを回収。
「カメラのデータから、アライグマ、イノシシがよく来ているのがわかります。アライグマはヤマトサンショウウオを食べている可能性があります。」とのこと。
「亀岡市内にはもう一か所、ヤマトサンショウウオの生息地が見つかっていたのですが、その水場は開発によって消滅してしまいました。もう少し早くわかっていたら、何とか水場だけでも残せたのではないかと残念です。」と宇野さん。
仲田さんによると、大昔(約258万年前から約1万年前までの期間、あるいはそれ以前から)、亀岡盆地は池で、池の底だった土壌は数百メートルもの粘土質になったそうです。その時代からサンショウウオたちは池などの水場に取り残されたのだろうとのこと。数千万年前からほとんど進化しないで、今とほとんど同じ姿形で生きてきたオオサンショウウオや小さな身体のサンショウウオたち。これからも変わらず亀岡で生き続けてほしいですね。亀岡人と自然のネットワークの皆さんの息の長い活動に期待しています。