トップページ > 助成の実績 > 持続可能な集落棚田のための環境保全型ネオ・スモールファーマー発掘プロジェクト

持続可能な集落棚田のための環境保全型ネオ・スモールファーマー発掘プロジェクト /特定非営利活動法人 スモールファーマーズ

事業の概要

京都市宇治市に拠点を持つ、特定非営利活動法人 スモールファーマーズは、社会人向けの週末有機農業学校を運営しています。今回の事業は、滋賀県大津市北船路集落の農家と協力してこの地区の農地を使い、有機栽培×スマート農法の新しい稲作栽培に取り組む、新しい兼業農家「ネオ・スモールファーマー」を目指す人たちの発掘と育成を行います。そして栽培した米を対面販売で付加価値を付けたアピールを直接行い、持続可能な農業構築をめざします。

スモールファーマーズ活動のようす画像 遠隔操作できる水門

2022年5月28日土曜日、大津市北船路にある、特定非営利活動法人 スモールファーマーズ(以下 スモールファーマーズ)の田んぼに伺いました。先週田植えが終わり、初めての除草作業を行うということでした。

スモールファーマーズ活動のようす画像 大津市北船路の棚田風景 
  
ここは琵琶湖の西岸、比良山系のふもとにある田園地帯。整備された棚田が広がっています。
  
スモールファーマーズの事業「持続可能な集落棚田のための環境保全型ネオ・スモールファーマー発掘プロジェクト」では、この田んぼ2枚を使い、スマート農法で棚田の維持をめざし、週末だけの兼業農家を応援するというもの。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 田んぼに刺さっているセンサー 
   
田んぼの中に2本、この白い棒のようなものが立ててありました。これこそがスマート農業のうちの一つ、センサーです。水温、水位、気温など、さまざまなデータを収集して、スマホのアプリから管理できるそうです。
   
スモールファーマーズ活動のようす画像 慣行農法で育てる田んぼ 
 
隣り合わせの同じくらいの面積の田んぼは、慣行農業、下の田んぼは有機農業で稲を育てます。
 
慣行農業では、除草剤をまいておしまいですが、有機農業ではそうはいきません。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 除草器具を持つ二人の女性   
手作りの除草器具、と見せていただいたのは、パイプにチェーンを結んであるもの。
 
このお二人は、スモールファーマーズが運営する有機農業の野菜塾の卒業生で、今回の2枚の田んぼで米作りを勉強がてらお手伝いされているそうです。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 器具を引っ張って除草中  
除草器具は一人で引っ張っていきます。
 
苗の間を鎖が引きずられると、泥がかき混ぜられ雑草の芽や根が浮いて生えにくくし、また、水を濁らせ泥の中の植物に光を当てないようにします。これは力が要りますね。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 押すタイプの除草機 
 
こちらは人が押すタイプの除草器具です。苗と苗の間、一条分の泥を、しっかりかき混ぜます。
こちらも、田んぼ全面を除草するためには何往復もしなければならず、かなりの力仕事です。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 エンジン付きの除草機、二条タイプ   
こちらは軽油のエンジンを使い二条分を除草する機械です。
 
この日は、これら人力2種類、動力1種類で除草を進めていました。
 
除草剤を使わないせいか、田んぼの中には多くのオタマジャクシが泳いでいるのが見えました。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 田んぼの水の取り入れ口の水門 

有機農法の田んぼの水の取り入れ口には、こんな器具が設置されています。田んぼの上を通る水路から引かれたパイプにホースが取り付けられ、ホースの口に水門のようなものが付いています。この水門が上下することで水の量を調整するのです。
 
水門調節は、太陽光パネルから得られる電気でモーターを動かします。田んぼに設置されているセンサーで水位や水温を確認し、必要に応じて水門を上げ下げさせて水量を調整する。それが、田んぼまで来なくても、離れた場所から可能になるというのです。
 
スモールファーマーズ代表の岩崎さんは、
「まるで夢のようでしょ?でも、今のところ失敗ばかりでなかなかうまく行きません」
と笑って教えてくれました。
  
スモールファーマーズ活動のようす画像 水門修理する岩崎さんと吹野さん 
 
そして、吹野さんと岩崎さん協力して水門の修理を始めました。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 水門修理 
 
この田んぼの持ち主であり、農業の指導者でもある、吹野さんが、近くに住んでおられるので、異常があれば見回ってくれるそうです。
 
強風のため、センサーが倒れていたり、水門のホースが破れて水が噴き出していたり、とまだまだスマートに管理できるところまでは到達できていないそうです。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 水門修理中の吹野さん 
 
水の管理は稲の育成には重要なポイントです。
 
岩崎さんと吹野さんの連携体制で、これから遠隔管理のデータを積み重ねていき、いずれは有機農法で人力に頼る部分の支援となるはずです。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 カボチャ畑からの棚田と琵琶湖の眺め 
 
吹野さんの畑がもっと上のほうにあり、そこにお二人が有機肥料をまきに行く、というので一緒に連れて行ってもらいました。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 肥料やりの仕事をする吹野さんと塾生お二人 
 
ここまで上がってくると、琵琶湖も見渡せて、とても気持ちがよい場所です。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 バターナッツカボチャの苗 
 
こちらの畑には、スモールファーマーズの育てている、バターナッツカボチャもありました。

地元の道の駅、妹子の郷(いもこのさと)から苗を贈られ、育ったカボチャを出荷して販売することになっているそうです。
 
「直接お客さんに販売することは、農業を勉強している人たちに、とてもいい経験になりますよ。」と吹野さんも喜んでおられました。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像  田んぼの端にあった印 
 
これは有機農業の田んぼのほうで、一か所に植える苗の本数を変えて実験している、印だそうです。
 
実験して記録を取り、それを稲作に生かす場は、なかなかないと思うので、貴重な田んぼだと感じました。
 
スモールファーマーズ活動のようす画像 田んぼの稲の補植をする3人 
 
「20人くらいでプロジェクトを実施します。手伝ってくれるのは農業塾の卒業生で、野菜作りを勉強した人たちです。
遠くは長崎、川崎からも参加してくれています。
 
このプロジェクトで学ぶ人は、一例を挙げると、神戸に住んで会社勤めしている。実家は奈良にあり、現在はお父さんが田畑を持ち農業を行っている。けれどゆくゆくは自分が引き継ぐ予定で、自分なら有機農業でお米や野菜を作って売りたい、と考えて農業を学んでいる。というような人ですね。
 
その塾の人が夏原グラントの事業を手伝ってくれています。」
と岩崎さん。
 
岩崎さんは10年以上前から北船路地域(大津市)と縁があり、吹野さんともつながりがあり、龍谷大学 北船路米づくり研究会(過去の夏原グラント助成事業はこちらから▼リンク)の手伝いをしたこともあるそうです。
 
今回の田んぼは、吹野さんのご協力のもと、使わせていただいています。
 
地元の道の駅での農作物の販売、そしてスマート農業のデータ蓄積と管理。スモールファーマーズのこの事業では、環境負荷は少ないが、人手に頼ることの多い有機農業でも、特に小規模な兼業農家の助けになる成果を期待しています。
 

コメントを残す




このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ページトップに戻る