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遊んで学ぼう 里山東笠取 /オーガニック土の塾

事業の概要

オーガニック土の塾では、地元農家の高齢化などにより耕作や手入れを放棄・休耕された田畑(約10反)・山林・竹林などを農業塾として一般市民が入って再利用・再活用することを続けてきました。 今回の事業では約2反の耕作放棄地を遊び場や子ども農園として再生しています。遊歩道の整備を行い子どもたちのウォーキングや虫探しイベント開催、簡易水車発電機(宇治市提供)で小学生の水力発電イベント実施、川遊びができるよう河川整備、東笠取MAPづくり、野草の勉強会などを予定しています。子ども時代に自然と親しめる環境を整えます。

オーガニック土の塾 活動のようす画像 琵琶湖が見える神社の展望台

2022年10月25日、京都府宇治市東笠取に、NPO法人オーガニック土の塾を訪ねました。
  
オーガニック土の塾は、以前夏原グラントの助成を受けたことがあります。(▼過去の活動レポートはこちらから)
 
8年前から棚田も多い地域で耕作放棄された田んぼや畑を入手し農業塾の現場として復活させ、畑のそばに自生する植物を使っての野草教室や、子どもの遊び場を手作りするなどを行っています。
 
今回の助成事業は、①地域内にある森をめぐる遊歩道と、奥宮神社、正法寺、岩間寺巡りの遊歩道の保全活動。②簡易水車発電機を川の水で回して、子どもたちに発電について学んでもらい、また川遊びできるよう川周辺の環境を整える。の2つです。
 
オーガニック土の塾 活動のようす画像 空き家を借りた拠点  
  
購入した空き家が塾生の拠点となっています。
 
オーガニック土の塾 東屋に設置された水車 
  
さっそく水車の設置された東屋に連れていってもらいました。この水車は宇治市から寄贈してもらったもので、手作りのもの、自転車の車輪が発電のベースとなっています。
  
オーガニック土の塾 水車を回す水を汲む予定の川 
 
すぐそばを流れる小川の水を溜めてパイプで汲み上げ、水車を回して発電し、その電気で電球を灯す予定とのこと。
ところが道路の拡張工事が始まり、川の様相が一変。水が溜めにくくなってしまい、今のところ水車での発電計画はいったん休止となっています。
 
「今年度中には必ず成功させます」と、オーガニック土の塾 代表の田中さんは約束してくれました。
 
オーガニック土の塾 東海自然遊歩道の案内看板 
 
次に、今回の助成で行っている、遊歩道の保全を見せてもらうことになりました。東海自然歩道がこの集落の山を通っています。集落から奥宮神社まで、林道がついているのです。
 
オーガニック土の塾 急な傾斜の道を案内する田中さん 
 
田中さんの案内で歩き出しました。こんな急傾斜の上にも住宅があります。
 
オーガニック土の塾 元は棚田だった耕作放棄地 
 
周囲の田んぼです。既に耕作放棄されていますが、ここが棚田だったことがよくわかります。
 
オーガニック土の塾 元お茶畑だったところで咲くお茶の花 
 
元は茶畑だったというところには、自由に伸びたお茶が花をいっぱい咲かせていました。
 
オーガニック土の塾でも3反ほど茶畑を任されているのですが、手入れも日本茶づくりもたいへんで、最初の芽だけ摘んでいるのだそうです。
 
百人一首にも選ばれている、六歌仙の一人喜撰法師は、宇治市内の喜撰山にこもって修行をしていたそうで喜撰という地名が残っています。その喜撰では、当時お茶づくりが日本一盛んで、お茶と言えば宇治より喜撰、という時代が長かったそう。幕末の黒船来航の騒ぎを風刺した「泰平の眠りを覚ます上喜撰たった四杯で夜も寝られず」の中に出てくる「上喜撰」とは、ここのお茶の上等なもの、と田中さんから教えてもらって、へえーっと驚きました。
 
こんなお話を伺いながら山道を登ると楽しいものです。
 
オーガニック土の塾 植林の森の中の道 
 
しばらく人工的な植林の森の中を通りました。枝打ちなどの手入れをされていないため、出荷の予定はなさそうです。
 
オーガニック土の塾 林道の保全のために掘った溝 
 
頂上近くの道の脇には、新たに掘った溝がありました。
ここは、オーガニック土の塾でユンボを借りて掘ったそうです。
「こうして大雨の時に水が流れる溝を掘っておかないと、水が道を流れてしまい、変なところが崩れたりするんです。」と田中さん。
 
