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今郷棚田における自然環境の保護・保全活動 /今郷棚田集落協定

事業の概要

滋賀県甲賀市水口町今郷地域の棚田は、2022年、農林水産省「つなぐ棚田」に指定されました。棚田の自然を保全し、耕作放棄地を自然観察会ができるビオトープに整備することなどを、行政や博物館、地元団体や組織と連携しながら行います。

2025年12月25日、一般助成を受けて活動する「今郷棚田集落協定」のみなさんのビオトープ周辺の整備作業を訪問しました。この団体は、滋賀県甲賀市水口町今郷の農業従事者が集まった組織で、中山間地域等直接支払制度による交付金の受け皿団体でもあります。
今郷地域では、2021年2月に棚田地域振興法による指定棚田地域として「今郷棚田」の指定を受け、続く6月に「今郷棚田集落協定」が設立されました。地域の棚田を含む豊かな自然環境保全に取り組むため、続けて募集された農林水産省「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~(ポスト棚田百選)」にも認定をされるなど、地域での棚田エリアの保全に向けた機運を高めてきました。


今郷、冬の水田風景

 


ビオトープ整備の周辺に立ち、棚田を見下ろす

 

夏原グラントでの活動は2024年度から始まり、今年で2年目です。棚田エリアの高台、山際に位置する水田周辺をビオトープとして整備しながら、自然観察会や大学連携によるフィールドワークを実施し、農産物の商品化についても考えるなど、多角的な視点から地域の農業や棚田を守る事業を行われています。

今回は、団体役員4名が参加し、ビオトープ周辺の冬期整備として草刈りを行われました。棚田地域の水田のため、法面は急で、広さもあります。雨も少し降る中、足元も悪く難しい作業ですが、慣れた様子でそれぞれに作業を進められました。


 


 

代表の福野憲二さんからお話を聞きました。2024年には、上部の水田を「水辺のビオトープ」として整備し、山からの水を貯めて維持管理されてきました。中ほどに見える土盛りは、ゆくゆく能の舞台を建設する計画で、ぐるりと周囲を囲む雑木林も手入れをし、人が里山に立ち入りやすいようにし、山からは棚田を見下ろす薪能の舞台が見える、というロマンあふれるプランを数年がかりで予定されているそうです。「いつかはコウノトリにも来てほしい」と福野さん。
田や周辺の山はメンバーの一人でもある長さんの所有であり、雑木が並ぶ山の手入れとともに、生き物の生息地としての整備には前向きです。地域で里山保全や木材利活用に取り組む「こなんの森・薪割りくらぶ」とも連携し、手入れや木々の薪への活用も進めておられるとのことです。


ビオトープを見下ろす


背後の山へ少し入って―水田を見渡せる高台です

 

観察会の受入れなどにも積極的に取り組まれ、みなくち子どもの森自然館の学芸員さんや、同じ夏原グラント採択団体「あおむしくらぶ」(草津市で活動されています)の見学受入れ、立命館大学食マネジメント学部との連携など、地域外の団体から知恵や新しい目線を学びながら活動されています。

ビオトープから農道をはさんだあたりには、池のように水が溜まったエリアがあります。そこにはお手製の橋がかけられています。生き物観察会の受入れのため、設置されたそうです。普段草津市内の河川で活動する団体の子どもたちからは「いつも観察している川と生き物が全然違う!」と驚きの声があがると言います。


 

立命館大学食マネジメント学部との連携では、地域の歴史や環境を学びながら、農産品の商品開発に取り組まれています。食のこだわりに強みがある同学部、地域の課題でもあるどうしたら米が売れるか、という悩みに向き合って5種類の米を2合ずつ詰め合わせた化粧箱入り商品「古琵琶湖の恵み、五彩の米」を提案されました。同団体副代表の北山さんがその5種類の米を栽培されているそうです。他にも、地域の特産品でもある滋賀の伝統野菜「水口かんぴょう」の活用・レシピ提案など、学びと実践のフィールドとして交流が続きます。


 

多彩な取り組みに広がる今郷棚田集落協定の活動。福野さんに活動を通じて目指されているものを聞きました。すると、地域の農業を続けていくため、様々な学びを重ねながら、地域の価値を幅広い世代の今郷住民、そして関係される地域外の方々にも届けたい、という思いを教えてくださいました。
「歴史や環境、今郷を大事に残したい、そのためには、多くの人がその良さを知らないと残せない」と福野さん。それがないと、「『なんでこんなに草刈りせんなんのか』『除草剤があるじゃないか』そういう風潮になってしまい、この環境を残していく意義が伝わらない」とのこと。


講師バッジを見せてくださいました。


 

夏原グラントでは、採択されて1年目の団体を対象として助成金選考委員が講師を務める「市民環境講座」などを通じて、環境保全の意義や動植物の保全に取り組む注意点、自然環境についての基礎から応用につながる学びの機会を作っています。福野さんは「夏原グラントで開催された西野先生の講座などは本当にためになった」と言われ、地域の生き物や生き物に関する知識を活かし、今郷棚田の価値を発信し未来に継承していく原動力にしていきたいという思いです。
今年度は役員2名で日本自然保護協会が認定する自然観察指導員講習会を受講、自然観察指導員として登録され、さらなる活動継続に意気を高めておられました。
次の目標は、環境省が認定する「自然共生サイト」への登録を目指すことだそうです。すでに調査も実施され、100種以上の生き物を確認するなどし、今郷棚田の生物の多様性に富んだ環境に手ごたえを感じているとのこと。

地域の棚田を活かす活動の意欲的な活動実践に元気をもらう訪問でした。

 

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