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吉田山の自然環境を保全・整備し人々が集い楽しめる里山に再生する事業 /吉田山の里山を再生する会

事業の概要

京都市の吉田神社のある吉田山は、古くから人々が集い、楽しめる里山でしたが、戦後は放置され、うっそうとした森林となっています。自然災害を防ぎ、防犯上も安全な里山とするため、月に一回、定例作業日を設けて間伐や剪定、下草刈りを行います。剪定した枝葉の一部は京都市動物園に飼料として提供し、残りはチップとして自然に戻し、間伐後の幹や太い枝は、山道の階段作りや薪ストーブの会が薪として利用しているので、ゴミを出していません。

吉田山の里山を再生する会 植林したら、年月日と木の種類を書いた札を付ける

2022年7月17日、吉田山の里山を再生する会が定例整備作業をされるとのことで訪問してきました。

吉田山は京都の里山でも市街地に近く、シンボル的な存在です。平安時代に文献に初出するなど、歴史的にも記録が残されています。しかし里山を利用することが少なくなってきた頃から放置されるようになり、鬱蒼した場となっていったそうです。暗く人が入らない里山は防犯・防災上の問題が多く、周辺の人たちが近づかない場所となりました。地元の人々が集い、安全で花鳥風月、四季折々を楽しめる里山に再生したいと活動を始めたのが吉田山の里山を再生する会です。約14haの放置された荒れた森林を、専門家のアドバイスを受けながら整備を進めています。
 
吉田山の里山を再生する会 朝のミーティングのようす 
 
まずは今日の作業について確認し、おおまかに役割を分担していきます。今日はアラカシを倒木し、その枝を切って京都市動物園に運ぶとのこと、そちらにも同行させていただくことにしています。あとは枝葉のチップ化と草刈り、剪定などが予定されています。
 
吉田山の里山を再生する会 一輪車に載せてある道具 
 
打合せの輪の中には、今日の作業で使う道具たちが並んでいました。
  
「道具と言ってもピンキリです。安価なものもありますが、作業の効率や安全性、耐久性などを考えると、少々値が張るけれども良質なものを助成金で購入できたのでありがたいです」と事務局長の辻村さん。丁寧に使われているのがよくわかる道具たち。威力を発揮しているのがよくわかります。
 
吉田山の里山を再生する会 チップ化 
 
打合せが終わると、作業が始まりました。前に刈った枝木をチップ化します。みるみるうちに粉砕されていきます。
 
吉田山の里山を再生する会 初めての人に教えるメンバー 
 
草刈りです。この日初めて参加したという方は、道具の使い方や切り込み方などを教えてもらっていました。丁寧に教えてもらって少しずつ覚えていくと、だんだんできることが増えていくのかもしれません。
 
吉田山の里山を再生する会 切り倒すアカシアに受け口を作る 
 
アカシアの間伐。倒す方向を決め、その方向にある木にワイヤーを張り、チェーンソーで切り口(受け口)を入れます。
 
吉田山の里山を再生する会 倒すためにロープを引っ張る皆さん 
 
ワイヤーが張られた側では、みんなで力をいれて引っ張ります。
 
吉田山の里山を再生する会 切り倒される木 
 
追い口を入れ始めると、木が音を立て始め、一気に倒れました。
 
あっという間の出来事でしたが何事もなくスムーズに作業が進むのは、みなさんの経験と技が結集しているからこそだと思います。「今日は林業関係の方と造園業の方が来られてます」とのこと。専門的知識と技を持った方の参加があってこそです。
 
吉田山の里山を再生する会 倒したアカシア 
 
この倒れたアカシアの枝木を切り離し、京都市動物園へ飼料として運びます。
 
吉田山の里山を再生する会 軽トラックに枝葉を切りそろえて積む 
 
長さを揃えながら軽トラに積んでいきます。
「たくさん持って行った方がいいかなと思って、最初はぎゅうぎゅうに押し込んで運んだんです。でも動物の餌としては、ふわっとして自然の形に近い方がいいらしいんです」とのことです。そうですね。食べる動物の気持ちにもならないといけないんだなあと思いました。
 
吉田山の里山を再生する会 動物園に到着したトラック 
   
京都市動物園につきました。バックヤードに軽トラを入れ、アカシアの枝木を下ろしていきます。
 
吉田山の里山を再生する会 京都動物園 副園長の和田さん 
  
副園長の和田さんにお話を伺いました。
「もともと動物たちの飼料は購入していたのですが、縁あって、吉田山の里山を再生する会が伐採した木をいただけることになりました。近くの木ですし、農薬も使われていないし、処分するはず物ということで無償で提供していただけるのでありがたいです」とのことでした。事務局長の辻村さんが、ホタルの定着で動物園の方とつながっていたことがきっかけだそうです。いろいろな活動をしていると思わぬ取り組みが生まれ、双方にとって望ましいことが増えるのだなあと感じました。
 
