里山整備からワサビ畑の復活をめざす /特定非営利活動法人 加茂女
事業の概要
京都府木津川市加茂町の放置竹林を2年前から整備し、ツリーハウスやターザンロープなどを設置してきました。竹林を整備すると、ワサビ畑の痕跡が出てきたので、抗菌力のあるワサビの栽培はコロナ災の折にはよいのではないか、ということになり復活を試みることになりました。子育て世代の方にも参加しやすい環境なので、小中学生対象の体験学習を実施し、ワサビの植栽、除草などのワサビ畑の手入れにも一緒に取り込んでもらいやすいと思っています。
2021年12月25日土曜日の朝、特定非営利活動法人 加茂女(かもめ 以下 加茂女)の皆さんの定例の里山整備の日に伺いました。京都府木津川市のJR加茂駅から歩いてすぐの市役所の加茂支所が集合場所です。加茂女代表理事の曽我千代子さんは軽トラで、ほかのメンバーもそれぞれ車に乗って9時半に集合しました。私もメンバーの車に分乗させてもらって、活動場所に出発です。
中山間地の集落を抜けて、急傾斜の山道を登った先に、活動場所「かもめ広場in当尾」がありました。
ここは曽我さん所有地ですが、他にある活動拠点(過去にそちらの竹林整備事業で夏原グラントの助成を受けていました。その時の▼活動レポートはこちら
買ったものの手入れをしないでいたワサビ畑があります。
もともと水田として開拓されましたが、米余りの影響から転作として柿畑とされ、その日陰にワサビを植えていたということです。このあたりの地域、当尾の特産だったこともあるそうですが、既に30数年間放置されていました。
そのワサビ畑を見渡しながら、曽我さんにお話を伺いました。
「ここは私に売るために、畑地に杉の木を植えて山林に地目変更されたのですが、その杉の木が大きくなり隣地に倒れて迷惑をかけたことから、ここを整備することになりました。杉の木が巨木になり、竹や笹に地面を覆われて日陰になっていた状態でしたが、笹を刈り、杉の木を切り倒し、夏には草を抜いて手入れするうち、ワサビが息を吹き返してきています。」
こちらがそのワサビです。
「このワサビを京都府内でワサビ田を営む人が持ち帰り、植えたところ、根が大きく育って普通のワサビになりました。だから、この畑ワサビも沢ワサビと同じ種類だろうと思います。
このワサビを本格的な畑で栽培するため、畑に重機を入れ、竹や杉の根を取り除く予定です。栽培が軌道に乗れば、商品として販売し、地場産業を復活させたいと考えています。」と曽我さん。
加茂女の皆さんは、既に竹や筍を使った食品を開発し、イベントなどで販売するなどの実績がありますから、ワサビの商品化も楽しみです。
竹林整備も楽しく親子連れで参加してもらおうと、ピザ窯、竹のツリーハウスからのターザンロープ、竹のブランコ、竹のトイレなども完成しています。
えっ、竹でブランコなんて強度が足りないし危ないのでは?
と思ってよく見ると、中に金属製のパイプが入っており、竹はカバーとして使用されているのがわかりました。これなら安心ですね。
最初の朝の集まりで、曽我さんが今日の予定を説明。
「今日はクリスマスなので、チキンを焼きます。ドラム缶を買ってきたので、間伐したあと置いてある竹を焼いていきましょう。」
それだけで、皆さん思い思いの作業を開始されました。
真新しいドラム缶が設置され、どんどん竹が燃やされていきました。
ただひたすら、竹を切ったり割ったり、運んでくべる。周囲に山積みされていた竹も、さすがに目に見えて減っていきます。
そのそばでは、加茂女理事の久保田さんがピザ窯で食材を焼いていました。
まずはサツマ芋。新聞紙とアルミホイルに包装されて、窯に入れられていたのを、時間を計って取り出しますと、ホクホクで甘い焼き芋に。
普段の定例活動日に昼食として作るのは、ピザや焼きそばなどですが、今日はクリスマス、たまには美味しいものを作って楽しもう、という主旨だそうです。私も皆さんと同じ実費300円を払って、ごちそうになりました。
続いて出てきたのは、かわいらしいココットです。
ワクワクしてフタを開くとちょっと焦げていましたが、中身は濃厚な焼きリンゴで、とてもおいしかったです。
鶏の丸焼きも、少し火力が強すぎたようで、中身はおいしいのですが、表面が焦げてしまいました。
曽我さんは「ピザ窯の本を読んで勉強したけど、温度調節は経験しかない、って書いてあったんですよ」と笑っておられました。
しかし、ピザとケーキはお見事な火加減で焼き上がり。
ピザ生地はサクサクでチーズはトロリ。ケーキも中はしっとりふわふわ、表面はカリカリで美味しいのです。これらを焼く燃料は、間伐した竹のみを使っているのですから、竹の持つエネルギーには改めて驚かされました。
これは、間伐前の竹林。密集しているため暗くて、しかも枯れた竹が倒れたまま放置されていて、人はとても入れません。
こちら、手入れをされた後の竹林です。
とてもスッキリして、美しいですね。
加茂女の監事、西辻さんは、何でも竹で作ってしまうすごい方。
道具などを入れておく小屋も竹です。竹の樋を使って、タンクに雨水を溜めて消火などにも使っています。小屋の壁には、活動を支援している助成金や組織の名前を表示してありました。夏原グラントはロゴマーク入りです。ありがたいです。
曽我さんは、「拠点となる場所が会員外の人のものだと、地主さんが代替わりされると借りる条件が変わってしまうなどで、使い続けられなくなることがあります。でも自分たちの所有地ならそんなこともなく長く活動できます。かもめ広場in当尾の周辺の土地を買い足して整備し、ゆくゆくは竹林を利用したキャンプ場、イベントやサバイバルゲームの貸し会場として、少しでも竹林から資金が生み出せたらいいな、と思っています。そのために、桜の苗木を植えるなどの準備をしているところなんですよ。もちろんワサビも、これからしっかりとした畑にして収穫して加工していきたいです。」と意欲的です。
今回は、これから竹紙を漉きたい、という方も参加されるなど、竹という素材を通じて輪が広がっているのも感じました。
黙々と汗を流して竹林整備を続ける加茂女の皆さんには頭が下がります。楽しみながら今後も長く活動を続けてくださることを期待しています。