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ボタン科ボタン属ヤマシャクヤクの保全 /雲ケ畑・足谷 人と自然の会

事業の概要

ベニバナヤマシャクヤクは京都市により希少野生生物に指定されており、雲ケ畑・足谷 人と自然の会では保全委託団体として観察・調査・保全活動に取り組んできました。一方で足谷地区に自生するヤマシャクヤクはその対象とされてきませんでした。近年では獣害や環境変化によりヤマシャクヤクは育成数が減少してきているため増加をめざします。そのため、自生地の環境保全、管理・調査、市民への観賞の機会の提供を行います。

雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像

2022年5月31日(火)、京都市北区雲ケ畑に、雲ケ畑・足谷 人と自然の会の活動を訪問しました。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 もくもくバス終点  
 
地下鉄北大路駅の近くのバス停から一日に二往復のもくもくバスに乗り、終点の雲ケ畑 岩屋橋で下車し、そのまま徒歩で10分くらい。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 ベニバナヤマシャクヤクの看板  
そこに、「雲ケ畑ベニバナヤマシャクヤク生育地保全地区」の看板がありました。
説明によると、京都府のレッドデータブックに絶滅寸前種として掲載されている、ベニバナヤマシャクヤクの育成地保全地区に指定されているそうです。
採取・破損が禁止され、1万円から50万円までの罰金の規則もあります。
このベニバナヤマシャクヤクの保全活動を委託されているのが、雲ケ畑・足谷 人と自然の会なのです。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 拠点の山小屋 
 
看板のそばの橋を渡ると、すぐに雲ケ畑・足谷 人と自然の会の拠点の山小屋があります。
 
小屋の周囲には防獣ネットを張り巡らせた畑のような場所がありました。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 防獣ネットで囲まれた畑 
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 運営委員長の西野護さんの説明では
「ここでは、山の中で自生している、絶滅危惧種や準絶滅危惧種を移植し、シカに食べられて地域内で絶滅してしまわないよう、保護・保全しています。」とのことでした。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 防獣ネットの中の希少植物 
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 防獣ネットの中の希少植物2 

雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 足谷を登っていく沢沿いの道 
  
その後「まずは、フィールドになっている足谷を見てください」と、西野さんと4名のメンバーが谷沿いの道を登っていきました。
 
歩く道すがら、西野さんは指さしながら「これも京都府の絶滅危惧種、これは準絶滅危惧種……」と説明されます。
 
足谷を歩いていると、希少な植物が当たり前に生えているので驚かされました。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 キブネダイオウの畑 
 
しばらく行くと、タデ科の植物、キブネダイオウ(貴船大黄)の苗を植えてある畑があり、シカ除けの金網でしっかり囲んでありました。
 
「キブネダイオウは、シカの食害などが原因で京都府の絶滅寸前種に指定されています。更に同属の外来種と交雑が進んでいるので、見ただけでは判定できません。判明しているものを実生から植物園で育て、DNAを調べて、純粋なキブネダイオウだと苗だけをここに植え戻しています。
 
行政、植物園、地元の人、みんなが合意した上で移植して育てています。」と西野さん。関係者間でしっかり信頼関係が築かれ、希少植物の保全に協力体制ができているのがわかります。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 足谷の上流のようす。ネットの中にクリンソウが咲いている 
  
それから車で足谷の上の方まで連れていってもらいました。
 
急な谷が終わり、なだらかな部分には、ベニバナヤマシャクヤクや、クリンソウが咲いていました。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 防獣ネットで守られたベニバナヤマシャクヤクの花 
 
ベニバナヤマシャクヤクは、ヤマシャクヤクと同じボタン科ボタン属の植物ですが、開花時期も花も違っています。
 
今年度の夏原グラントで助成を受けているのは、ヤマシャクヤクの保全です。
ヤマシャクヤクの花は、ベニバナヤマシャクヤクより約一か月早く、既に散っていますが、ベニバナヤマシャクヤクは、盛りは過ぎたものの、まだ少し花が残っていました。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 防獣ネットで守られたベニバナヤマシャクヤクの花 
 
この状態が開花だそうで、ちょうど上がった雨の粒がお日様にキラキラ輝いて、とてもかわいい花でした。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 クリンソウの花の群れ 
 
クリンソウも流れの周囲に咲いていて、ネットの中ではありますが、まさにお花畑でした。
 
5月28日には、ベニバナヤマシャクヤクの花の観察会も開催され、57名の方が訪れたそうです。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 防獣ネットで守られた区域の中 
 
山道のあちらこちらにネットが張られ、シカの食害を防いでいます。
ネットの中には、さまざまな希少種が守られているのです。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 ヤマイバラの花 
 
