森林環境保全と木材利用推進の普及啓発事業 /高取チェンソーCLUB
事業の概要
滋賀県犬上郡多賀町にある、高取山ふれあい公園を拠点としてチェーンソーを使ったアート活動を通じ、山や木について関心を持ってもらい、次世代へつなげていきたいと考えています。 公園を訪れる人に、定期的にデモンストレーションを見て、また10月には「森の感謝祭」イベントを開催し、香りを感じて木のよさや森林環境保全の大切さを説明し、理解を深めてもらいます。
2023年7月23日、日曜日の午後、滋賀県犬上郡多賀町の高取山ふれあい公園に出かけました。夏の間は毎週末、高取チェンソーCLUBの皆さんがここでチェンソーアートのデモンストレーションを行っているからです。
近江鉄道多賀大社前駅から車で十数分、緑豊かな公園に到着しました。自転車で登ってきた小学生の団体や、家族連れでにぎわっています。
ここにはスポーツができる芝広場、テントサイトやバンガローのあるキャンプ場、バーベキューサイト、交流室など、自然を楽しむことができる施設です。
そんな公園の入り口を過ぎて山を登って行ったところに、高取チェンソーCLUBの拠点があります。
活動に使う道具を保管する小屋、
薪割サイト
メンバーが交流するスペース
そして入り口で出迎えてくれたのは、かわいい手作りの「夏原グラント」のロゴマークでした。くるくるした瞳、木のぬくもりを感じる焼き板仕上げに感激です。
毎回、お昼は持ち寄りキャンプ飯とのことで、この日はなんと、手さばきマグロ。豪快なランチをご一緒してキャンプ気分を満喫できました。
ここでは木材を燃料用ペレットに加工するそうです。
ご飯を食べたら、また公園の受付へ戻り、高取チェンソーCLUBの作品を見せてもらいました。
芝広場入り口で車を止めているのは……
チェンソーアートの作品の青鬼さんでした。何とも言えない存在感があります。
更に芝広場の向こう側に見えてきたのは、立派なログハウスでした。丸太を組み、屋根も木の板で葺いてあります。
案内してくれた高取チェンソーCLUBの小森さんによると、キットなどではなく、プロのログビルダーと一緒に多賀町産の木を一から組み立てたものだそう。これまた巨大なフクロウがあたりをにらみつけて守っています。このログハウス作りは、木材と暮らす魅力の発信としてのものだそうです。
屋根の曲線がワイルドで、グッとくるものがありました。
「ここの施設のあちこちに、作品を飾っていますよ」と小森さん。
そう言われて見ると、受付にも高取チェンソーCLUBの作品が。雨ざらしになって、更に迫力が増しているようです。
そのうち、デモンストレーションの開始時間が近づいてきました。皆さんが手慣れた様子で、手早く準備を進めていました。
少し高くなったところがステージで、その手前には木っ端が飛ばないよう、ネットが張ってあります。
ステージには3本の丸太が立てられています。どんなデモンストレーションが始まるのか、わくわくする時間です。
ネットに近づいてみると、なんと夏原グラントのロゴマークが木製オブジェになっています。上手に立体化されているので、かわいらしい!ありがとうございます。
まずは、チェーンソーの試運転。プロのチェンソーアーティストが、一台ずつ燃料を注いで確認していきます。
チェンソーの音が響き渡り、いよいよデモンストレーションが始まりました。丸太が細かく刻まれていきます。一体なにができるのか……。
しばらくすると、満面の笑みとともに「はい!プレゼント」とギャラリーの小学生5人に作品を渡しました。
なんと、あの大きな丸太から、手のひらサイズの小さな椅子が切り出されていたのです。子どもたちは、一人一脚の椅子を手に持って、うれしそうでした。
チェンソーアートというと、丸太の大きさを最大限に活かした作品だと思い込んでいたところ、こんな細工もできるとは、驚きました。
続いて、岡山から来られたという仲間も加わり、3人それぞれの作品作りが始まりました。
3台のチェンソーの音が公園に響き渡ります。次第に子どもたちも集まってきて、真剣に見つめていました。
できあがったのは、丸太から削り出した羽、フクロウ、ワシでした。出来上がりまで、30分もかかっていません。
すると「この作品をプレゼントします。欲しい人はジャンケンで勝ってください!」とのアナウンス。
子どもたちがみんなジャンケンに加わり、ラッキーな勝者がこの大きなチェンソーアートを手にしました。
羽の裏側には、名前も彫ってもらって、ご家族もいっしょにうれしそうでした。
会長の中村さんに、この活動を始めるきっかけや、活動内容などを伺いました。
「最初は山林組合の方が、技術向上のために始めました。ご自身も参加されていた、愛知県のクラブを参考に滋賀県でも、ということで。20年前くらいでした。
チェンソーアートのプロは全国で十人もいないくらいです。高取チェンソーCLUBは、みんなそのうちのお一人(今日来られていました)に教えてもらいました。
活動の中心は60代です。子育て中の若い人はなかなか土日に参加できないですよね。
台風などで倒れた木(障害木)など、山に捨てられて朽ちていくだけの木をもらってきてチェンソーアートとして活かしています。また、森林整備にも協力しています。
全国のクラブの名前には、チェンソーアートという、アートを入れるところが多いんです。でも、うちは入れていません。アートが主目的ではないからです。
私たちの活動は、ただ遊んでいるように見えるかもしれません。でも木で一緒に遊ぶ楽しさを知って、少しでも森林に親しんでほしいと思っているんです。とにかく山に来てほしい。山で楽しむ人を増やしたいんです。
現在は、高取山ふれあい公園での週末のデモンストレーションを続けながら、全国のチェンソーアートクラブとの交流やデモンストレーションを行っています。今後は多賀大社の参道で開催のコトブキ市(ことぶきいち)にも出展する予定です。
チェンソーアートを作っている時の音と木の香り、作品の手触りや重さまでを感じて、子どもたちがまた山に来た時に思い出してもらえたらと願っています。
毎年10月にはこの公園で『森の感謝祭』を開催し、山の楽しさを体験してもらえます。たくさんの方に来てもらいたいです」。
今日も、小さな椅子を手にした子どもたちは、ずっと握りしめていました。大きな作品が当たった子は、お父さんもニコニコでした。きっと今年の夏の忘れられない思い出となったことでしょう。
高取チェンソーCLUBのみなさん、チェーンソーアートを通じて、これからも木や山の魅力を伝えてください。応援しています。