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小塩山カタクリ保護地への猪侵入防止対策 /西山自然保護ネットワーク

事業の概要

1999年に本団体を結成してから継続して、京都市西南部に位置する小塩山(おしおやま)においてカタクリとギフチョウの保護活動をしています。観察路を整備し、常緑樹の伐採やコナラ植林などの保全活動の甲斐があり、群生したカタクリが毎年4月には開花し、またギフチョウの生息地ともなっています。しかし、近年は獣害のためカタクリとギフチョウが減少したため、防獣ネットを張り巡らせました。そのネットをくぐってイノシシが入り込み、1年間でカタクリが4分の1も減少したことがわかったので、今回の助成事業ではイノシシ専門の柵を購入し、防獣ネットを補強し、センサーカメラによるイノシシの実態の把握と対策の実施、また忌避装置や忌避剤の効果を検証するなど、イノシシに特化して対策を講じていく予定です。

西山自然保護ネットワークの活動のようす画像

2021年6月25日金曜日の午前中、京都市西京区大原野南春日町にある小塩山を尋ねました。
夏原グラント2021年度 助成事業「小塩山カタクリ保護地へのイノシシ侵入防止対策」を実施している、西山自然保護ネットワークの活動を見学するためです。この日は、たくさんのメンバーが集まって植物の調査を行うということでした。
 
西山自然保護ネットワークでは、主にこの小塩山に群生するカタクリとギフチョウの保護を行っています。獣害、主にシカによってカタクリや他の草花が食べられてしまうため、カタクリの群生地を防獣ネットでぐるりと囲み、花の季節には開放してガイドを行っています。
 
夏原グラントで助成を受けるのは、2019年度に続いて2度めです。その時の採択事業活動レポートも、読んでみてください。
小塩山のコナラ林の若返りを進め、カタクリ・ギフチョウ保全と薪資源の活用を図る
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像  
一般の人は侵入禁止の場所に、拠点があり、カタクリの保全に必要な道具などが保管されています。そこで朝のミーティングを行い、体操とストレッチをして体をほぐしたら、それぞれのフィールドに出発しました。
 
総勢400名という団体のうち、それぞれの興味や作業分野によりいくつかのグループがあり、今年度の応募は、イノシシ対策チームの皆さんです。当初はシカだけを防げばよかった防獣ネットですが、ここ数年はイノシシの被害も増加してきたというのです。シカはネットの高さを維持することで、飛び越えられないようにしますが、イノシシはネットを固定するペグを持ち上げ、下の地面を掘り返してネット内部に侵入します。
 
そこで、掘れないように金属メッシュを地中に打ち込むのが、イノシシ対策専用の「モグレーヌ」という柵です。今年度はこの「モグレーヌ」と、侵入状況を把握するための動物用カメラが助成金の用途の中心となっています。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
今日は、イノシシ対策チームの、中河さん、岡島さん、坂梨さん、中川さんに、谷を囲んだ防獣ネットの周囲の見回りに、案内してもらいました。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
  
ネットの下からイノシシが潜り込んだ形跡があると、モグレーヌを打ち込み封鎖します。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
ちょっと見えにくいですが、モグレーヌとネットが結束バンドでくくってあります。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
  
また、このペットボトルには唐辛子のエキスが入っていて、イノシシが侵入しようとネットを持ち上げるとエキスがこぼれる仕組みだそうです。

西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
このペットボトルは重石(鳴子のトリガ―)です。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
ステンレスのトレーにゴムを巻いた金具が取り付けてあり、透明の釣り糸に前足をひっかけると、重石のペットボトルが倒れ、盛大にカンカンカンカン!という音が出る鳴子です。

「動物との知恵比べです。こういうのを仕掛けておいて、センサーカメラで待ち受けているんです。ちゃんと効果があるか確かめたいので。実際に、録画を見ると熊はびっくりして逃げていきましたよ。でも、イノシシは慎重で、夜中でも釣り糸には触れません」と中川さんは苦笑いしながら、実際に音を出してくれました。まるで爆竹が爆発したかのように、うるさい音でした。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
閉鎖中の入り口。そのそばにも、センサーカメラが仕掛けてあります。