こまめに手入れしないと、林道は維持が難しいですね。
山主さんに林道の補修の許可をもらい、車に重機を積んで持ち上げて作業しているそうです。
 
オーガニック土の塾 神社の朱色の道標 
 
いよいよ、神社に近づいてきました。道しるべが立っています。左へは「石山寺 醍醐寺」、右へは「奥宮神社 岩間寺」。
 
オーガニック土の塾 奥宮神社の鳥居 
 
やっと奥宮神社に到着です。
 
田中さんは「ここの眺めを、たくさんの人に見てもらいたいと思って林道を整備しているんですよ」と、展望台へ案内してくれました。
 
オーガニック土の塾 展望台から田中さんが琵琶湖を指さす 
 
「ほら、あっちに琵琶湖が見えるでしょう」
 
オーガニック土の塾 少しアップにした琵琶湖 
 
本当に琵琶湖が見えています。特にこの日は晴れていて、遠くまではっきりと見通せました。これで急な林道を登ってきた甲斐があるというもの。ずーっとここにいたいほど、すばらしい眺めでした。
 
オーガニック土の塾 奥宮神社の境内の神楽殿 
 
鳥居をくぐって本殿へ。本殿のそばにはこんな神楽殿もありました。
 
オーガニック土の塾 宇治の山々   
展望台の反対側にあたる宇治の山々が見渡せて、お祭りで舞の奉納などがされた時には、気持ちのよい舞台だったことでしょう。
 
オーガニック土の塾 紅葉と青紅葉 
 
またもと来た道を下って、東笠取の集落をめざしました。紅葉が進んでいる木とまだ青い葉の木が好対照で、美しい景色です。
 
オーガニック土の塾 遊歩道の地図看板 
 
歩いた林道は、奥宮神社とびわ湖展望台への登山道となっていて、時間的には30分くらいでしょうか。登り口に掲示してある地図もありました。実際には急傾斜のため、休憩しながらだったので、もう少時間がかかりました。
 
オーガニック土の塾 手作りの遊び場木製遊具 
 
この日は、お昼前から宇治市のNPO法人就労ネットうじの就労支援施設「みっくすはあつ」に通う皆さんが、自然体験に来られていました。
 
オーガニック土の塾 あそび場「トコダン」でバーベキュー 
 
オーガニック土の塾の手作り遊び場「トコダン」で、さっそく野外バーベキューを楽しんでいました。
 
「ここなら、大声出しても、太鼓をたたいても、どこからも文句は出ませんから」と田中さんはニコニコしていました。この遊び場も、もとは耕作放棄された棚田だったそうです。
 
オーガニック土の塾 あそび場に行くための木製の橋 
 
「みっくすはあつ」の皆さんにとっては、小川に架けられた木製の橋を渡るのも、屋外でバーベキューをするのも、普段と違う体験で、冒険なのだそうです。皆さん楽しそうでした。
 
オーガニック土の塾 垂乳の森の看板 
  
そして、最後に、遊歩道として保全をするところとして、「垂乳の森」の入り口まで連れて行ってもらいました。
 
オーガニック土の塾 この奥に垂乳の森がある 
 
東笠取地域の中に、伝説の森が4つ(柊の森・青の森・垂乳の森・仮屋の森)あり、それを小学生がめぐって、地元について学ぶ日もあるそうです。
 
 
集落自体が空き家も増えていき、高齢化も進む中で自然を体験するための道を保全していくのも、たいへんなことです。宇治市の名所とされていた「東笠取の棚田」にも、耕作放棄されている田んぼがあります。オーガニック土の塾ではそんな耕作放棄された田んぼを買う、借りるなどして米作りを継続しています。
 
「わが庵(いほ)は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり」
 
平安時代の喜撰法師が、このように詠んだ宇治の山。今やシカやイノシシの食害を防ぐため、農地は金網で囲わなければならない状況です。オーガニック土の塾では、他の地域からやって来て農業を学ぶ人を増やして農地を守り、一方で許可を得て罠を仕掛け少しでも獣害を減らそうとしています。
 
この東笠取の集落の里山を残し整備することで、たくさんの人が里山の自然を体験できるよう期待しています。
 
 

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