これは木の上のほうで花を咲かせている、ヤマイバラです。
 
バラ科で、シンプルな白い花びらが咲き、満開を過ぎると風に花びらが散る、その様は桜にも負けないほど美しいそう。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 軽トラで運ばれた防獣ネットの束やネット用のポール 
 
霧雨も止み、日が差してきたので、軽トラに資材を積んで、新たなネットを張りに出発。全員がヘルメットを着用しています。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 防獣ネットの束を4人がかりで運ぶ 
 
せせらぎを超えて、ネットを4人がかりで運んでいきます。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 ネットを持って急傾斜を登る 
 
急傾斜のところには、手作りの階段が設置されていました。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 ネットを張る 
  
ネットを張る前に、ロープの絡まりをほどくのが一仕事だそう。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 急斜面での作業 
 
私もそばまで登ってみました。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 傾斜地で作業中 
 
シカやカモシカなら余裕で駆け上れるのでしょうが、急傾斜なのでヒトにはとても難しいです。立っているだけで精一杯。作業をするのは至難の業だと感じました。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 ヤマシャクヤクの種 
 
金網で囲まれた中には、咲き終わったヤマシャクヤクがあり、種ができていました。
 
来年も、たくさんの花が咲きますように。
  
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 急傾斜地のネット用のポール 
 
この写真でどれくらいの傾斜か、伝わるでしょうか?まだネットを張っていない支柱です。
私は足手まといになるのですぐに降りました。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 ネットで守られた植物 
 
西野さんによると
「この足谷には、多種多様な植物が見られます。その理由は、この地域の複雑な地形や気象条件にあると思われます。
仲間内だけで種類が多いと言っているだけでなく、調べた専門家もそう感じるらしく、ホットスポットと呼ばれているようです。 
行政では、ベニバナヤマシャクヤク指定して保全に力を入れてきましたが、同じように危機的状態にあるヤマシャクヤクの保全には及んでいません。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 希少植物マツブサ 
 
そこでヤマシャクヤも保全しようと、今回の夏原グラントの助成を受けることにしたのです。
私たちは、この豊かな地域自体を守ることが、ここに自生する植物すべてを保全することにつながると思っています。
会長の島岡武司さんは山主でもあり、一緒に保全活動を行っています。
今年(2022年)4月には、『雲ケ畑 山野の植物を訪ねるガイドブック』を編集し、自費出版して販売し、雲ケ畑のファンを増やし仲間を募り、活動費用も作ろうとしています。
会員は昨年度は80余名ですが、もっと多くの方に一緒に活動してもらいたいです。」とのこと。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 会のメンバーが作成されたガイドブックの表紙と、見開き 
 
これがガイドブックです。
雲ケ畑・足谷 人と自然の会のメンバーを中心に執筆・編集されました。
 
内容は四季それぞれの花をカラー写真と解説で紹介。観察の時期の一覧、また、雲ケ畑の人々の暮らしと植物の関係、コケ類、シダ類の紹介もあり索引まで。充実した内容です。
  
雲ケ畑・足谷 人と自然の会の顧問である、京都大学名誉教授 渡辺弘之さんが寄稿された文章「刊行に寄せて」の中で、ベニバナヤマシャクヤクとヤマシャクヤクが最初は区別がついていなかったが、雲ケ畑・足谷 人と自然の会の皆さんの観察記録のおかげで、きちんと識別できるようになったことを紹介されています。
 
会の皆さんの観察と記録の積み重ねが結晶したものなのですね。
 
このガイドブックを持って、雲ケ畑・足谷 人と自然の会の自然観察会に参加すると、数倍楽しめることでしょう。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 山小屋のベニヤマシャクヤクのステンドグラスステンドグラス  
こちらは会の拠点である手作りの山小屋です。ここに会員の皆さんが協力して作成したという、ベニバナヤマシャクヤクのステンドグラスが輝いていました。とても素敵な仕上がりです。
 
雲ケ畑・足谷 人と自然の会 活動のようす画像 会員の手作りの山小屋 
  
 
 
貴重な植物の宝庫である雲ケ畑・足谷。ここが気持ちのよい場所であるのは、雲ケ畑・足谷 人と自然の会の皆さんが2008年から続けている保全活動の賜物です。
 
これからも、この場所が命あふれる場所であり続けるよう、皆さんの活動を応援しています。
 
ガイドブック、観察会や入会など、会の情報はこちらからご確認いただけます。
▼雲ケ畑・足谷 人と自然の会


ガイドブックは1冊1,000円(送料別途)
観察会に参加した折に直接購入できるほか、メールで雲ケ畑・足谷 人と自然の会に注文もできます。
ashidaninokai☆gmail.com ※☆を半角アットマークに
※氏名・送り先・冊数を明記してメールを送ると、折り返し合計金額、送料、代金振込先等が送られてきます。

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