下阪本クリーン作戦&シジミ放流 /下阪本子どもコミュニティー
事業の概要
滋賀県大津市立日吉中学校では、8年前の「日吉子どもサミット」で生徒から「琵琶湖の環境が悪化したために、昔は食べられていたというシジミを現在では食べることができない。下坂本の浜でもシジミが獲れるような環境づくりをお願いできないか」という声があがりました。その翌年から、下坂本クリーン作戦として、地域のゴミ拾いなど行ってきました。地域の小学校や中学校の子どもたちと、大人が協力して地域の環境保全を行います。
2021年12月4日の土曜日、滋賀県大津市の坂本城址の近くのなぎさ公園に、下阪本子どもコミュニティーの「下阪本クリーン作戦&シジミ放流」を見学に伺いました。
ここは戦国武将、明智光秀の居城であった坂本城の石垣が湖の中に残る場所です。今年、琵琶湖の水位が60センチくらい低下したために、琵琶湖の下に隠れていた石垣が現れたというのでニュースにもなっています。
そんな歴史のある地域で、下阪本クリーン作戦は38年続けてきた活動だそうです。
8時半からの開会式に集まってきたのは、小中学生、幼稚園児、地域の高齢の方、子どものお父さんお母さん、先生方など、幅広い世代にわたります。司会は大津市立日吉中学校の生徒会の生徒。地域の方からの挨拶があり、司会役の中学生が今回のスケジュールやゴミの集め方などを説明しました。
いよいよクリーン作戦の開始です。
準備されたたくさんの熊手や火ばさみ、ゴミ袋、軍手などが配られ、みんな思い思いの場所に散ってゴミを集め始めました。前もって大人が刈っておいた雑草を集めてゴミ袋に詰め込みます。
子どもたちは、協力しながら清掃活動をしていました。みんな友達と一緒に楽しそうに取り組んでいます。
水位の下がった湖岸でも、ゴミ拾い。対岸には近江富士と呼ばれる三上山が見えました。
こちらではゴミの分別作業をされています。草に隠れて、ポイ捨てゴミもあるようです。
ゴミの集積場には、たくさんのゴミ袋が積まれていきました。こちらはほとんどが草や枯れ葉のようです。
公園内がずいぶんきれいになった頃、クリーン作戦は終了し、今度はシジミの放流セレモニーの会場に移動するよう合図がありました。ゴミを拾いながらの移動です。
地元の神社である日吉大社の祭礼が行われる、舟渡御を通って、セレモニー会場へ歩いていきました。晴天にも恵まれて、本当に気持ちのよい景色です。
シジミ放流の会場は、もう一つの公園で行っていたクリーン作戦の参加者が合流し、大人数となりました。
ここで再び日吉中学校の生徒会役員による司会で、大津市長さんからのあいさつ。
「2023年G7国際会議が日本で開催されるので、環境部会を大津に誘致したいと考えています。皆さんの活動を世界中の人に知ってもらいたいです」。
その後、下阪本小学校の子どもたちによる環境宣言が行われました。
「今日のクリーン作戦では、公園はきれいになりましたが、琵琶湖の中ではゴミが発見されています。」
「琵琶湖の固有種が減っているそうです。」
「私たちができることは何かを真剣に考えて、小さなことを積み重ねることが大切です。」
「私たちの下阪本を大切にしましょう!」
と、5人が交代で力強く宣言しました。
湖岸には、こんなにまるまるしたシジミが、いくつものバケツに入れられて置いてありました。もう一か所、別の会場である新唐崎公園でも、同じ量のシジミを放流することになっています。
下阪本子どもコミュニティー事務局長の真嶋さんは「このシジミは大津市内の堅田漁協から購入しています。この近辺ではなかなか手に入らず、長浜市の方まで行って、やっととれる状態です。今日の放流では全部で80キロのシジミを放流します。
シジミが生息できる環境を醸成するため、堅田漁港に委託して、年に3回、マンガンという鉄の道具で湖底を耕し、水草やヘドロなどを回収してもらっています。それでも、台風などが一回くるだけで、シジミがどこかえ流れていってしまいます。
県や国の機関にも、以前から何度も通って相談していますが、ひとつでも条件が変わってくるとうまくいきません。なかなかシジミの復活は難しいです。」とお話してくださいました。
シジミの放流は、例年3、4メートル先に投げるのですが、今年は水位が下がっているので、遠くへ、との指示。それのため、子どもたちは本気でシジミを投げていました。みんなとても楽しそうです。
シジミ放流が終わると、閉会式です。
日吉中学校の校長先生からのあいさつがあり、その後、大津市市議会議員の方もお話されました。
「私は、このクリーン作戦の最初から関わってきました。みなさん信じられないでしょうが、始めた当時のここら(湖岸や公園)は、ゴミがいっぱいでした。琵琶湖の水もにおっていました。
それでも、年に1回クリーン作戦を続けているうち、こんなにきれいになったのです。すごいことです!みなさんがきれいにしようという気持ちが、とても大切なのではないかと思います。今日のクリーン作戦も、地元の人が前もって何度か草刈りをしてくれています。
これからも皆さん、がんばってください!」
実際に38年前から参加されている方のお話を聞くことで、毎年、地域の皆さんが積み重ねてきて今の琵琶湖があるのだ、と子どもたちも感じることができますね。
最後に、真嶋さんのあいさつです。
「以前、琵琶湖は1メートルしか見えなかったが、今では5メートルまで見えるようになりました。
また、シジミの放流は、日吉サミットで『湖岸はヘドロがいっぱいで、夏には悪臭が漂っている。昔のようにシジミがとれるような環境づくりをお願いできないか』と子どもから言われたので、8年前から始めました。シジミを放流しても、育つ環境が必要です。そこで漁船で湖底を耕しています。ヘドロの除去も必要です。
これらの漁船やシジミにはお金が必要です。いつも地元の会社などに寄付をお願いしていますが、今回は、平和堂財団の助成金もいただいて実施しました。」と助成金の説明もしてくださいました。
これでクリーン作戦&シジミ放流は終了し、解散となりました。
関係者の皆さんは、集めたゴミや清掃道具の片付け、国道の横断歩道で子どもを誘導するなど、まだまだ作業をされていました。
今回、予想よりも多くの参加者があったとのことで、スタッフや先生も含めると全部で500人は超えていたのではないでしょうか。最後まで無事に実施するために、準備の時間や打ち合わせも相当必要だったと思います。皆さん、本当にお疲れさまでした。
真嶋さんからもらった資料の中の日吉中学校生徒の作文には、こんな一文がありました。「(前略)クリーン作戦終了後、地域の方々とシジミの放流も行った。放流の際、地域のおじさんが『去年、初めてシジミが生息していた。』と嬉しそうに話していた。シジミが生息できるという状況は、琵琶湖の観光が、昔のように再び、よくなってきている証拠だと思う。地域の方が行ってきた全ての活動の成果が、あらわれ、私も、その一因として琵琶湖のために活動できたと思うと、すごく嬉しかった。
なによりも、私は地域の人達の、あの笑顔を忘れないだろう。(後略)」(2019年度生徒作文 滋賀県中学生 水の作文コンクール優秀賞)
今日参加した小中学生の親世代の皆さんの中には、小中学生時代にクリーン作戦に参加した、という方も多いはず。こうして世代を超えて続けられる活動が、地元を大切に思う心を育んでいるのでしょう。下阪本子どもコミュニティーの皆さん、これからも子どもたちとともに地域と琵琶湖を守る活動を続けてください。