ミツバチ花いっぱいプロジェクト /オランダ堰堤および周辺の環境を守る会
事業の概要
滋賀県大津市の草津川上流には、歴史的土木遺産であるオランダ堰堤があり、その周辺は市民にとって水に親しむ憩いの場となっています。この事業では花や木を植え、環境を守る活動を続けながら、ミツバチの巣箱を設置して将来的にはハチミツを名産品として活動資金を得ることや、この活動を継続していくため他地域からの方の参加を促していきたいと考えています。

2021年11月28日日曜日の午前中、滋賀県大津市上桐生(かみきりゅう)に、オランダ堰堤(えんてい)および周辺の環境を守る会の皆さんの活動を訪問しました。
こちらは大津市の湖南アルプスのふもと、草津川の源流地域です。山の向こうは栗東市で、金勝山から歩いてこちらに通り抜けるトレッキングルートもあり、土日には車やバスを利用して訪れるハイカーや登山者が絶えません。
また、近江湖南アルプスTRAILRUNRACE in桐生という、風光明媚な山道を走り抜ける大会を開催するフィールドでもあります。
花崗岩の奇岩がごろごろしている景色が見渡せる山道は、遊歩道も整備され、清らかな草津川の流れで水遊びが楽しめる場所であり、また桐生に民営キャンプ場もあるため、春から夏にかけての観光客の数はかなりのものだそうです。
この草津川の上流には、明治時代にオランダ人のデ・レーケさんが指導して造られたというオランダ堰堤があります。
活動場所から少し上流の、オランダ堰堤まで、オランダ堰堤および周辺の環境を守る会 会員の西野さんに案内していただきました。山登りやキャンプが好きで、湖南アルプスをよく訪れるうち、この会を知り活動に参加しているそうです。
周辺の山歩きのための「近江湖南アルプス自然休養林総合案内版」がありました。
ここは青少年のためのキャンプ場で、市に予約をしなければ使えないところですが、そんな規則を知らない大勢のキャンパーがやってきて勝手に焚火したりバーベキューしたりして、ゴミを放置して帰るのだそうです。
オランダとの友好の証の子どもの銅像と、砂防工事の象徴として天秤棒のモニュメントもあります。
春から夏にかけては、西野さんたち、オランダ堰堤および周辺の環境を守る会の皆さんがゴミを集めて、大津市のごみ処理場に持って行ってもらうそうです。
「焼き網がすごい数捨てられていますよ。みんな車に持って入るとにおいがするからでしょうね。」
ゴミのお話を聞いていると悲しくなります。
少し歩くと、オランダ堰堤が見えてきました。このダムは百年経った今も現役です。
オランダ堰堤および周辺の環境を守る会の活動は、年2回の登山道の整備もありますが、大半がゴミ回収や清掃だそうです。もし、会の活動がなかったら、この美しい自然にもゴミが山積みになったままのはずです。地元の環境を守るため、地道ですがとても大切な活動を続けておられることがわかりました。
これはオランダ堰堤を指導したオランダ人の技師デ・レーケさんの胸像です。
元々、このあたりの山には良質のヒノキが生えていて、奈良時代から平安時代にかけて、奈良や京都での寺社仏閣のために伐り出されました。伐りだされた後の山は、たびたび洪水を引き起こしてしまったので、明治になって政府が淀川水系の砂防工事に着手し、このオランダ堰堤もその一環として明治22年に築かれたものだとか。我が国最古のものと言われているそうです。
さて、オランダ堰堤および周辺の環境を守る会の活動に戻りましょう。
朝、次々と車で会員の皆さんが集まってきました。
会長の成子邦夫さん(写真中央)からごあいさつ、事務局長の山元孝文さん(写真右)からは、今日の作業についての説明がありました。
花を咲かせる植物を川沿いに植えてハチミツを集めよう、という計画だったのですが、芝桜をベルト状に植えたところ、すぐにシカが来て花を食べ、苗を引き抜いてしまったそうです。残っているのは、このネットをかぶせた部分のみとなっています。
そこで、今回は造園会社の社長、隅田さんに講師となっていただき、ハナモモの苗を植えることになったそうです。隅田さんは苗木の堀り上げ方、移植の仕方をていねいに指導されました。大切に麻布でくるんで、麻縄でしばって移動させます。
草津川の向こう岸に移動して、移植作業開始です。
河川敷よりも一段上に、地域の土地があり、その部分に植えています。皆さん一斉に移植して、あっという間にハナモモの並木ができました。
他に、ネコヤナギの枝も挿し木にしてみよう、と枝を何本も植えました。
心配なのはシカの食害です。
隅田さんの指導では、ハナモモは竹で囲いをして、それにネットをできるだけ早くかぶせたほうがよい、とのこと。
うまく育って、たくさんハチミツが集まるといいですね。
会長の成子さんは「2017年に、地元自治会がこの河川敷の雑木林や河原をきれいに浚渫するなどされました。その時に、この石垣の道が出てきました。そんな道があることなど、わからないくらい、樹木が生い茂っていたんですよ。
一度きれいになった、オランダ堰堤やこの川の周辺を二度と荒廃させない、という思いで私たちはがんばっています。
河川敷を花でいっぱいにして、更にミツバチで蜜を集め名産品に育てて活動資金をつくるのが目標です」と、今後の計画を語ってくださいました。
オランダ堰堤および周辺の環境を守る会の皆さん、これからも美しい湖南アルプスの山のふもとで、美しい自然環境を守る活動を長く続けてくださるよう、期待しています。