西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
内部には乾電池と録画データを保存した、SDカードが入っています。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像  
ちゃんと動物が映るように、角度を試しているところです。動画を再生して一部見せてもらいましたが、シカやイノシシ、クマなど、ちゃんとネットのそばにやってきている姿をとらえています。
こういうセンサーカメラの購入にも助成金が役に立っているのです。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
谷を囲んだネット沿いに歩いていると、急なガケのようなところもあります。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
そういう箇所では、立ち木や張ってあるロープを手掛かりにして降りるのですが、落ち葉が積み重なっていて足元が滑るため、スリルに満ちたコースでした。登山が得意な坂梨さんがロープを貸してくれましたが、慣れない私には難しかったです。
 
中山さんは「ここは2008年に谷の周囲ぐるりとネットを張ったんですが、まさか自分が10年後にイノシシと戦うようになるとは思いませんでしたよ! 今やイノシシ対策グループのリーダーですからね。このネットを張る時は、男も女も、みんな滑って転がり落ちながらも作業しました。でも、今や高齢化が進んでしまって、危なくなってねえ……。」とも。本当に皆さん、よくぞ、この険しい道を回ってネットの補修を継続されているものです。継続して山仕事をするため、身体能力が維持されているのかもしれませんね。
 
別の谷では、イノシシがエンレイソウやウバユリなどを目的にネット内部に侵入し、やりたい放題掘り返したために、大雨の時に小さな洪水が発生し、せっかく保全してきたカタクリも根が流されてしまったそうです。そこでイノシシ対策にもっと力を入れよう、と夏原グラントに応募したのですが、今年に入ってからは意外にもイノシシの姿が減って被害もないというのです。
 
中川さんは「今年に入り周辺地域で豚熱(CSF)に感染したイノシシが数例報告されたのですが、その後感染が拡がっているかは不明です。予定よりも少ないカメラの投入にして、しばらく様子を見ることにしています。」と説明されました。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
イノシシ対策チームの、中河さん(会の共同代表)、岡島さん、坂梨さん、中川さん。後ろの緑色は、ネットの内部でシカから守られている部分です。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
こちらは、逆方向を見たところ。ネットの外には、シカが食べるために全く草が生えていません。夏だというのに荒涼とした景色です。この谷を下りていくと、隣の亀岡市に出るそうです。この道を登ってくるイノシシたちをセンサーカメラで迎えうつ、ということでカメラをセットしました。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
ネットの内部に入ると、こんなに豊かにササなどが茂っています。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
これは、ギフチョウが卵を産むミヤコアオイです。刈ってしまわないよう保護されています。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
ミヤコアオイの葉の模様には様々な変化があります。
ギフチョウがすくすく育ちますように。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
一巡してから拠点に帰りました。お昼前に、メンバーの皆さんがとっておきの差し入れを出してくださいました。大原野産のきゅうりの一夜漬けに、冷たいシソジュース。ほかにもたくさんいただき、ニコニコです。

西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
 
午前中で下山する私を、皆さんが見送ってくださいました。
「この谷のカタクリを見に、毎年春になると千人以上もの人が来るんですよ。来年の春は、カタクリの花を見に来てください」と、お誘いされました。西山自然保護ネットワークの皆さんが、花のガイドをされるのです。
 
西山自然保護ネットワークの活動のようす画像 
  
はるかに京都の市街地が見渡せる小塩山。
カタクリが群生して咲く夢のような場所は、西山自然保護ネットワークの皆さんが長年汗水流して作り上げ、維持されています。
どうぞ体調には気を付けて、動物たちとの知恵比べに勝ち、長く活動を続けてくださいますように。夏原グラントは応援しています。

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