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絶滅危惧種・希少種に指定されている野生植物の保護・保全活動 /海浜植物守りたい

事業の概要

琵琶湖周辺の砂地に生息する、ハマエンドウ、ハマゴウ、ハマヒルガオなど海浜植物の保全を行っています。ほかにも滋賀県レッドデータブックに記載されている植物の保護育成を行います。それらの植物の育成を阻害する要因(例えばアメリカネナシカズラのような外来植物など)を駆除します。

2023年5月26日午前中、彦根市新海浜(しんがいはま)の湖岸緑地帯で活動する海浜植物守りたいの定期保全活動にお邪魔しました。活動のメンバーは7名、中心になっているのはレイカディア大学びわこ環境学科の卒業生の方たちです。(レイカディア大学とは、県内に居住する60歳以上の方を対象とした地域活動・ボランティア活動の学び舎のこと)
彦根市新海浜の湖岸域「新海浜ハマゴウ・ハマエンドウ群落生育地保護区」を活動場所として、毎月第1火曜日と第3金曜日の月2回、希少種の保護・保全活動に取り組んでおられます。この日は、定期作業日ではなく、雨天の影響で再設定された活動日のため、4名で行われました。


 


 

代表の清田輝夫さんに伺うと、みなさんの活動は、レイカディア大学在学中から続き、2023年で7年目。当初は、2011年から活動されている地元の保全グループの方とともに作業されていましたが、高齢化などで徐々に機会が減り、別の日程で「海浜植物守りたい」として活動を続けているとのことでした。
活動に必要な備品類、燃料費などの消耗品を補うため、夏原グラントに挑戦。2021年度、2022年度と2年間夏原グラントファーストステップ助成を受け、今年度(2023年度)からは夏原グラント一般助成を受けています。


 

ロープで区切られた区画で作業を進められています。


 

保全されているのはハマエンドウ・ハマヒルガオ・ハマゴウの3種類の海浜植物です。本来は海辺に生息する植物なのですが、なぜか淡水の琵琶湖周辺にも数種類が生息しています。これは、世界的にも数少ない古代湖である琵琶湖の水が伊勢湾に向けて注いでいたころからの名残ともいわれています。
主な作業は、それぞれの海浜植物の生息環境保全です。この生息区域にも、ハマエンドウの隣には園芸種で広く繁茂を続けるツルニチニチソウが迫り、湖岸のハマゴウ・ハマヒルガオの周囲には、外来植物で各地に広く分布するコマツヨイグサが侵入しており、地面を這うように広がるハマエンドウ・ハマヒルガオなどは生息域を奪われてしまいそうです。それぞれの移入種を定期的な保全作業で除去する、地道な作業を続けておられました。


 

ハマエンドウの周囲にはツルニチニチソウが広がっています。


 

湖岸のハマゴウの隙間からコマツヨイグサを一つ一つ抜いていきます。

琵琶湖岸はちょうどハマヒルガオが満開でした。よく見ると湖岸に一直線に生えているハマヒルガオですが、これは増水時に風などの影響で湖岸の砂地が削り取られる「浜欠け」によるものだそうです。湖岸に広がる蔓のようなものは、ハマヒルガオの露出した地下茎だそうです。
海浜植物守りたいの活動の中では、毎回の定期活動時に3か所の定点観測をされています。数年の活動の間にも変化は大きく、以前はもっと広がっていたハマヒルガオが減退し、ハマゴウは勢いを増して広がっているとのことでした。


 


 


ハマヒルガオの地下茎が波に洗われて露出していました。

この春からは、ハマエンドウの生息を広げるため、結実を促す取り組みに力を入れておられるそうです。
新海浜では湖岸砂地より少し内陸の松林の中が主な生息域になっており、内陸部に取り残されたような環境になっていました。日頃、松葉を敷いたり、除草をしたり、乾燥しすぎないようにと保全作業に取り組まれているのですが、繁茂しているように見えるハマエンドウも地下茎が広がって増えた、クローンのような状態なのだそうです。新しい株を生むには、別の株から受粉し種ができることが必要です。新たな取り組みとして、近隣にプランターに植えのレンゲを置き、ミツバチ等による受粉に期待をしてきた、とのこと。「今日は豆がついてるかな、と楽しみにしてきた」とおっしゃるとおり、いくつかのハマエンドウには可愛らしいエンドウ豆状の鞘ができていました。


 


 

豆ができても、次の壁は発芽率の低さだそうで、硬い豆の殻をどうやって割り、発芽させるかが課題です。どのような取り組みができるかは琵琶湖博物館で海浜植物の研究が専門の大槻達郎さんに定期的に相談しながら、活動を検討されているとのことでした。「なるべく自然の状態であまり人の手を入れずに増えてもらうのが理想」と清田さん。結実の手ごたえを得ながら、次の目標を見据えておられました。


 

2週間に1度は現地での活動に通っておられるみなさんですが、それぞれに近江八幡や大津・草津方面などの遠隔地からのご参加でした。地道な活動をこれほど続けられてきた理由を伺うと、新海浜に来ると自然のふとした変化や琵琶湖、山並みなどの風景に癒されるから、とのこと。
保全に取り組む花々の周囲の環境にも気を配り、些細な変化や次の活動を共有しあい、次の目標を自然に設定されることで、活動の持続力を得ておられるようでした。

また地元の方にも参加してもらいながら作業ができたらなぁと、仲間が増えたらという思いをお持ちの清田さん。人手が増えた時の野望は?と伺うと「移入種の広い駆除と、近隣の生息地で手つかずの場所があるので、そこにも活動を広げられたら」と答えてくださいました。

周囲の自然環境も含めて楽しみながら作業されている皆さん。これからも長くご活動されることを期待しています。

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