吉田山の里山を再生する会 草食動物の糞を使った肥料 
 
これは草食動物の糞を堆肥化したものです。これをもらってチップ堆肥の発効促進に利用しているそうです。このように吉田山と京都市動物園に循環の輪が回っているのですね。
 
吉田山の里山を再生する会 一休み 
 
戻ってみると、みなさん一休み中。炎天下の中、大事な時間です。今日の残りの時間に、どの作業を進めるか確認です。
 
あたりを見渡すと、親子連れで散歩に来ておられました。中には、虫取り網をもった就学前の子どもさんも。「ここを整備する前はこのようなことはなかったです。木を倒し、草を刈り、明るくなったからこそ、安心して近くの方も来られるようになったのだと思います」とのこと。会が目指してきたことが実現してきており、素晴らしいなあと思いました。
 
吉田山の里山を再生する会 今は光が当たり明るい園地 
   
このあたりも鬱蒼と木が生い茂って、とても暗くて近寄れない場所だったそうです。今は明るく日が差し込んでいますが、作業の積み重ねがあってこそです。  
 
「本当に明るくなってきて地域の方々も喜んでいます。作業に参加してくださる方も増えてきています」とのこと。地道に取り組んできた団体の活動が知られるようになってきたことに加え、2018年の台風で木が倒れたことも、ひとつのきっかけだったと話してくださいました。「台風の時、木が倒れましたが幸い民家側ではなく山側に倒れたので、大きな被害もなく本当によかったと思います。地元のみなさんにとっては、山側でよかったが、もし民家側に倒れたら大変なことになっていた、やはりちゃんと整備しないといけないんだという危機感につながったと思います」と話してくださいました。活動には参加できないけど、ということで使っていない作業用の備品を寄付いただいたこともあるそうです。
 
休憩が終わり、作業も終盤です。
下草刈り。
 
吉田山の里山を再生する会 作業中のメンバー 

倒したアカシアの幹を玉切りにします。
 
吉田山の里山を再生する会 アカシアの幹を玉切り 
  
この後、もう少し小さく切っていきましたが、今日はとりあえずここまでとのことでした。
 
会長の清瀬さんが、「ここで採った梅を梅酒で煮込んで作ったジャムです」と言って出してくださいました。クラッカーの上にのせて、お相伴に預かりました。梅酒の香りがふわっとしていて大人の味。季節ごとにいろいろな実をジャムにされているそうです。宝の山です。
 
吉田山の里山を再生する会 梅ジャムとクラッカー  
作業が終わった後の、ひとときです。
 
吉田山の里山を再生する会 ジャムを食べながら、作業後にほっと一息つく時間  
もともと吉田山には桜の木が多かったところ、山の荒廃が進んでくると同じくして桜も少なくなってきたそうです。そこで再生のひとつには桜の復活があがっていました。桜を復活させるにあたって、偶然の出来事がありました。1590年頃、戦国武将が吉田山の桜を丹後へ移植し、それが丹後で引き継がれているとのラジオ放送をメンバーが聞いたのです。その時、すぐに行って桜をもらい、接ぎ木の作業を始めたそうです。
桜の苗字を育てている場所に案内していただきました。
1本1本に丁寧に、接ぎ木をした日付と品種がかかれた札が付けられています。
 
吉田山の里山を再生する会 苗木畑  
吉田山の里山を守る会では毎年植樹祭を開催していますが、育てた苗をいつどこに移植したかを1本1本地図に落として記録しています。
 
吉田山の里山を再生する会 植樹記録 
 
植樹した苗にも、札。
  
吉田山の里山を再生する会 桜の幹に付けられた札 
  
きちんと出生を明らかにして記録をしていることは、長い目で見た保全活動に大きな財産だなあと思いました。
  
「吉田山が江戸時代に桜・松が美しい行楽地と詠われたような、市民にとっての憩いの緑地を再生していくことが目標です。そのためにも歴史や文化も踏まえた環境保全活動でなくてはならないと思っています」と会長の清瀬さん。今活動していることが、どのような歴史の流れの中にあり、今後の展望へとつなげていくのか。平安・江戸時代を経て、現在、そして50年・100年先を見据えたスケールが大きい構想に圧倒されました。
   
当日は、コロナ感染で中止となっていた祇園祭が3年ぶりに実施されるとのこと、「今日は参加者が少なめです。やはりみなさん祇園祭でいろいろと用事があるんでしょうね」と何人もの方が口にしておられました。京都のシンボルである「吉田山」「祇園祭」。いろいろな活動も、京都の歴史や文化とともに構想が練られているんだなあと思いました。
 
吉田山の里山を再生する会 皆さんで記念撮影 
 
*当日は、夏原グラントで協力いただいている、きょうとNPOセンターの方も取材に来られていました。その記事が、▼京都市民活動総合センターの情報共有ポータルサイトで公開されています。ぜひご覧ください。




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