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炭焼きの伝統継承と森林保全活動 /下区集落支援事業委員会

事業の概要

京都府南丹市美山町の下区集落では、昭和40年代まで盛んにおこなわれていた炭焼きの技術の伝承を目指し、炭焼き小屋の整備や後継者養成のための講座、体験会、また炭焼きがテーマのサミットを開催します。

2024年6月22日(土)京都府南丹市美山町下「下区集落支援事業委員会」の活動を取材しました。
有名な「美山かやぶきの里」(美山町北区)をさらに北に行って到着した美山町下区。区内を流れる川は由良川最上流部の支流で、山林と水田、そして清流が間近にある美しい山村でした。





下区では2013年(平成25年)から地域の活性化に取り組むため「下区集落支援事業委員会」を立ち上げ、地域の農業や食文化、伝統文化を基軸にした事業を展開。その活動実績から、2022年度には農林水産省「豊かなむらづくり全国表彰」(むらづくり部門)で「内閣総理大臣賞」を受賞、併せて「農林水産大臣賞」、「日本政策金融公庫農林水産事業本部近畿地区統轄賞」も受賞されています。
かつては炭焼きが盛んで、36世帯うち7割ほどが炭焼きに従事し、それぞれが炭焼き窯を持ち生業としていたそうです。代表の澤田利通さん(75歳)は、中学生のころからおじいさんを手伝い、炭焼きに関わられた経験をお持ちです。下区集落支援事業委員会の中でも近年、炭焼き文化の復活を活動に加え、技の継承や体験交流などの活動を行いながら、年間を通して炭焼きをされています。





澤田さんが管理する炭焼き窯には、夏原グラントの木彫り看板がつけられていました。
炭焼き自体が廃れてしまった昨今、窯を作る技術をもった人は80代~90代に差し掛かっており、地区の中でも数少なくなっています。この窯は地区の中で経験者の力を借りて作った窯だそうです。炭焼きを繰り返すことで窯自体も傷んできています。「この窯はこの先10年ほどは使っていられるかな」と澤田さん。今年度からの一般助成採択を受けて、早速炭焼き小屋の屋根を補修されるなど、炭焼き小屋の維持管理にも助成金を活用されているようでした。

この日取り組まれていた作業は、焼きあがった炭を取り出し、用途に応じて大きさをそろえる作業でした。樹種や販売時期などで炭の大きさも違ってくるそうです。訪問した6月下旬はキャンプ場でBBQ用に販売する炭を準備されており、窯から取り出した長い炭をノコギリや金槌で使いやすいサイズに揃えておられました。


窯から出したばかりの長い炭


作業のお手伝いには「炭焼きガール」「炭焼きボーイ」が活躍

「小さめの窯」と澤田さんが言われた炭焼き窯も、一回の炭焼きで2.5tの原木を入れ、最大約200kgの炭が焼きあがるそうです。
炭焼きは、炭焼き窯の中を高温にし、空気穴を小さくした状態で木を燃焼させることで、不完全燃焼を起こし、木材を炭化させるという技です。山から切り出した木を切りそろえ、窯へ詰めたあと、焚口を作り、火を焚きますが、そこからは窯から出る煙の色やにおいで窯の中の燃焼を判断します。
原木を切りそろえ窯に木を詰めるまでで4日~5日ほど、そして火入れから焼き上がるまでは15日以上かかります。木を扱う作業や、火を焚き続ける作業には、澤田さんとともに、炭焼きガール・炭焼きボーイが誘いを受けてお手伝いに来られるそうです。

この「炭焼きガール」とは、近隣市町から澤田さんに炭焼きを学びに来られている方たちのこと。この日は、同じ美山町内の他、園部町や八木町からもお越しでした。もう数年来炭焼きを手伝っておられる女性もあり、どの作業も手慣れたものです。
話を聞くと、ご自身でも炭焼きを復活させたくて技を学びに通われているということでした。

澤田さんがこうして若手人材を受け入れる背景には、後継者育成の想いがあります。かつては里山に入り、木を伐り、炭焼きを生業としていた生活でしたが、山に人が入らなくなって、地元では、シカ・イノシシ・サルに加えてクマの被害も増えたと言います。山を再度人が立ち入るようにして、獣害を減らし、里山の管理を復活させたい、との思いで炭焼きの継承に取り組まれています。
「下区だけでなく、南丹市域など、この地域の中で炭焼きができる人材を育てたい」と澤田さん。そのご活動が広がり、こうして若手が通う他、他地域での炭焼きの指導に行かれたり、京北町での炭焼き窯復活の支援にも出向かれていると言います。





この日は、関西学院大学「都市研究会」メンバーが美山町で体験・交流をする「サトヤマカレッジ」の受け入れもされていました。プログラムの一部で、下区の炭焼き窯にて炭焼きの現場を見て、作業の一端も体験されました。








炭焼き窯を覆う小屋の中は、炭のにおいが立ち込め、作業される手も炭がついて真っ黒です。大学生も慣れない手つきで炭をさわっていました。
他にも、京都市内のフリースクールと連携して長年続く里山体験活動や、山村留学の子どもたちの受け入れ(現在は終了)などいろいろな団体や活動とのつながりを育みながら、折々に炭焼きに触れる機会を作られているとうかがいました。
3月には炭焼きサミットを予定されています。各地で広がっている炭焼き復活の動きや、各地の技術を共有し、地域として炭焼き復活の機運を高めたいと意気込まれていました。

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